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3 いや何言ってんですかアンタ
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ところで我が兄はどんなご用事でお越しになられたんでしょう?
お嬢様は相変わらず兄にべったりで楽しそうにここ数日のお話をされており、兄も優しく(甘く)それに相槌を打っている。
通りかかるメイド達はそれそれは微笑ましい様子を隠すことなくその顔に称えており
まあ何が言いたいかと言いますと誰もツッコまない。
…よもや入学前の忙しいこの時期に婚約者とデートするために来たわけではないでしょう。
用件があるなら早く言ってくれないでしょうかね。そろそろ私が認識された上での現状に耐えかねてまいりました。耐久レースを走っているつもりは無かったのです。
コホン、と咳払いをしお二人に一歩距離を縮める。
「さて、兄上様?ご用件は何でございましょうか?」
あと一と半刻後にはお嬢様のマナーレッスンがあるのだ。メイドが居ない今時間管理もワタシのお役目である。
ピンク色の雰囲気に水を差すようで悪いが従者然として進言すると、ふたりはそっと距離をとった。また隣合わせでソファに座ったが。揺るがなかったです。
お嬢様の部屋のそとに居たメイドさんにお茶の用意を頼むと少ししてポットやカップ、焼き菓子を乗せたカートを持ってきてくれた。
まだ午前の業務も始まったばかりで仕事が残っているのでしょう、預かりますよ。と告げると少し頬を赤らめて一礼したのち走って行かれました。
…熱でもあったのでしょう。ワタシの名誉のため申し上げますがワタシは女です。三話にして漸く女と主張しました。遅すぎる
カートを部屋へと運び慣れた手つきで茶葉を蒸らしお湯を注ぎます。
少し温めたティーカップに注ぐとお二人の前に焼き菓子と共にお出ししました。そして私はお嬢様の後ろに立ちます。
「ああそうだ、ローゼ。君に知らせがあったんだよ」
ワタシに用事ですか。
一口茶を口に含んだ兄が、思い出したように言う。それを早く言え。
苛立ちを抑えて静かに答える
「知らせ?鳩は届いておりませんが…」
エルミッテ家の家人は皆それぞれ護衛役を抱えて忙しく、中々顔を合わせる時間も機会もない。
しかし連絡は密に取り合う必要がある職業上家系内での連絡は使い魔の鳩をつかって取り合う様になっている。ワタシに鳩が届いたのは昨日の晩だ。
内容は兄からお嬢様の観察報告の請求というくっっそくだらない内容で少しイラっとしたのは言うまでもない。
今日はおさげにしてお眠りになられてますよとだけ送っていたがこれはお嬢様には内緒だ。
「今朝がた我が家に届いてね。どうやら一週間後王太子殿下の学園入学の祝いのパーティーがあるんだそうだ。ちなみに僕はエルミッテ子爵家代表として表立って参加することになった。」
「はあ。」
要は父兄二人、現当主と次期当主として縁つながりの各家とお仕えする王家へと挨拶回りをする。それがどうした、と疑問に思ったと同時に瞬時に頭が回転する。──まさか、
「そう。つまり王太子殿下の影として君は一週間前…まあつまり今日から王城へ行ってもらう。宜しく頼むよ。我が家一の闇魔法使いの“隠密”さん」
開いてるかもわからない目が弧を描く。ニッコリ、という音が大変良く似合う笑顔を浮かべながらブラック企業もビックリの横暴な案件提示をしてくる兄はワタシはやはり悪魔だと思わざるを得なかった。
「(王家の護衛は嫌だーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!)」
脳内でちらつくプラチナブロンドを必死で追いやりワタシは整然と屹立しながらも心の中で天に届くように大きく吠えていた。冷汗は止まらない。
ちなみに、ものすごく、ものすごく今更なのだが我が悪魔(兄)は乙女ゲームの攻略対象じゃあないらしい。
ストーリーで存在が匂う程度だったとのことでそれを知って多少の溜飲は下がった。ワタシは出番がそこそこにあった。攻略対象じゃないが。
絶望するワタシにやったわね!とお嬢様の立てた親指をそっと両手で戻しておいた
我が兄との別れを惜しむお嬢様のお見送りの元、ワタシは馬車に揺られていた。
この男爵領から王都までは三日ほどかかる。
お嬢様もまだお披露目を果たしていないが当日兄の権限でこっそり参加する事になっている。
殿下の許可は得てるらしい。
しかし数日離れるとなると不安なので念のためお嬢様の影にはワタシの使い魔を護衛として仕込ませておいた。
何かがあればワタシは影を通して応戦する事になるが。
基本的に男爵領は拍子抜けするほど平穏なので杞憂に終わるだろう。忙しいのはまだ先だ。
餌は与えなくていい旨を伝えてあるのだが、あの御心優しいお嬢様の事だ。
嫌いなニンジンなど影に落としている可能性もあるのでお嬢様のお皿に戻る様空間を繋げておくことにした。
何故ワタシだけ先の王城入りなのかと言うと先ほど兄が言っていた護衛の件で王太子殿下へのお目通りをするため。当日影側の警護として自分が携わる旨をご挨拶に伺わねばならないのだ。ああ行きたくない。
闇の化身と言われても否定しかねない長く伸ばした前髪と肩口まで切った黒髪、他の色を混ぜる事を許さない黒の瞳とこの全身黒尽くしの衣装のワタシ。
相対して王太子殿下は朝日に透かした様な輝かしいプラチナブロンドの髪と大きなエメラルドを閉じ込めた様なグリーンの瞳、そして整ったそのご容貌。騒がぬ令嬢は(お嬢様とワタシを除く)居ないと言われる。
比べるもおこがましいとは百も二百も承知の上だが、あんな美形が目の前にいたら私はろうそくの炎が如くフっと一息で消えてしまうんじゃないだろうか。
この輝かしい存在を前にワタシはどれほど精神を削られるのかと思うと前世の弱小オタクだった頃と何ら変わらぬようで胃がギリギリと絞られていた。
お嬢様は相変わらず兄にべったりで楽しそうにここ数日のお話をされており、兄も優しく(甘く)それに相槌を打っている。
通りかかるメイド達はそれそれは微笑ましい様子を隠すことなくその顔に称えており
まあ何が言いたいかと言いますと誰もツッコまない。
…よもや入学前の忙しいこの時期に婚約者とデートするために来たわけではないでしょう。
用件があるなら早く言ってくれないでしょうかね。そろそろ私が認識された上での現状に耐えかねてまいりました。耐久レースを走っているつもりは無かったのです。
コホン、と咳払いをしお二人に一歩距離を縮める。
「さて、兄上様?ご用件は何でございましょうか?」
あと一と半刻後にはお嬢様のマナーレッスンがあるのだ。メイドが居ない今時間管理もワタシのお役目である。
ピンク色の雰囲気に水を差すようで悪いが従者然として進言すると、ふたりはそっと距離をとった。また隣合わせでソファに座ったが。揺るがなかったです。
お嬢様の部屋のそとに居たメイドさんにお茶の用意を頼むと少ししてポットやカップ、焼き菓子を乗せたカートを持ってきてくれた。
まだ午前の業務も始まったばかりで仕事が残っているのでしょう、預かりますよ。と告げると少し頬を赤らめて一礼したのち走って行かれました。
…熱でもあったのでしょう。ワタシの名誉のため申し上げますがワタシは女です。三話にして漸く女と主張しました。遅すぎる
カートを部屋へと運び慣れた手つきで茶葉を蒸らしお湯を注ぎます。
少し温めたティーカップに注ぐとお二人の前に焼き菓子と共にお出ししました。そして私はお嬢様の後ろに立ちます。
「ああそうだ、ローゼ。君に知らせがあったんだよ」
ワタシに用事ですか。
一口茶を口に含んだ兄が、思い出したように言う。それを早く言え。
苛立ちを抑えて静かに答える
「知らせ?鳩は届いておりませんが…」
エルミッテ家の家人は皆それぞれ護衛役を抱えて忙しく、中々顔を合わせる時間も機会もない。
しかし連絡は密に取り合う必要がある職業上家系内での連絡は使い魔の鳩をつかって取り合う様になっている。ワタシに鳩が届いたのは昨日の晩だ。
内容は兄からお嬢様の観察報告の請求というくっっそくだらない内容で少しイラっとしたのは言うまでもない。
今日はおさげにしてお眠りになられてますよとだけ送っていたがこれはお嬢様には内緒だ。
「今朝がた我が家に届いてね。どうやら一週間後王太子殿下の学園入学の祝いのパーティーがあるんだそうだ。ちなみに僕はエルミッテ子爵家代表として表立って参加することになった。」
「はあ。」
要は父兄二人、現当主と次期当主として縁つながりの各家とお仕えする王家へと挨拶回りをする。それがどうした、と疑問に思ったと同時に瞬時に頭が回転する。──まさか、
「そう。つまり王太子殿下の影として君は一週間前…まあつまり今日から王城へ行ってもらう。宜しく頼むよ。我が家一の闇魔法使いの“隠密”さん」
開いてるかもわからない目が弧を描く。ニッコリ、という音が大変良く似合う笑顔を浮かべながらブラック企業もビックリの横暴な案件提示をしてくる兄はワタシはやはり悪魔だと思わざるを得なかった。
「(王家の護衛は嫌だーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!)」
脳内でちらつくプラチナブロンドを必死で追いやりワタシは整然と屹立しながらも心の中で天に届くように大きく吠えていた。冷汗は止まらない。
ちなみに、ものすごく、ものすごく今更なのだが我が悪魔(兄)は乙女ゲームの攻略対象じゃあないらしい。
ストーリーで存在が匂う程度だったとのことでそれを知って多少の溜飲は下がった。ワタシは出番がそこそこにあった。攻略対象じゃないが。
絶望するワタシにやったわね!とお嬢様の立てた親指をそっと両手で戻しておいた
我が兄との別れを惜しむお嬢様のお見送りの元、ワタシは馬車に揺られていた。
この男爵領から王都までは三日ほどかかる。
お嬢様もまだお披露目を果たしていないが当日兄の権限でこっそり参加する事になっている。
殿下の許可は得てるらしい。
しかし数日離れるとなると不安なので念のためお嬢様の影にはワタシの使い魔を護衛として仕込ませておいた。
何かがあればワタシは影を通して応戦する事になるが。
基本的に男爵領は拍子抜けするほど平穏なので杞憂に終わるだろう。忙しいのはまだ先だ。
餌は与えなくていい旨を伝えてあるのだが、あの御心優しいお嬢様の事だ。
嫌いなニンジンなど影に落としている可能性もあるのでお嬢様のお皿に戻る様空間を繋げておくことにした。
何故ワタシだけ先の王城入りなのかと言うと先ほど兄が言っていた護衛の件で王太子殿下へのお目通りをするため。当日影側の警護として自分が携わる旨をご挨拶に伺わねばならないのだ。ああ行きたくない。
闇の化身と言われても否定しかねない長く伸ばした前髪と肩口まで切った黒髪、他の色を混ぜる事を許さない黒の瞳とこの全身黒尽くしの衣装のワタシ。
相対して王太子殿下は朝日に透かした様な輝かしいプラチナブロンドの髪と大きなエメラルドを閉じ込めた様なグリーンの瞳、そして整ったそのご容貌。騒がぬ令嬢は(お嬢様とワタシを除く)居ないと言われる。
比べるもおこがましいとは百も二百も承知の上だが、あんな美形が目の前にいたら私はろうそくの炎が如くフっと一息で消えてしまうんじゃないだろうか。
この輝かしい存在を前にワタシはどれほど精神を削られるのかと思うと前世の弱小オタクだった頃と何ら変わらぬようで胃がギリギリと絞られていた。
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