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翌朝の二人
しおりを挟む### 【顔交換から一夜明けて】
朝。
ユカタンは、自分のスマホのインカメを確認しながら、ため息をついた。
「うーわ……やっぱ木島くんの顔やん、コレ」
昨日から24時間経っても、顔は戻っていない。
「マジかぁ……まぁ、しゃーない!」
隣では、ユカタンの顔になった木島拓也が、無表情でコーヒーを飲んでいる。
「戻りませんね」
「せやな」
「…今日、撮影ありますよね?」
「あるでー」
「……この顔で?」
「せやでー」
ユカタンはなぜか余裕の笑み。
木島はさらに不安になる。
「なんでそんなに余裕なんですか…?」
「ふっふっふ。うち、思いついたんよ。顔が木島くんでも、メイクでなんとかなるんちゃう?」
***
### 【ユカタンのメイクチャレンジ】
「よっしゃー!やるで!」
メイク道具をずらっと並べるユカタン(中身はユカタン、顔は木島)。
木島はソファからジト目で眺めている。
「…無駄だと思いますけど」
「木島くん、メイクの力をナメたらアカン!」
「いえ、メイクじゃなくて…僕の顔のポテンシャルを…」
「うちの手にかかったら、どんな顔でも美人になるってこと、証明したる!」
***
まずはファンデーション。
木島の顔は、ユカタンの手によって丁寧に整えられていく。
「肌質、意外と悪くないやん…むしろキメ細かいかも」
「そういうの、恥ずかしいので実況しないでもらえます?」
「おっと、これはイケる予感!」
コンシーラーでクマを消し、フェイスラインをシェーディングでシャープに。
「骨格、意外と整ってるなぁ…」
「…褒められてる気がしません」
「大丈夫、これ絶対キマるやつや!」
***
次はアイメイク。
二重幅を調整し、アイシャドウで目元を華やかに。
「おおおお…!」
「な、何ですか…?」
「目が大きく見える!しかも、イケメンの延長線上に美人おるやん!」
「そんなバカな…」
まつ毛をカールさせ、マスカラを塗ると、さらにパッチリ目に。
「これ、ユカタン史上最高の出来かも!」
「それはそれで僕は複雑です…」
***
最後にリップ。
「木島くんの唇、意外と薄いから…グラデリップにしてふっくらさせて…」
ちょん、ちょん、と色を重ね、ツヤを足す。
すると――
「できた!!!」
鏡を差し出すユカタン。
そこに映るのは、確かに木島拓也の顔…のはずだが、
目元はぱっちりと華やかで、肌は陶器のようにつるつる。
口元はふっくらして柔らかそうで、まるで「中性的な超美形モデル」みたいな雰囲気になっていた。
「う、うわ……誰コレ……」
木島は本気で混乱している。
「いや、マジで美人やん!!」
ユカタンはテンションMAXで、スマホのカメラを向けてパシャパシャ連写。
「やばいやばい!インスタ載せたい!けど木島くんの許可取らんと炎上するからなぁ~!」
「やめてください!マジでやめてください!」
木島は必死に鏡を覗き込むが、何度見ても「美形な女性」にしか見えない。
「これ、本当に僕ですか…?」
「せやで!木島くんの顔やけど、うちのメイクテクや!」
「なんか、負けた気がする……」
***
### 【その後】
「これで、次の動画もイケるやろ?」
「…確かに、視聴者は誰も僕だとは思わないでしょうけど」
「やろ?むしろ、『新キャラ登場!?』って思われるんちゃう?」
「いっそ、別人格で活動します?」
「アリやな!」
ユカタンはノリノリだ。
「じゃあ、この顔で『美人ゲーマー』キャラいこうや!名前は…『カヤタン』で!」
「安易すぎません…?」
「木島くん、サブ垢作るなら今やで!」
木島は、ため息をつきながらも、鏡の中の自分(美人バージョン)に、
「…まぁ、悪くないかも」
と、こっそり呟いたのだった。
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