29 / 51
ランチタイムの会話
しおりを挟む翌日、結衣は会社での研修を終え、昼休みになった。
食堂へ向かうと、ちょうど木村健一が一人で座っていた。
(話しかけてみようかな……。)
昨日のデートが本当に不思議な体験だったこともあり、彼ともう少し話してみたかった。
結衣はトレーを持って、そっと彼の向かいの席に座った。
「……あれ? 結衣さん?」
健一が少し驚いたように顔を上げる。
「一緒に食べてもいいですか?」
「もちろん!」
健一はにっこり笑って、席を少し詰めてくれた。
「昨日は、ありがとうございました。デート、楽しかったです。」
そう言うと、健一は少し嬉しそうに笑った。
「俺も楽しかったよ! ショッピングモール、結構歩き回ったよね。」
「そうですね。でも、すごく充実してました。」
「結衣さん、結構雑貨とかじっくり見るタイプなんだね。」
「え?」
その言葉に、結衣は一瞬戸惑った。
(それって、昨日のデートのときの私の行動をちゃんと見ていたってこと……?)
普通の会話ではあるけれど、AIだったらこんなに自然に「その人らしさ」を感じ取るものだろうか?
「昨日さ、ちょっと思ったんだけど——」
健一がスプーンを置きながら、こちらをじっと見つめた。
「結衣さん、なんか時々不思議そうな顔するよね?」
「えっ?」
「昨日もさ、俺の話聞いてるときに、なんかすごく考え込んでる感じだったから。」
「……そ、そんなことないですよ。」
慌ててスプーンを持ち直しながら、結衣は誤魔化した。
(バレてる……?)
まさか、自分が「彼が本当にAIなのかどうか」を考えていたことまで気づかれている?
「まぁ、気にしないけどさ。」
健一はそう言って、さらっと話題を変えた。
「でも、本当に楽しかったよ。また行こうね。」
「……はい。」
その言葉を聞いて、結衣はまた不思議な気持ちになった。
**——この世界の木村健一は、ただのプログラムなのか?**
それとも、リアルな誰かが操作しているのか?
疑問は晴れないまま、昼休みの時間は過ぎていった。
12
あなたにおすすめの小説
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる