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鏡の中の自分
しおりを挟む「ここがあなたの部屋よ、中村さん。」
先輩社員がそう言ってドアを開けると、そこにはシンプルながらも清潔感のある部屋が広がっていた。二つのベッドに、クローゼット、デスク、本棚。ルームメイトはまだいないらしく、室内は静かだった。
「じゃあ、ゆっくり荷解きでもしてね。困ったことがあったら、みんなに聞けば大丈夫だから。」
先輩が優しく微笑む。
「は、はい……ありがとうございます。」
結衣——いや、健一はぎこちなく答えた。
ドアが閉まり、一人きりになると、ようやく少し落ち着いた。
「……ふぅ。」
深く息をつき、部屋を見渡す。何もかもがリアルすぎる。手を伸ばせば触れられるし、木の香りすら感じる。これが本当に**バーチャルの世界**なのか?
ふと、クローゼットの横にある姿見の鏡が目に入った。
恐る恐る、その前に立つ。
鏡の中には——見知らぬ美しい女性がいた。
「……これが、俺?」
長く艶やかな黒髪。大きな瞳に、繊細な顔立ち。スーツ姿もすらっと決まっているが、自分の動きに合わせて揺れる髪の毛や、かすかに見える首筋のラインが、どう見ても“女性”だった。
震える手をそっと頬に当てる。柔らかい肌。
喉をなぞってみる。細く、なめらかな感触。
次に両手を胸元へ——
「……っ!」
驚いて手を引っ込めた。確かにそこに“ある”感触。間違いなく、自分は今、女性の身体になっている。
**バーチャルのはずなのに——まるで本当に変わってしまったみたいだ。**
心臓がドクン、と跳ねた。
自分の身体じゃないのに、自分として動く。言葉では説明できない感覚に、思わず鏡をじっと見つめる。
「……本当に、三か月間、これで過ごすのか……?」
現実感のない現実。健一の研修は、まさに今始まったばかりだった。
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