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17-自宅警備員、子供を引き取る
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「お兄さんとお姉さんって夫婦なのか?」
「ぶっ!?」
朝食を終え一息ついていると突然マルセルがそんな事を口にした。
思わず飲んでいたお茶を吹き出しかけた俺だが、エリシアは笑顔で「違うわ」と即否定。
事実だけどちょっと傷付きました……。
「私はニロの友達でね、暫くお泊りで遊びに来てるのよ」
「そっか……」
マルセルが残念そうに俯いた。それが気になったので尋ねてみる。
「マルセル、俺とエリシアさんが夫婦だったら何かあるのかな?」
「……子供がいないなら、このうちの子にしてもらえないかと思ったんだ。このうちの子になったらもう、追いかけられたりしないし、ライネルがお腹すかせることもないだろ」
その言葉に俺は胸が苦しくなる。
奴隷商人に追いかけられ、ひもじい思いをしながらこの子たちは懸命に生きてきたのだろう。
特に兄のマルセルは弟を守ろうと必死だったに違いない。
俺、こういうのに弱いんだよおっ……!!
動物や子供の切ない話や悲しい話は耐えがたい。
元の世界にいた時は学生がイジメで自殺、なんてニュースを見ると悲し過ぎて涙が止まらなくなるし、すぐさま神社に駆け込んで万札を賽銭箱に突っ込みながら「どうか苦しい思いで亡くなった子の魂があの世で救われますように」とお祈りしたこともある。
一度それを友人に話したら「それ自分が優しいって自慢したいの?偽善者じゃん」と馬鹿にされたのでそれ以降誰にも話したことはないが。
偽善でも何もしないよりマシだ。
神様が聞いてくれるかはわからないが、祈らなければ届きもしない。
とにかく、ここで出会ったのも何かの縁だ。
この子たちは俺が助けてやりたい!
気が付けば俺はマルセルとライネルを抱きしめていた。
「わっ!?」「何?」
「うちの子におなり!!」
「ちょっとニロ!?」
声を上げたのはエリシアだ。
「あなたこの世界の常識も知らないのにそんなに簡単に……!」
「だけどこの子達を助けた大人として俺には責任があるんです!助けたのにはい、さよなら、なんて出来ません!」
「職もない、収入もない、魔法も使えない、おまけに戦いもできないのに子供二人をどうやって守って養っていくつもり?」
「うぐうっ!!」
エリシアの世論が俺の心にクリティカルヒットする。
確かに今は自宅警備員……いやニートですけどおぉっ!
「……言い出した俺が言うのも変だけど……お兄さん、そんなにちチョロあまで大丈夫かよ?」
「ちょろあま?」
「チョロくて甘い」
「うぐううぅ……!!」
マルセルの言葉が俺に追い打ちをかける。
「……お兄さん、だいじょぶ?」
ライネルだけが俺の頭を小さな手でぽんぽんと撫でてくれた。ええ子や……。
「……エリシアさんの言葉ももっともなんですけど……やっぱり俺はマルセルとライネルを引き取りたいです。助けた責任もあるし、俺にしてあげられることはしてあげたい。どんな世界でどんな時代でも、真っ当な子供には未来がある。幸せになる権利がある。俺はそう思います」
「…………ニロ、お人好しがすぎんるんじゃない?」
「そう、ですかね」
「この国じゃ、子供を助けて自分が引き取るなんて滅多にしないのよ。良くて孤児院に預けてさよならで、悪ければ奴隷とまでは行かなくとも最低限の世話で召使いの様に死ぬまでこき使う人間だっているわ」
「俺はこの世界の人間じゃないですし、子供に召使いの真似なんて絶対させられませんよ。まあ、部屋の掃除とか洗濯とかちょっと手伝ってくれると助かりますけど……」
「……もうっ、ニロには何を言っても無駄ね」
エリシアが呆れたように溜め息をつく。
「……俺達、ここにいていいのか?」
黙って話を聞いていたマルセルが首を傾げる。
「もちろん。君達が嫌じゃなかったら俺と暮らそう?」
「本当に……?ご飯も毎日食べられる?」
「お布団で毎日寝れる?」
マルセルとライネルの目がぱっと輝く。
「もちろん。俺と暮らしてくれるかい?」
「うん!」
「いいよっ!」
にぱっと笑った子供達が可愛くてつい俺も顔が緩んでしまう。
マルセルとライネルを我が家に迎えることが決まった直後、エリシアが顔を上げた。
「ニロ、セドリックが来たみたい」
「あ、じゃあ俺出向かに行ってきます」
子供達をエリシアに任せて外に出ると家の近くで辺りをきょろきょろ見回しているセドリックが居た。
「セドリックさん!こっちです!」
「っ!ニロ、今どこから……」
急に俺が現れ驚いたようだ。
エリシアの魔法は完璧らしく、セドリックにも俺の家の場所は分からないらしい。
俺は持ち主だからか、魔法の外に出ても家があるのがはっきり見える。
「エリシアさんに隠蔽と防音の魔法をかけてもらったんです。悪人に見つかると大変だからって」
「ああ、なるほど。それなら家が見当たらないわけだ」
「ありがたい限りですよ。どうぞ、こっちです」
セドリックを伴って家に入ると、中に案内する前に玄関先で放置していた奴隷商人達の武器を見てもらう。
「これです、通信した時に話した武器」
「なるほど……この作りは見たことがある。確か隣国で使われていた武器だ。もう少し詳しく調べたい、預かってもいいか?」
「もちろんです。俺が持っていても使えませんし」
俺が頷くとセドリックは剣を掴み、何もない空間に収納していく。
まるで手品みたいな光景に思わず魅入っているとセドリックは気が付いたように顔を上げた。
「あぁ、これか。俺にはアイテムボックスというスキルがあってな、小さい小屋くらいまでの大きさならその中に入れて持ち運びが出来るんだ。大きさは異なるが十人に一人が持っているスキルだからあまり珍しくはないがな」
アイテムボックス、キター!!
ファンタジーの定番ですよね!!ってこの人、転移魔法にアイテムボックス持ちとか何気に凄すぎるのでは!?
う、羨ましいっ……!!俺なんてミニチュアが実体化する以外に何もできないのに!!
「ぶっ!?」
朝食を終え一息ついていると突然マルセルがそんな事を口にした。
思わず飲んでいたお茶を吹き出しかけた俺だが、エリシアは笑顔で「違うわ」と即否定。
事実だけどちょっと傷付きました……。
「私はニロの友達でね、暫くお泊りで遊びに来てるのよ」
「そっか……」
マルセルが残念そうに俯いた。それが気になったので尋ねてみる。
「マルセル、俺とエリシアさんが夫婦だったら何かあるのかな?」
「……子供がいないなら、このうちの子にしてもらえないかと思ったんだ。このうちの子になったらもう、追いかけられたりしないし、ライネルがお腹すかせることもないだろ」
その言葉に俺は胸が苦しくなる。
奴隷商人に追いかけられ、ひもじい思いをしながらこの子たちは懸命に生きてきたのだろう。
特に兄のマルセルは弟を守ろうと必死だったに違いない。
俺、こういうのに弱いんだよおっ……!!
動物や子供の切ない話や悲しい話は耐えがたい。
元の世界にいた時は学生がイジメで自殺、なんてニュースを見ると悲し過ぎて涙が止まらなくなるし、すぐさま神社に駆け込んで万札を賽銭箱に突っ込みながら「どうか苦しい思いで亡くなった子の魂があの世で救われますように」とお祈りしたこともある。
一度それを友人に話したら「それ自分が優しいって自慢したいの?偽善者じゃん」と馬鹿にされたのでそれ以降誰にも話したことはないが。
偽善でも何もしないよりマシだ。
神様が聞いてくれるかはわからないが、祈らなければ届きもしない。
とにかく、ここで出会ったのも何かの縁だ。
この子たちは俺が助けてやりたい!
気が付けば俺はマルセルとライネルを抱きしめていた。
「わっ!?」「何?」
「うちの子におなり!!」
「ちょっとニロ!?」
声を上げたのはエリシアだ。
「あなたこの世界の常識も知らないのにそんなに簡単に……!」
「だけどこの子達を助けた大人として俺には責任があるんです!助けたのにはい、さよなら、なんて出来ません!」
「職もない、収入もない、魔法も使えない、おまけに戦いもできないのに子供二人をどうやって守って養っていくつもり?」
「うぐうっ!!」
エリシアの世論が俺の心にクリティカルヒットする。
確かに今は自宅警備員……いやニートですけどおぉっ!
「……言い出した俺が言うのも変だけど……お兄さん、そんなにちチョロあまで大丈夫かよ?」
「ちょろあま?」
「チョロくて甘い」
「うぐううぅ……!!」
マルセルの言葉が俺に追い打ちをかける。
「……お兄さん、だいじょぶ?」
ライネルだけが俺の頭を小さな手でぽんぽんと撫でてくれた。ええ子や……。
「……エリシアさんの言葉ももっともなんですけど……やっぱり俺はマルセルとライネルを引き取りたいです。助けた責任もあるし、俺にしてあげられることはしてあげたい。どんな世界でどんな時代でも、真っ当な子供には未来がある。幸せになる権利がある。俺はそう思います」
「…………ニロ、お人好しがすぎんるんじゃない?」
「そう、ですかね」
「この国じゃ、子供を助けて自分が引き取るなんて滅多にしないのよ。良くて孤児院に預けてさよならで、悪ければ奴隷とまでは行かなくとも最低限の世話で召使いの様に死ぬまでこき使う人間だっているわ」
「俺はこの世界の人間じゃないですし、子供に召使いの真似なんて絶対させられませんよ。まあ、部屋の掃除とか洗濯とかちょっと手伝ってくれると助かりますけど……」
「……もうっ、ニロには何を言っても無駄ね」
エリシアが呆れたように溜め息をつく。
「……俺達、ここにいていいのか?」
黙って話を聞いていたマルセルが首を傾げる。
「もちろん。君達が嫌じゃなかったら俺と暮らそう?」
「本当に……?ご飯も毎日食べられる?」
「お布団で毎日寝れる?」
マルセルとライネルの目がぱっと輝く。
「もちろん。俺と暮らしてくれるかい?」
「うん!」
「いいよっ!」
にぱっと笑った子供達が可愛くてつい俺も顔が緩んでしまう。
マルセルとライネルを我が家に迎えることが決まった直後、エリシアが顔を上げた。
「ニロ、セドリックが来たみたい」
「あ、じゃあ俺出向かに行ってきます」
子供達をエリシアに任せて外に出ると家の近くで辺りをきょろきょろ見回しているセドリックが居た。
「セドリックさん!こっちです!」
「っ!ニロ、今どこから……」
急に俺が現れ驚いたようだ。
エリシアの魔法は完璧らしく、セドリックにも俺の家の場所は分からないらしい。
俺は持ち主だからか、魔法の外に出ても家があるのがはっきり見える。
「エリシアさんに隠蔽と防音の魔法をかけてもらったんです。悪人に見つかると大変だからって」
「ああ、なるほど。それなら家が見当たらないわけだ」
「ありがたい限りですよ。どうぞ、こっちです」
セドリックを伴って家に入ると、中に案内する前に玄関先で放置していた奴隷商人達の武器を見てもらう。
「これです、通信した時に話した武器」
「なるほど……この作りは見たことがある。確か隣国で使われていた武器だ。もう少し詳しく調べたい、預かってもいいか?」
「もちろんです。俺が持っていても使えませんし」
俺が頷くとセドリックは剣を掴み、何もない空間に収納していく。
まるで手品みたいな光景に思わず魅入っているとセドリックは気が付いたように顔を上げた。
「あぁ、これか。俺にはアイテムボックスというスキルがあってな、小さい小屋くらいまでの大きさならその中に入れて持ち運びが出来るんだ。大きさは異なるが十人に一人が持っているスキルだからあまり珍しくはないがな」
アイテムボックス、キター!!
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う、羨ましいっ……!!俺なんてミニチュアが実体化する以外に何もできないのに!!
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