とある会社の秘密の研修

廣瀬純七

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秘密

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結衣と健一がバーチャルの世界の住民になってから数日が経った。穏やかな時間が流れる中、ふたりはいつものカフェで向かい合って座っていた。  

しかし、今日は健一の表情がどこか真剣だった。  

「結衣……俺、最近気づいたことがあるんだ」  

「え?」  

健一は少し息を整えてから、静かに言葉を紡いだ。  

「私はリアルの世界では……中村結衣だったんだ。そして……あなたは木村健一だったんでしょう?」  

その言葉を聞いた瞬間、結衣の胸が大きく高鳴った。やっぱり——。  

結衣は少し驚いた顔をした後、ふっと微笑んだ。  

「……それは途中から何となく分かっていたわ」  

健一は目を見開き、結衣の手をそっと握った。  

「じゃあ、やっぱり……」  

「うん。でも、それがどうしたの?」  

「どうしたって……驚かないのか?」  

「ううん、むしろ納得したの。だって、こうしてあなたと惹かれ合ったのも、きっと運命だったんだと思うから」  

健一は静かに微笑んだ。  

「……そうか。俺もそう思う」  

ふたりはただお互いを見つめ合った。  

リアルの世界では、木村健一と中村結衣だったふたり。  

しかし、バーチャルの世界では、二人の体が入れ替わって健一は結衣になり結衣は健一になって出会い、恋に落ちた。  

「これからもずっと、一緒にいよう」  

「ええ……あなたとなら、どこにいても幸せだから」  

ふたりは静かに手を取り合い、新しい人生を歩み始めた。

### **玲奈さん夫婦の秘密**  

結衣と健一がバーチャルの世界の住民になってから、しばらくの時間が流れた。  

ある日の夜、ふたりは寮の談話室でくつろぎながら話をしていた。  

健一がふと真剣な顔になり、結衣の方を見つめる。  

「結衣、ちょっと驚くかもしれないけど……実は先日結婚した玲奈さん夫婦も、俺たちと同じなんだ」  

「えっ?」  

「玲奈さんと木島さん、リアルの世界ではお互いの体が入れ替わっていたんだって」  

結衣は思わず息をのんだ。  

「それってつまり……リアルの世界では玲奈さんが木島さんで、木島さんが玲奈さんだったってこと?」  

「そういうことみたいだ」  

結衣は目を丸くして、健一の言葉を反芻した。  

「でも、それって……お互いに本当の自分を知ったうえで結婚したってこと?」  

健一は頷く。  

「そうみたいだよ。玲奈さんは『性別なんて関係ない。一番大事なのは心よ』って言ってたって」  

結衣はしばらく沈黙したあと、ふっと微笑んだ。  

「……なんだか素敵ね」  

「うん、俺もそう思う」  

結衣は玲奈の幸せそうな笑顔を思い出しながら、そっと健一の手を握った。  

「私たちも、玲奈さんたちみたいに幸せになれるかな?」  

「もちろん。俺たちも、ずっと一緒にいよう」  

健一が優しく微笑むと、結衣も小さく頷いた。  

バーチャルの世界では、性別も過去も関係ない。  

大切なのは、心と心が通じ合うこと。  

結衣は改めて、今ここで生きていくことを選んで良かったと思った。
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