性転の霹靂２

みほとけんた

海水浴場の砂浜は、夏の日差しを浴びて輝いていた。波が穏やかに打ち寄せ、空は青く広がり、周りには海水浴客たちの楽しそうな声が響いていた。美穂と健太は、砂浜の上に並んでビーチタオルを広げ、日差しを浴びながら互いの顔を見つめ合っていた。

「いい天気だね」と健太が笑顔で言った。

「うん、最高だよ。ここまで来てよかったね」と美穂も同意し、青い海を見渡した。

二人は付き合ってまだ半年だったが、いつも一緒に過ごす時間が楽しく、幸せだった。今日はその記念に初めて一緒に海水浴に来た。波に揺られながら遊ぶ子供たちや、カップルたちの姿が、二人の未来を描くように輝いて見えた。

突然、遠くで雷鳴が轟いた。

美穂はびっくりして空を見上げた。「あれ？天気予報は晴れって言ってたのに…」

「本当だ。雲なんて一つもなかったのに、変だな」と健太も驚いたように空を見上げる。確かに、さっきまで晴れていた空が、いつの間にか黒い雲に覆われ始めていた。

「そろそろ帰ったほうがいいかも」と健太が言うと、美穂は頷いた。二人はビーチタオルをたたみ始めたが、その瞬間、目の前に稲妻が走った。

「キャー！」美穂が叫び声を上げた。続けて轟音が耳をつんざく。

「大丈夫！？」健太は美穂の手を取ろうとしたが、次の瞬間、世界が一瞬白く輝き、体が浮いたような感覚が二人を襲った。雷がすぐ近くに落ちたのだ。

「―――っ！」何も聞こえず、全身がしびれるような痛みが走った。

***

気がつくと、美穂は砂浜に横たわっていた。目を開けると、見慣れない体の感覚が彼女を包んでいた。混乱しながら、ゆっくりと体を起こそうとするが、何かが違う。手が、肌が、すべてが自分のものではない。

「健太…？」彼女は恐る恐る声を出した。しかし、その声は明らかに低く、男の声だった。

「えっ？」驚いて自分の体を見下ろすと、そこには健太の体があった。大きな手、筋肉質な腕、そして…男性の体。

「なんで…私、健太の体に…」

そのとき、目の前に自分の姿をした人が動き始めた。「…美穂？」その声は明らかに美穂のもので、自分の体から発せられていた。

「健太…？もしかして、私たち…」

二人は目を見合わせ、そして同時に叫んだ。「入れ替わってる！？」

***

その後、パニック状態の二人はなんとか落ち着きを取り戻し、どうしてこんなことが起こったのかを話し合い始めた。明らかに雷が落ちた瞬間、何かが起こったに違いない。だが、それが原因で体が入れ替わるなんて、普通では考えられない現象だった。

「どうすれば戻れるんだろう…」美穂（健太の体）は不安げに言った。

「わからない。でも、今はとにかく落ち着いて考えよう」と健太（美穂の体）は冷静を装おうとするが、その声には動揺が滲んでいた。

二人は何とかその場を離れ、家に戻ることにした。しかし、日常生活はすべてが難題だった。健太は美穂の体で化粧をしなければならず、美穂は健太の仕事場に出勤しなければならなかった。周囲の人々に怪しまれないように振る舞うことが何よりも大変だった。

そして、時間が経つにつれ、二人は次第に互いの生活や内面を深く理解するようになった。美穂は健太が思っていたよりも繊細で、彼の仕事のプレッシャーを知り、尊敬の念を抱いた。一方、健太も美穂が日々の生活でどれだけ多くのことに気を配っているかを知り、彼女の強さと優しさを改めて感じた。

だが、どんなにお互いを理解し合っても、元の体に戻りたいという願いは消えなかった。

***

ある日、二人は再び海岸を訪れることを決意した。あの日と同じ場所に立ち、何とか雷の力で元に戻れるのではないかと期待していた。

「もし、戻れなかったら…どうする？」健太（美穂の体）が問いかけた。

美穂（健太の体）は少し考えてから、静かに答えた。「それでも、私はあなたと一緒なら大丈夫。あなたのことがもっとわかったし…何があっても、一緒に乗り越えられるって信じてる。」

その言葉に健太は微笑み、手を握りしめた。「僕もだよ、美穂。」

その瞬間、空にまた稲妻が走った。

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