セックスチェンジアプリ

廣瀬純七

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帰宅と変身の解除

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 「ひかりちゃん、今日もお疲れ様!」  

 千尋が明るく声をかけてくれる。俺は笑顔で「お疲れ様です!」と返しながら、急いで控え室へ向かった。スマホの画面を見る――タイムリミットまで、あと30分。  

 「やばい、急がなきゃ…!」  

 制服を脱ぎ、私服に着替えると、すぐに店を飛び出した。駅までの道を駆け足で進み、電車に乗る。外の景色が流れていく中、頭の中では時計の針が進む音が聞こえるようだった。  

 駅に着くと、マンションまでの距離をひたすら走る。自宅のドアを開き、ベッドに倒れ込むのとほぼ同時に、スマホの画面が点滅を始めた。  

 【変身解除】  

 体がじんわりと温かくなり、視界がゆっくりと滲む。腕の感覚が変わり、指が元の太さに戻る。鏡を見れば――そこには翔の姿が映っていた。  

 「……ただいま、俺」  

 12時間の夢は、また終わった。  

 でも、明日はまた「ひかり」に戻れる。そう思うと、不思議な安堵が胸に広がっていった。  


 鏡の前に立ち、翔はじっと自分を見つめた。そこに映るのは、男の姿。短く整えられた髪、少し疲れのにじむ顔。数時間前まで、俺は「ひかり」として微笑んでいたのに――。  

 「あれが、本当に俺だったのか……?」  

 湯船に浸かりながら、翔はぼんやりと考える。昼間は、メイド喫茶で働くひかりとして過ごし、明るく元気に振る舞っていた。でも、12時間が過ぎると、この現実に戻る。まるで、夢と現実を行ったり来たりしているようだった。  

 それが楽しくないわけじゃない。むしろ、人生で初めて「自分が本当にやりたいこと」をやれている気がする。接客すること、紅茶を淹れること、お客様と会話すること――ひかりでいる間は、翔としての重たい過去や、契約解除された現実から解放される。それが、心地よかった。  

 でも、この生活はいつまで続く?  

 12時間の制限。ひかりでいる時間は限られていて、リセットされるたびに、現実に引き戻される。その繰り返しに、ふと恐怖を感じた。  

 「このまま、ずっと続けられるのか……?」  

 翔は深く息を吐いた。12時間の魔法がある限り、ひかりでいられる。でも、いつかアプリの機能が使えなくなったら?いつか店の人たちにバレたら?そんな未来を想像すると、心がざわついた。  

 ――でも、考えすぎだ。  

 今はまだ、この夢を続けてもいいんじゃないか?ひかりとして生きられる時間があるなら、それを大切にしたい。  

 「明日も、またひかりになろう」  

 湯船の湯をすくい、そっと流しながら、翔は目を閉じた。  

 魔法の続く限り、もう少しだけ――夢を見ていたい。  

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