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廣瀬純七

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二人の結婚

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カズキとマイは中学時代、体が入れ替わったまま戻らないという異常な状況に直面したが、それから数年が経ち、二人はそのまま高校、そして大学生活を共に過ごしていくことになった。奇妙な状況に慣れるまでには時間がかかったものの、二人はお互いを深く理解し合い、大学では自然な形で親友として、そして最終的には恋人として結ばれていった。

大学を卒業する頃には、二人は「このままの体で生きていくしかない」と完全に受け入れていた。そして就職も、カズキはマイの体で、マイはカズキの体で、それぞれの道を歩み始めた。周囲には「体の外見に関して特別な事情がある」という説明をしていたが、入れ替わったこと自体を理解する人はいなかった。それでも、二人は自分たちの幸せを見つけることに集中していた。

数年後、二人は結婚を決意した。法律的には、マイの体が「カズキ」、カズキの体が「マイ」として登録されていたが、結婚式では二人とも心から幸せを感じていた。結婚後の生活も順調で、入れ替わったままの体で日々の生活を楽しんでいた。カズキはマイの体でキャリアを積み、マイはカズキの体で研究職に就いていた。

ある日、カズキは体調が悪くなり、吐き気やめまいを感じ始めた。最初は単なる疲れや風邪だと思っていたが、症状が続いたため、二人は病院に行くことにした。診察の結果、医師は驚いた表情で言った。

「妊娠しています。」

カズキとマイは一瞬、時が止まったような感覚を覚えた。医師の言葉が信じられなかったのだ。何しろ、妊娠したのは、マイの体であるカズキの方だったからだ。

「え…私が妊娠しているってことですか?」カズキは、元々の自分の男性としての感覚に反発するように言葉を探したが、どうしても理解が追いつかない。

医師は少し戸惑いながらも、「はい、身体的には女性ですから…当然、妊娠の可能性はあります」と答えた。

その帰り道、カズキは複雑な感情に襲われた。もともと自分は男性だったが、今は女性の体で子どもを授かっている。そして、マイはカズキの体で父親になるのだ。二人とも混乱しながらも、帰宅後、冷静になって考え始めた。

「私が母親になるのか…」カズキが呟いた。

「いや、カズキ。お前は母親じゃなくて父親だ。たとえ身体がそうでも、気持ちの上では違うだろ?」マイが微笑みながら言った。

「でも、子どもはこの体で産むんだろ?父親と母親の区別がもうよくわからなくなってきた…」

二人は深く話し合った。そして次第に、性別や役割に対する考え方が変わっていくことに気づいた。社会的な「父親」「母親」の枠組みを超えて、二人は「パートナーとして親になる」という新しい考え方にたどり着いた。

カズキの妊娠期間は、体が女性であるとはいえ、精神的には複雑だった。カズキ自身はずっと男性としての意識を持ち続けていたからだ。しかし、マイがそばで支えてくれることで、次第に「この体で子どもを育むこと」に対する不安は和らいでいった。マイも、自分の体が男性でありながら、パートナーの妊娠をサポートする父親としての役割を全うする決意を固めていた。

月日が経ち、ついに出産の日が訪れた。カズキは元のマイの体で、元気な赤ちゃんを産んだ。その瞬間、二人は体がどうであれ、深く結びついていることを実感した。赤ちゃんを抱くカズキの姿を見たマイは、感動で涙を流しながら言った。

「体なんて、もう関係ないよな。俺たちがこの子を愛して育てていけば、それが一番大切なことだ。」

カズキも微笑み、赤ちゃんを優しく見つめた。「そうだな。お前と一緒なら、どんなことでも乗り越えられる気がするよ。」

こうして、カズキとマイは、入れ替わった体のままでも家族としての新しい一歩を踏み出した。性別や体の違いにとらわれず、二人はお互いを支え合い、赤ちゃんと共に幸せな未来を歩んでいくのだった。
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