12 / 27
12-エビフライの仕上げ
しおりを挟む
「なるほど……そんなことがあったんですね」
「本当に、もう嫌になっちゃう……相手が普通の人、いいえ私に相応しい男で上手くやっていける人なら私も貴族の娘である以上、諦めて家に戻るわよ。でもね?姉は恋人との結婚が許されて、その代わりに私があんなロクデナシの犠牲になれっていうのはどうしても納得できないの!!」
エリシアは行き場のない感情をぶつけるようにテーブルをバシバシと叩く。
「俺がエリシアさんの立場でも納得できないと思います」
「でしょう!?あ、でもね?姉が嫌いなわけじゃないのよ……?姉は両親からの愛情を一身に受けて育った人で、私にも優しくて良くしてくれるの……でも。私と違って自分が優先されることが当たり前に育ってきてるから諦めるってことを知らないのよ。私がいつも我慢させられてどう思ってるかなんて、知りもしないの……それもやっぱりちょっと腹が立つのよ!」
「それは……ちょっと複雑な気持ちですね」
「そう!そうなの!!」
エリシアの感じている複雑な気持ちには俺にも心当たりがある。
元の世界の友人で付き合いのあった友人の一人がそういう奴だったからだ。
自分の意見を通すのに他人が譲るのが当たり前で嫌な事は人任せにして自分が困ると助けを求めてくるくせに、自分以外が困ってる時は知らないふりをする。
でも憎めない部分もあって、ごく稀にだが助けて貰ったこともあるから恩を感じて付き合いを続けていた。
結局は恋人が出来た途端「彼女がお前の事嫌いだから」とか言って十年以上付き合いのある俺に絶縁を叩きつける様なクズだったんだが。
おっといけない、つい昔の嫌な奴を思い出してしまった。
今は俺のくだらない思いでより、エリシアが大事だ。
「はあ……ニロに吐き出したら少しすっきりしたわ」
一気に紅茶を飲み干してエリシアが微笑む。
俺は相槌を打ちながら聞いていただけだが少しでも役に立てたなら良かった。
「ニロ、今夜は……いえ、暫く泊めてくれるかしら?家に帰りたくないし、泊まってた宿屋に父が押しかけてきたら迷惑かけちゃうし。あ、またシャワー貸してくれる?あとしゃんぷーも!お代はこれで!」
エリシアはぱっと微笑むとシスター服のポケットから財布らしき袋を取り出して中から金貨を五枚ほど取り出してテーブルに並べる。
「えっと……」
困った、俺はこの世界の貨幣の価値を知らない……!
受け取ることも返すことも出来ずに困ってしまい、エリシアに尋ねる。
「あの、俺の世界……俺の育った国では金貨ではなく違う貨幣や紙幣を扱っていたのでこの世界の価値が良く分からなくて」
「あら、そういえばニロは違う世界の出身だったわね。気が付かなくてごめんなさい」
エリシアは財布からそれぞれ貨幣を取り出すと丁寧にその価値を一つずつ説明してくれた。
それによると金貨は一枚で日本円にして一万円の価値があるようだ。
それが五枚……つまり五万円の宿泊費を彼女は俺に支払おうとしている。
それはさすがに高すぎじゃないか!?
「あの……さすがに多すぎるかと」
「あら、異世界の技術を使わせてもらう上にほとぼりが冷めるまでお世話になるんだからこれくらい当然よ。足りないならもっと出すわ」
「いいえ!大丈夫です!」
「そう?じゃあ早速シャワー借りるわね。あ、覗いちゃだめよ?」
「覗きませんよ!!」
ぎょっとして反論するとエリシアは楽し気に笑いながら浴室に向かっていった。
思わぬところで得た初収入の金貨は少し重かった。
エリシアがのんびりバスタイムを楽しんでいる間に、俺は自分の部屋に向かい彼女の着替えを用意する。
一度も開封してない黒の長袖ティーシャツとこれまた未使用のちょっと有名なブランドのジャージである。
どちらも会社の忘年会でやったビンゴ大会で貰ったものだがサイズがレディースだった。俺には小さくて到底着られないので、そのうち母にでも押し付けようと思っていたものだ。
エリシアさんなら着れるだろうし、多少大きくてダボっとしててもそれはそれでありだ!
萌袖になればなお良し!!
そんな期待を抱きつつ、着替えをリビングへ運んだあとはミニチュアフードを実体化させて夕食の準備に取り掛かる。
今日はこの前仕込んでいたエビフライだ。
着色していた透明粘土は良い感じに色が馴染んで揚げ物の色味になっている。
これをおろし金で擦り細かくしたらタッパーに入れる。そして仕込んで置いた中身の海老に薄く速乾ボンドをはけで塗り付け、タッパーへ投入。中でころころ転がせば衣が満遍なくついてくれた。
速乾ボンドが乾いたら、えびに纏わせた衣の上からこげ茶色に着色したレジンをソース代わりにかけて硬化ライトで固めれば出来上がりだ。
実体化したばかりのエビフライをお皿に盛り付けて、夕食に時間になったらあらかじめミニチュアを作り実体化させたうえで冷蔵庫に冷やしていたミニトマトと千切りキャベツを添えればオーケーだ。
さっき、実体化したお菓子結構食べてたしエリシアさんもすぐにお腹はすかないよな?
「本当に、もう嫌になっちゃう……相手が普通の人、いいえ私に相応しい男で上手くやっていける人なら私も貴族の娘である以上、諦めて家に戻るわよ。でもね?姉は恋人との結婚が許されて、その代わりに私があんなロクデナシの犠牲になれっていうのはどうしても納得できないの!!」
エリシアは行き場のない感情をぶつけるようにテーブルをバシバシと叩く。
「俺がエリシアさんの立場でも納得できないと思います」
「でしょう!?あ、でもね?姉が嫌いなわけじゃないのよ……?姉は両親からの愛情を一身に受けて育った人で、私にも優しくて良くしてくれるの……でも。私と違って自分が優先されることが当たり前に育ってきてるから諦めるってことを知らないのよ。私がいつも我慢させられてどう思ってるかなんて、知りもしないの……それもやっぱりちょっと腹が立つのよ!」
「それは……ちょっと複雑な気持ちですね」
「そう!そうなの!!」
エリシアの感じている複雑な気持ちには俺にも心当たりがある。
元の世界の友人で付き合いのあった友人の一人がそういう奴だったからだ。
自分の意見を通すのに他人が譲るのが当たり前で嫌な事は人任せにして自分が困ると助けを求めてくるくせに、自分以外が困ってる時は知らないふりをする。
でも憎めない部分もあって、ごく稀にだが助けて貰ったこともあるから恩を感じて付き合いを続けていた。
結局は恋人が出来た途端「彼女がお前の事嫌いだから」とか言って十年以上付き合いのある俺に絶縁を叩きつける様なクズだったんだが。
おっといけない、つい昔の嫌な奴を思い出してしまった。
今は俺のくだらない思いでより、エリシアが大事だ。
「はあ……ニロに吐き出したら少しすっきりしたわ」
一気に紅茶を飲み干してエリシアが微笑む。
俺は相槌を打ちながら聞いていただけだが少しでも役に立てたなら良かった。
「ニロ、今夜は……いえ、暫く泊めてくれるかしら?家に帰りたくないし、泊まってた宿屋に父が押しかけてきたら迷惑かけちゃうし。あ、またシャワー貸してくれる?あとしゃんぷーも!お代はこれで!」
エリシアはぱっと微笑むとシスター服のポケットから財布らしき袋を取り出して中から金貨を五枚ほど取り出してテーブルに並べる。
「えっと……」
困った、俺はこの世界の貨幣の価値を知らない……!
受け取ることも返すことも出来ずに困ってしまい、エリシアに尋ねる。
「あの、俺の世界……俺の育った国では金貨ではなく違う貨幣や紙幣を扱っていたのでこの世界の価値が良く分からなくて」
「あら、そういえばニロは違う世界の出身だったわね。気が付かなくてごめんなさい」
エリシアは財布からそれぞれ貨幣を取り出すと丁寧にその価値を一つずつ説明してくれた。
それによると金貨は一枚で日本円にして一万円の価値があるようだ。
それが五枚……つまり五万円の宿泊費を彼女は俺に支払おうとしている。
それはさすがに高すぎじゃないか!?
「あの……さすがに多すぎるかと」
「あら、異世界の技術を使わせてもらう上にほとぼりが冷めるまでお世話になるんだからこれくらい当然よ。足りないならもっと出すわ」
「いいえ!大丈夫です!」
「そう?じゃあ早速シャワー借りるわね。あ、覗いちゃだめよ?」
「覗きませんよ!!」
ぎょっとして反論するとエリシアは楽し気に笑いながら浴室に向かっていった。
思わぬところで得た初収入の金貨は少し重かった。
エリシアがのんびりバスタイムを楽しんでいる間に、俺は自分の部屋に向かい彼女の着替えを用意する。
一度も開封してない黒の長袖ティーシャツとこれまた未使用のちょっと有名なブランドのジャージである。
どちらも会社の忘年会でやったビンゴ大会で貰ったものだがサイズがレディースだった。俺には小さくて到底着られないので、そのうち母にでも押し付けようと思っていたものだ。
エリシアさんなら着れるだろうし、多少大きくてダボっとしててもそれはそれでありだ!
萌袖になればなお良し!!
そんな期待を抱きつつ、着替えをリビングへ運んだあとはミニチュアフードを実体化させて夕食の準備に取り掛かる。
今日はこの前仕込んでいたエビフライだ。
着色していた透明粘土は良い感じに色が馴染んで揚げ物の色味になっている。
これをおろし金で擦り細かくしたらタッパーに入れる。そして仕込んで置いた中身の海老に薄く速乾ボンドをはけで塗り付け、タッパーへ投入。中でころころ転がせば衣が満遍なくついてくれた。
速乾ボンドが乾いたら、えびに纏わせた衣の上からこげ茶色に着色したレジンをソース代わりにかけて硬化ライトで固めれば出来上がりだ。
実体化したばかりのエビフライをお皿に盛り付けて、夕食に時間になったらあらかじめミニチュアを作り実体化させたうえで冷蔵庫に冷やしていたミニトマトと千切りキャベツを添えればオーケーだ。
さっき、実体化したお菓子結構食べてたしエリシアさんもすぐにお腹はすかないよな?
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる