意識転送装置2

廣瀬純七

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そのままでいられない日

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「やっと元に戻れた…!」  
意識が元の体に戻り、彼女はほっとした顔で深呼吸した。電話越しに彼も同じように「いやあ、本当に大変だったよ」と疲れた声を上げている。

「ねぇ、どうだった?お互いの体験、良いところもあったけど…大変じゃなかった?」  
彼女が尋ねると、彼は少し間を置き、ため息をつきながら話し始めた。

---

「まず、トイレがな!」  
彼の言葉に、彼女は吹き出しそうになる。彼が、彼女の体で女子トイレを使わなければならなかったことを思い出して、恥ずかしそうに「男子トイレってやっぱり違うんだね…」と呟く。

「いや、それがさ、最初はどうすればいいか本当にわからなくて…周りの人がみんな、なんか優雅に手を洗ってるのを見て、自分も真似しなきゃってなったけど、内心すっごく緊張したよ!」  
彼女は彼の体で男子トイレに入った時のことを思い出し、今度は自分が笑い出した。「わかる、男子トイレって…なんていうか、ちょっと気を使うよね?それに、自分の動きがつい女の子っぽくなっちゃって、周りから変な目で見られてたかも…」

---

「それと…仕草とかもさ、かなり違うもんなんだね」  
彼がそう言うと、彼女も深くうなずいた。

「私、気をつけてたんだけど、君の友達と話してると、つい普段の仕草が出ちゃうんだよね。髪を耳にかけようとして、髪が短いことに気づいたり…」  
彼女が照れくさそうに言うと、彼は声を上げて笑い出した。「あー、それ僕もやったよ!君の体で髪が邪魔になったから耳にかけようとしたら、君の友達が不思議そうな顔しててさ」

彼もまた、自分がやってしまった「失敗」を思い出して話し出した。「そういえば、友達が『最近、なんかやけに優しいよな』って言ってきたんだ。知らないうちに君の優しい雰囲気が出てたみたいで…男らしいノリがうまく出せなくて、なんか恥ずかしかったよ」

「私は逆に、普段君がどれだけ大胆に振る舞ってるのかがわかった気がするよ。君の服も、いつもより動きやすいって感じたけど、かっこつけるのが大変だったし」  
彼女がそう言うと、彼も「わかる、わかる」と共感した。

---

最後に、服装の話になった。  
「あとさ、あのスカート、ほんとどうすればいいかわからなかった…風が吹くたびに気にしなきゃいけないし、座るときも気をつけなきゃで、動くたびに大変だったよ!」  
彼が彼女の体で一日中スカートに苦労していたことを話すと、彼女は笑いながら、「そうだよね、普段のズボンとは違うでしょ?それに、ヒール履いてて歩きにくくなかった?」と尋ねた。

「めちゃくちゃ歩きにくかった!つま先を内側に向けて歩いてみたけど、ちょっとした段差でつまづきそうになって、周りの視線が痛かったよ…」  
「私も君の体で、歩き方とか服装が楽で動きやすいのはいいんだけど、なんか急に力強く見られて、少し戸惑ったなぁ」

---

こうして一日だけの「お互いの体で過ごす体験」は、大変だったけれど、二人にとっては特別な思い出となった。お互いの体の違いに戸惑いながらも、それぞれの苦労や日常を肌で感じ、より一層相手のことを理解できたことが嬉しかった。

「またいつかやってみる?」  
彼が冗談ぽく尋ねると、彼女は笑って「うーん、しばらくはいいかもね!」と言い、二人は心地よい笑い声を交わした。
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