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新たな自分、新たな未来
しおりを挟む完全に男性の体になってしまった美咲は、鏡の中の自分をじっと見つめていた。背が伸び、肩幅は広くなり、がっしりとした体つきになった自分の姿は、もう元の女性としての面影はほとんど残っていなかった。
だが、美咲の表情は不思議と穏やかだった。むしろ、自分の体の変化を受け入れ始めていることに気づいていた。
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### 憧れの兄との思い出
「……なんだか、お兄ちゃんみたい。」
美咲はふと、実家にいる兄の顔を思い浮かべた。子供の頃から、自分より背が高くて頼りがいがあり、スポーツ万能でどこか自由奔放な兄に、ずっと憧れを抱いていた。
兄はいつも「男ならこうするんだ」と言っては、美咲に勇気を与えてくれる存在だった。その姿を真似したくて、男の子っぽい格好や行動をしていた時期もあった。
「もしかして、今の自分って……兄みたいになれてるのかな?」
そう考えると、不思議と嬉しささえ込み上げてきた。幼い頃の願望が、こんな形で叶うなんて夢にも思わなかったが、決して嫌ではなかった。
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### 雄太との新しい関係
雄太は、美咲の変化に驚きながらも、彼女の前向きさに救われていた。
「美咲、俺の方が女性になっちゃったのに、お前は平気なのか? 普通、もっと困るだろう。」
「最初は戸惑ったけど……ねえ、考えてみて。私、兄みたいになりたいってずっと思ってたし、今の私なら、そんな自分に近づける気がするの。」
美咲は笑顔で答えた。その笑顔には、かつて女性だった頃の柔らかさと、新たに得た男性的な自信が混ざり合っていた。
「それに、雄太が女性になってくれたおかげで……なんていうか、私たち、逆の立場でもバランス取れるんじゃない?」
冗談交じりに言う美咲に、雄太もつい笑ってしまった。
「そっか。そう考えると、悪くないのかもな。」
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### 未来を見据えて
それからの日々、美咲は新しい体を楽しむようになっていった。
男性用の服を買い揃えたり、低い声で歌を歌ってみたり、筋トレを始めたりと、新しい自分を探求するのに夢中だった。
雄太もまた、女性としての自分に少しずつ慣れていった。二人はこれまで通り一緒に過ごし、お互いの変化を受け入れながら新たな日常を築いていった。
「美咲、これからどうする? このままで本当にいいのか?」
ある夜、雄太が真剣な顔で尋ねた。
「うん、このままでいいと思う。」
美咲は自信を持って答えた。「昔の私も、今の私も私だし。今の方が自由でいいかもしれない。だって、雄太とも……このまま結婚だってできるしね。」
「結婚か……。」
雄太は少し照れくさそうに顔を赤らめた。「それも、悪くないな。」
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### 新たな一歩
二人は、これまでの自分たちとは違う姿になりながらも、互いを支え合い、愛情を深めていった。奇妙な運命のいたずらがもたらしたこの新たな形は、意外にも二人にとって心地よいものだった。
「これからも一緒にいられれば、きっと大丈夫。」
そう言って、美咲は大きな手で雄太の肩を包み込んだ。彼女――いや、今や彼としての美咲と、新しい人生を歩み始めた二人には、これからどんな未来が待っているのだろうか。
彼らの物語は、まだ始まったばかりだった。
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