顔交換アプリ

エミリーと健一

健一は、週末の夜、何気なくインターネットで知り合った外国の女の子、エミリーとチャットをしていた。エミリーはヨーロッパに住む同世代の女の子で、二人は趣味が合ったこともあり、しばしばゲームや動画の話題で盛り上がっていた。

「ねぇ、健一！最近すごく面白いアプリ見つけたの。『顔交換アプリ』って知ってる？」エミリーがチャットでリンクを送ってきた。

健一は、アプリの名前を聞いて一瞬戸惑ったが、興味も湧いた。「顔交換か。まぁ、面白そうだな。試してみるか？」

エミリーはすぐにビデオチャットを提案してきた。彼女は、顔交換の瞬間をリアルタイムで見たいと言ったのだ。健一は少し恥ずかしかったが、「まぁ、そんなに悪くないか」と、エミリーとビデオ通話を始めることにした。

画面越しに映るエミリーは、金髪で青い目の、とても可愛らしい女の子だった。対照的に、健一は黒髪の日本人の典型的な顔立ちで、彼らはまったく異なる見た目だったが、それが逆に面白いと二人は感じていた。

「じゃあ、始めるよ！」エミリーが笑顔で言った。

「うん、やってみよう。」健一も準備を整えた。

アプリを開き、二人は顔を交換した。画面に映し出された姿は、エミリーの顔をした健一と、健一の顔をしたエミリーだった。二人はその滑稽な映像に大笑いした。

「これは最高だね！私、健一の顔も意外と似合ってるかも？」エミリーが冗談を言いながら笑った。

「俺は完全にエミリーだな。こんな顔で街を歩いたら誰も気づかないだろうな！」健一も楽しげに言った。

しかし、次の瞬間、二人のスマホが突如として強烈な光を発した。

「何だこれ！？眩しい！」健一は思わず目を閉じた。

エミリーも同じように、「What the…!?」と叫んでいたが、光が収まったとき、二人は同時に自分たちの姿を見て愕然とした。

「な、なんだ……これ？」健一は自分の声が明らかに高くなっていることに気づいた。さらに、目の前に映っている自分の姿は、明らかにエミリーそのものだった。鏡を見ると、そこにはエミリーの顔と体があった。

「健一！？私は……君になっちゃってる！」エミリーもまた、健一の体に入ってしまっていることに気づき、パニックになった。彼女は自分の新しい低い声と男性の体格に驚愕していた。

「これ……どうなってるんだ？顔交換どころか、体まで完全に入れ替わっちゃったぞ……！」健一は信じられない思いで自分の細くなった腕と、長くなった金髪を見つめた。

二人はアプリを何度も再起動したが、顔も体も元に戻る気配はまったくなかった。焦りと不安が広がり、健一は「これ、どうすればいいんだ！？俺、エミリーとして生きていくなんて……」と途方に暮れた。

エミリーも同じように「これ、冗談じゃ済まないよ！私は日本に行けないし、君もこっちに来ることなんてできないでしょ！」と混乱していた。

それから数日間、二人はお互いの体で生活を送らざるを得なくなった。健一はエミリーとしての生活に順応しようとしたが、彼女の家族とのやり取りや友達との関係、さらには彼女のファッションセンスにまで気を使わなければならなかった。

一方、エミリーも健一の体で生活するのは簡単ではなかった。彼の学校に行き、授業や友人との会話をこなさなければならず、特に日本語でのやりとりに苦労した。友達に「最近なんか変じゃないか？」と聞かれるたび、エミリーはなんとかごまかしていた。

それでも、二人は毎晩ビデオ通話でお互いの体での日々を共有し、少しずつその不安を分かち合った。「君の生活、意外と大変だね」「そっちも同じだよ！」と笑いながらも、困難を乗り越えようとした。

時間が経つにつれて、二人はお互いの体での生活に慣れていった。エミリーは健一として日本で新しい友達を作り始め、健一もエミリーとして彼女のヨーロッパの生活を楽しむようになった。だが、元に戻る方法を探し続けることは忘れなかった。

そして、ある日、突然アプリが再び光を放ち、二人は元の体に戻ることができた。元に戻った瞬間、二人はビデオ通話でお互いの顔を確認し、安心したように笑った。

「やっと戻った……でも、ちょっと寂しいかもな」健一は少し冗談交じりに言った。

「そうだね、私も君の生活、意外と好きだったかも。でも、もうこのアプリは二度と使わない！」とエミリーは笑いながら答えた。

こうして二人は再びそれぞれの体に戻ったが、以前よりもお互いを深く理解し合う関係となり、ネット越しの友情はさらに強い絆へと変わっていった。