性転の霹靂2

廣瀬純七

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はるかとしょうた

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夏の青空の下、遥(はるか)と翔太(しょうた)は久しぶりのデートを楽しんでいた。目的地は海水浴場。砂浜に降り立つと、遥は無邪気に笑い、足元の砂を感じながら波打ち際へ駆け出した。翔太も笑顔で彼女の後を追い、二人は波に足を浸しながら肩を寄せ合った。

「今日は最高だね。こんなに晴れてるし、久しぶりの海だもんね!」と、遥は海を見つめながら言った。

「本当に。ずっと忙しかったからな。でもこうして君と一緒にいられる時間があるだけで、俺は十分幸せだよ」と翔太は優しく微笑んだ。

遠くの空に少し不穏な黒い雲が見えたが、二人は気に留めなかった。午後の太陽が燦々と輝いていたからだ。

**

二人がビーチチェアに腰掛け、波の音をBGMにおしゃべりしていると、突然冷たい風が吹き始めた。さっきまでの穏やかな海の景色が、急に様変わりしたかのようだった。

「翔太、なんか変な雲が…」遥が不安そうに空を指さした。

「本当だ。さっきまであんなに青空だったのに…でもまだ大丈夫だろう。もうちょっとだけ楽しもうか?」と、翔太は軽く笑いながら、遥の手を取って立ち上がった。

その時、遠くで雷鳴が轟いた。風が強まり、空は一気に暗くなった。

「やばい!急いで車に戻ろう!」翔太が焦りの色を浮かべ、二人は砂浜を走り出した。

しかし、次の瞬間、閃光が空を裂いたかと思うと、耳をつんざくような雷鳴と共に、二人の真上に稲妻が落ちた。

目の前が真っ白になり、意識が遠のいていく…。

**

意識が戻った時、遥は砂浜に横たわっていた。周囲には誰もいない。何が起きたのか、理解できなかった。ただ、体が重い。動かそうとしても、自分の体なのにどこか違和感を感じる。

「…翔太?」遥は、横で倒れているはずの恋人の名前を呼んだ。

その声が、自分のものではないことに気付く。

「えっ…?」

遥は自分の手を見つめた。そこにあるのは、太くて男らしい手だった。驚いて顔に触れ、恐る恐る自分の姿を確認する。

「嘘でしょ…?これは…翔太の体…?」

一方、隣で倒れていた翔太も目を覚ました。彼も混乱していた。目の前には自分の体が立っている。しかし、その中にいるのは遥だった。

「俺…いや、遥…?」と、翔太は自分の声を聞いて、震えた。

二人はお互いを見つめ、沈黙が訪れる。そして同時に気づいた。落雷の瞬間、彼らの魂が入れ替わってしまったのだ。

**

時間が経つにつれ、二人は元に戻る方法を探し始めた。しかし、医者や霊媒師に相談しても解決策は見つからなかった。どうやっても元の体には戻れない。

「どうするんだ…このまま俺たち、この体で生きていくのか?」翔太の声で遥が言う。

「分からない…。でも、君と一緒なら、どんな形でも乗り越えられるはず…」遥の体で話す翔太が静かに答えた。

二人は絶望の中にも、一緒にいることの大切さに気づいていた。体が変わっても、心は変わらない。二人の愛は、そんな困難をも乗り越えられると信じていた。

時が経つにつれて、二人はお互いの体に慣れていった。違う視点から相手の生活を理解し、相手の体でしか感じられないことを共有することで、さらに深い絆を築いた。

最後に、遥が言った。

「たとえこのままでも、私たちは私たちだよね?」

翔太は頷き、彼女の手をしっかりと握った。

「そうさ。俺たちは変わらない。いつまでも、一緒だ。」

海岸での雷鳴が、二人に新たな人生を与えた。それは決して望んだものではなかったが、今や二人はその運命を受け入れ、共に歩んでいくことを選んだ。

そして、二人は海を見つめながら、穏やかな波音に包まれ、再び肩を寄せ合った。

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