ウイルス感染

廣瀬純七

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性転換ウイルス

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**「ウイルス」**  

健一はごく普通のサラリーマンで、平凡な毎日を送っていた。しかし、彼の人生はある日突然、大きく変わってしまうことになる。  

数週間前、世界中で報道されていた新しいウイルスのニュースが、健一にとっても無関係ではなくなるとは思ってもみなかった。そのウイルスは、通常の風邪の症状から始まるが、進行すると、感染者の性別を変えてしまうという非常に珍しいものだった。医学界はそのウイルスに「Gender-Xウイルス」と名付けた。

ある朝、健一は目を覚ますと、体に違和感を覚えた。最初は疲れが溜まっているせいだと思ったが、次第にその違和感が強くなり、彼は鏡を見たとき、自分の姿が変わっていることに気がついた。細くなった首筋や丸みを帯びた肩、そして胸の膨らみ…どう見ても自分の体が女性のものになっているのだ。

「まさか…」と、健一は恐怖に震えながら、その現実を受け入れることができず、病院に向かった。病院の待合室は、同じような症状を抱える人々で溢れ返っていた。医師によると、性別の変化は一時的なものかもしれないが、今のところ原因も治療法も見つかっていないという。

「どうしてこんなことに…」と、健一は絶望感に打ちひしがれていた。しかし、他の患者たちと話をしていく中で、性別の変化によって生き方が変わっていくのを受け入れる人もいることに気がついた。ある女性は男性の体になってから、自分が元の性別ではできなかったことに挑戦し始め、活き活きとしていると言った。また、別の男性は、長年抑圧してきた女性としての自己を、今回の出来事を機に受け入れたのだと語った。

健一も、初めは自分の変化に恐怖と戸惑いしか感じなかったが、徐々に周囲の影響を受け、新たな自分を見つける旅に出ることにした。元の生活に戻りたい気持ちはもちろんあったが、今の状況を受け入れた上で、もう一度自分の人生を見つめ直そうと思うようになったのだ。

彼は自分の新しい体での生活を始め、服装や身の回りの小さな変化から少しずつ自分の新しいアイデンティティを探し始めた。自分の好みや、感覚の違いに驚きながらも、他の人々との新たな関わりを通じて、新たな視点で世界を見始めた。結局のところ、この変化は恐ろしいものであったが、同時に自分を見つめ直し、他者を理解する機会でもあった。

健一はいつか、元の体に戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。しかし、それがどちらであっても、今はこの新しい自分として、人生を謳歌する決意を固めた。
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