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優と湊人
しおりを挟む雄太と美咲が互いの性別が変わってから数か月が経った。奇妙な運命のいたずらを受け入れ、二人は新しい日常に慣れつつあった。そして、ある日、二人はこれからの人生について大きな決断をすることにした。
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### 名前を変える決意
ある夜、二人は静かなリビングで向かい合っていた。テーブルには二人の好きなハーブティーが湯気を立てていた。
「ねえ、美咲、じゃなかった、湊人。」
雄太は、いつものように間違いそうになりながらも、笑顔で相手の名前を呼んだ。
「うん、何?」
湊人は穏やかな目で彼――いや、今や彼女になった優を見つめる。
「私たち、このまま結婚しようよ。」
「結婚?」湊人は一瞬驚いたようだったが、すぐに優しい笑顔を浮かべた。「そうだね。このまま二人で一緒に生きていくんだから、名前も新しい自分に合ったものにした方がいいかもね。」
優も同じ考えだった。互いの名前が、かつての性別に縛られたものであることに、どこか違和感を覚えていたのだ。
「それにさ、湊人って名前、かっこいいよね。もうすっかり馴染んできたし。」
「優の名前も可愛いし、君らしいと思う。」
そうして二人は、それぞれの新しい名前を戸籍に正式に登録し、結婚の準備を進めることになった。
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### 結婚式の準備
結婚式の準備は楽しくも忙しいものだった。湊人がスーツを選び、優がウエディングドレスを試着した、店員たちはそれを微笑ましい目で二人を見守っていた。
「このドレス、すごく似合ってるよ、優。」
「ありがとう。でも、湊人のスーツ姿もすごくカッコいいよ。」
二人はお互いを褒め合いながら、幸せそうな笑顔を浮かべていた。
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### 結婚式の日
そして迎えた結婚式の日。二人は小さな教会で親しい友人や家族に囲まれながら、静かで温かい式を挙げた。
優は純白のドレスに身を包み、湊人の手を取ると、少し照れくさそうに微笑んだ。
「湊人、あなたと一緒に新しい人生を歩めること、本当に嬉しい。」
「優、君と出会えて、本当に良かった。これからもずっと一緒にいよう。」
牧師が二人に誓いの言葉を促し、二人は「はい」と力強く答えた。指輪を交換し、誓いのキスを交わした瞬間、会場中が拍手と祝福の声で包まれた。
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### 新しい生活
結婚式の後、二人は新しい名字を名乗り始め、さらに一層絆を深めていった。
湊人は職場で「頼れる男性」として慕われるようになり、優は女性らしい感性を活かして趣味の絵画で評価を受け始めた。
「名前を変えたことで、なんだか本当に新しい人生が始まった気がするよ。」
「うん。でも、大切なのは名前よりも、二人で一緒にいられることだよね。」
二人は微笑み合いながら、新しい未来に向かって歩き始めた。
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### 結び
奇妙な運命に翻弄されながらも、雄太は「優」に、美咲は「湊人」に生まれ変わり、新たな道を共に進む決意を固めた。そして、二人の愛は、どんな形でも変わることはなかった。
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