two in one

廣瀬純七

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姉と弟

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タイトル: 「ふたりの軌跡」

### プロローグ

日常の一瞬の油断が、すべてを変えた。

姉の奈々子と弟の翔太は、家族旅行の帰り道、交通事故に巻き込まれた。激しい衝撃音と共に世界が暗転し、奈々子はすぐに意識を取り戻したが、弟の翔太は病院のベッドで昏睡状態に陥っていた。

「翔太…」  
奈々子はベッドの脇で、彼の小さな手を握りしめながら、静かに涙を流していた。彼が目を覚ますことを願って。どれだけ時間が過ぎたのかもわからない。

だが、ある日、不思議なことが起きた。

---

### 第一章: ふたつの声

奈々子がいつものように翔太の病室を訪れ、彼の手を握っていると、突然頭の中に強い声が響いた。

「姉ちゃん…?」

「翔太!?」  
驚いて周りを見渡したが、部屋には誰もいない。翔太は目を閉じたままだ。

「姉ちゃん、僕だよ。ここにいる…お姉ちゃんの中に。」

奈々子は目を見開いた。「どういうこと?」

「分からない。目が覚めたと思ったら、僕、お姉ちゃんの体の中にいたんだ。僕の体は動かなくて、でも、お姉ちゃんの体から見える景色が見えるんだ。」

奈々子は信じられない気持ちで心臓が早鐘を打つのを感じた。しかし、弟の声が確かに自分の中から聞こえている。自分の体の中に、翔太の精神がいるのだ。

---

### 第二章: ふたりの生活

奈々子は最初こそ戸惑ったものの、すぐにこの異常な状況に慣れていった。翔太は普段のように彼女と会話を交わし、まるでそこにいるかのように一緒に過ごす。朝起きるときも、学校に行くときも、勉強中も、ふたりは同じ体を共有しながら過ごしていた。

「姉ちゃん、これわかる?数学の問題、難しすぎるよ。」  
「そんなの簡単よ。ほら、ここをこうやって…」

奈々子は翔太の分の宿題を片手で解きながら、いつも通りの会話を続けた。だが、この「普通さ」は、次第に重荷となっていった。

翔太の存在が常に自分の中にいることで、奈々子は次第に自分自身を見失い始めていた。彼女の感情や考えは、翔太の意識によって抑え込まれることがあり、次第に「自分が自分でない感覚」に苛まれるようになっていった。

---

### 第三章: 精神の境界

ある日の夜、奈々子は夢を見た。そこには、白い無限の空間が広がっており、その中央に翔太が立っていた。

「姉ちゃん、僕…ここにずっといていいのかな?」翔太の表情は曇っていた。

「どういうこと?」

「僕、昏睡状態のままなんだよね。目が覚めないかもしれないのに、こんなふうに姉ちゃんの体に居座ってるのって、迷惑なんじゃないかって思って…」

奈々子は胸が痛んだ。自分の中で感じていた違和感や重荷は、翔太も同じように感じていたのだ。しかし、彼を責める気持ちは微塵もなかった。奈々子は翔太に近づき、その肩に手を置いた。

「翔太、私はずっと一緒にいたい。あなたがいることが迷惑だなんて思わない。けれど、あなたは自分の体で生きてほしい。だから、目を覚まして。」

翔太は静かにうなずいた。

---

### 第四章: ふたりの選択

それから数週間、奈々子と翔太は協力しながら、翔太が自分の体に戻れる方法を探していた。しかし、医者に聞いても、特に解決策は見つからない。そんな中、奈々子の心の中にひとつの考えが芽生えた。

「翔太、このまま私たちが一緒にい続けると、あなたも私も自由になれない。私たちが分かれる方法を見つけなければ…」

「でも、どうやって?」

奈々子は決意を固めた。

「私は、自分を犠牲にしてでも、あなたを救いたい。」

---

### クライマックス: 別れの時

奈々子は、翔太の回復を祈りつつ、自分自身を徐々に精神的に解放する方法を模索していた。そしてついに、彼女は自分の命を翔太に捧げるという究極の決断を下す。

「姉ちゃん、そんなことしないで!僕は姉ちゃんが必要だよ!」

「大丈夫。私はあなたを信じてる。翔太なら、強く生きていける。私の命が少しでもあなたの助けになるなら、それでいいの。」

奈々子は深呼吸をし、心の中で弟に最後の別れを告げた。

---

### エピローグ: 新たな旅立ち

数日後、奇跡的に翔太は目を覚ました。奈々子の願いが通じたのか、彼の精神は元の体に戻ったのだ。しかし、彼が目覚めた時、隣にいたはずの奈々子の姿はなかった。

翔太は病室の窓から空を見上げ、静かに涙を流した。姉がいつも彼を見守ってくれていることを、彼は感じていた。

奈々子の犠牲があったからこそ、翔太は新たな人生を歩み始めることができたのだ。ふたりの絆は、これからも永遠に続いていくのだろう。

「姉ちゃん、ありがとう。」  
翔太は空に向かって静かに呟いた。

**終わり**
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