貴族転生〜異世界で移動式ホテル事業を始めます〜

神月ちとせ

文字の大きさ
2 / 4

1話 神様って人間っぽい!?

しおりを挟む
「ま……まも……まもるさん!」

 徐々に意識が戻りゆっくり目を開けるとそこは見たことのない空間に会ったことのない金髪の少年がそこにいた。
 誰だ?どこかで会ったことあるかな?こんな流暢に日本語をしゃべる外国人いたら忘れるとは思えないんだけど……

「会ったことはないよ護君。いや、ある意味では毎日会ってる訳だけども護君にその認識はないだろうね。いつも奇麗にしてくれてありがとう」

 いぶかしげな目を金髪の少年に向ける。
 何を言っているんだ?毎日会ってるのに認識はない……理解できないな。おちょくられてるのか?

「そんな顔をしないでおくれ。僕は地球で言うところの神様で護君が毎日奇麗にしてくれていた神像の神アレクだよ。そして護君の後ろで小さくなってるのが守護神ランドロスさ」

 護はアレクと名乗る金髪の少年に後ろと言われ、油が足りずギギギギと音が鳴っていると錯覚するほど警戒心高くゆっくり後ろを振り向く。そこには長身筋肉粒々で大きい髭が特徴的なおじさんが申し訳なさそうな表情で驚く程小さく丸まっている。
 どういう状況なんだ?神を名乗る二人は一旦置いておくとしても前には見知らぬ少年後ろは丸まったおじさんとカオスすぎないかな……

「信じられないのは分かるけど自分の今の姿を見てみるのが一番早いかもね。ここに魂の状態である護君を長居させると霊格が耐えられなくなって消滅しちゃうから申し訳ないけど早速本題にはいっていいかな?」 

 アレクは申し訳ないと思いつつも話をすすめようとする。

「魂?霊格?……」

 護はアレクが出した鏡の様なもので自分の姿を見る。
 ちょっと透けてる?しかも裸なのに羞恥心も湧いてこない……。神様も何か急いでるようだけど焦る気持ちも湧かない。それにさっきから心を読まれてる?

「護君……疑問に全部答えてあげたいけど本当に時間がないんだよ。護君の魂は異常にしっかりしてるから耐えられてるけど本来ならもう消えかけてるか消えてるかしてる」

「じゃあ神様?これだけ教えてほしいんですけど……俺は何でこんなところでこんな状態なのでしょうか?確か仕事が終わって帰宅後お酒を買い忘れて出かけてたところまでは覚えてるんですけど……」

 護はどうしても気になって聞いてみる。

「それは俺が話そう……」

 後ろで小さく丸まっていたランドロスが目の前まできて申し訳なさそうに話始める。

「今日はアレクと一緒に護を肴に酒を飲みながら地球を見てたら思わず手を滑らせて酒壺を落としてしまってな……そしたら見事に護の頭に落ちて死んでしまったんだ。すまない」

 つまり俺が死んだ時の記憶がないのは突然落ちてきた酒壺が死角から当たって即死だったって事か。

「それであってるよ。頭がトマトの様に……おっと話が脱線するところだった。急がないと本当に危ないから話を進めるんだけど、いつも良くしてくれてる護君に神である自分たちがミスで命を奪うなんてあってはいけない事だと心から思ってるし本当に申し訳ないと思ってる」

 トマト……。
 護は思わずトマトが潰れるところをイメージして顔を青くする。

「そこで何とか償えないかとランドロスと急いで話し合ったところ護君を転生させてはどうかという話になってね……転生することの利点としては魂を浄化しない為、記憶を保持できるという事が一つ。それともう一つこちらの方が大きいんだけど、転生時に神たちの介入が出来るという事があるんだ」

 記憶が持てるのは嬉しいな。でも神の介入って何だろう……困ったら助けてくれる的な事かな?

「転生して終わったら過度な介入できないから毎回助けられる訳ではないけど転生時に加護をあげたり、転生する世界ではスキルや魔法が発達したファンタジーな世界だから魂が耐えられる範囲にはなるけどスキルを選んだり作成して付与し転生することができる」

「なるほど……スキルを作成と言うのは既にあるものではなく自分専用として作れるという事ですか?それはどんなものでもいいんですか?」

 先ほどより透明度が増している自分の姿を見て護は頭をフル回転させて疑問を聞いていく。

「その考えであってるよ。出来るもの出来ないものはあるけどユニークスキルとして作成するからかなり無理を聞けると思う。なにか欲しいスキルでもあるのかい?ないならこんなことしたいや生前やり残したことをやれるスキルを作成するのもありだと思うよ」

 良くある小説の定番ならアイテムボックスや鑑定とかよく聞くけど、生前やりたかったこと……か……
 護は建築家としての人生を遡り、人生をかけて叶える予定だった夢を思い出す。

「かなり無茶を言っているのは分かっているんですけど……俺の夢は建築家として世界中のあらゆるものを見て自分でたくさんデザインして喜んでもらうのが夢だった。そんな都合のいいスキルなんてある訳ないですもんね」

 二人の神はあまりの予想外に頭に手を置きあまりの苦悩に整った顔を歪ませる。

「護君はかなり強い魂だから多少無茶してもスキルを獲得できると思うんだ……だけどそんな無から何かを生み出すようなチートスキルを作成しようとした場合、護君が耐えられるか保証できないけど大丈夫?それでもチャレンジしてみる?」

「耐えられなかった場合はどうなりますか?」

「もし獲得できなかったら魂だけ霊格が落ちるだけで何もてにはいらないことになるよ」

 もし言われてた通り想像するファンタジーな世界だった場合何も持たずにスタートは辛すぎるけど夢を諦めるのはな……
 護はスキルを獲得できなかった時のリスクと夢を天秤にかける

「一つ質問なんだけど頂けるスキルは一つでしょうか?」

「いや、違うよ。獲得できるスキルの数は魂の強さ……霊格に依存する。護君が望むようなスキルを仮に作成して付与しようとしたときに魂のキャパシティを超えてしまう可能性もあるってことだね」

「なるほど……」

 俺の魂は強いらしいけど正直、未知すぎて何も分からないな。

「仮にだけどもしスキルを造るなら護君がデザインした物を召喚したり仕舞ったりできるスキルってことであってるかな?」

「はい。それであってます」

 ……。
 あまりの規模の大きいスキルに神たちも頭を抱える。

「なぁ。アレクよ……デザインできる物を絞ったら負荷も軽くなるんじゃないか?護は建築家だったのだしざっくり施設とかに限定してしまえばと思うんだが……」

 目から鱗が落ちてるように見える程驚きを隠せない神アレクは無言でランドロスの背中を叩く。

「普段の脳筋はどうしたランドロス!さえてるじゃないか!」

「俺を闘神の奴みたいに言うんじゃねぇ!これでも護には悪い事をしたと本気で思ってるんだ……出来るだけ護の望む通りに生きられる土台を作ってやりたいんだ」

 護はランドロスのミスで殺されたとは言え自分の為に必死になってくれてるのをみて嬉しく思う。
 ランドロスもちょっとと言うかかなりいかつい見た目してるけど根っからの悪ではないんだな。アレクも必死になってくれてるしこんな二人の神に見守られてたなんてちょっと幸せだな。
 そうしていると二人の神が少し照れた様子をみせる。

「護君……君の考える事は分かるんだからそんな素直に褒められると照れてしまうよ」

 複雑な表情だが嬉しさを隠せず二人の神は護を見つめる。

「ではこうしよう……施設を召喚するスキルの作成と一つのスキルに一緒に盛り込むととんでもないキャパシティになりそうな倉庫や必要になりそうなスキルを別で付与することにしよう。それなら何とか収まる気がするよ……護君はそれでいいかな?」

 護は全てを把握しきれてない為、不安を隠せないが二人の神を信じて身を任せる事を決める。改めて自分の身体を見ると半分以上透けてしまっている状態になってしまっている。
 これ大丈夫かな……間に合うのかな?

「余裕がある訳じゃないけどまだ少し大丈夫だよ。スキルについても大丈夫みたいだし作成して付与するよ」

 言うやいなや護の身体が光り輝く。

「うん……かなりギリギリだったけど上手くいったよ。だけど属性魔法のスキルなども付けてあげようと思ったんだけど限界みたいなんだごめんね……」

 アレクは申し訳なさそうに召喚スキルは上手くいった事を告げる。
 属性魔法は実際興味があるけどこの神たちが俺の為に頑張ってくれたんだ文句なんかつけれるわけないよな。

 「でも安心して施設召喚はしっかり作り込んで妥協を一切してない出来栄えだと神の存在をかけてもいい……それに転生後に霊格が上昇すれば魔法を覚えられるはずだから安心してほしい。あくまでも今の現時点ではキャパシティを限界まで使ってるというだけだから」

 アレクからの嬉しい教えに護は目を輝かせる。
 転生後にもスキルを獲得可能なら身を守るスキルも覚える事ができそうだな。
 そんな護の様子をみてアレクは思わず嬉しさで頬が緩む。

「そこでだ……魂のキャパシティを使わずにスキルを付与できる私の加護も付けてあげよう。これはずっと私を大切にしてくれた事への礼だ……神界でみていていつも嬉しかったぞ」

 またしても護の身体が光り輝く。
 護は何が変わったんだろうと手をグーパーして変化の無さに首をかしげる。

「アレクよそれなら俺からも加護を付与せてくれないか?護の人生を壊してしまったのはどんな言い訳をしても俺だ。転生する異世界は護の生きた世界とは比べ物にならないほど危険も多くある。おれは守護神として少しでも護を守ってやりたい」

「ランドロス自分が何を言っているのか分かっているのか?お前も最大級の加護を渡そうとしてるだろ、世界に二人の神からそれだけの寵愛を受けた存在がぽっと生まれたら護の身の安全が逆に脅かされるぞ」

「転生先を貴族にすればそのくらいどうにかなるだろ!護が転生してしまったら俺はもうほとんどなにもしてやれねぇ!今しかないんだ……頼む、創造神アレクよこの通りだ」 

 ランドロスはアレクに勢いよく膝と頭を地面に叩きつける。
 そんなランドロスの土下座を見守っていた護は思わず涙してアレクと目を合わせる。

「もしよかったらランドロス様の加護もいただけないでしょうか。罪悪感もあるでしょうけどこれだけ自分を思ってくれる方の加護なら多少のデメリットがあってもランドロス様に守ってほしいです」

 アレクは二人の熱に最初あきれ顔を見せるが、すぐに心配そうに子供を見守る父親の様な目を二人に向ける。

「わかったよ。ランドロスの加護も許可する……でもその代わり護君はスキルの付与に大量の加護の影響で生まれてしばらくは衰弱するだろうし意識がはっきりするのも生まれて数年後になると思うけどその覚悟はある?生まれて数年のうちに死んでしまう可能性も0ではないんだよ?」

 死んでしまう可能性を示唆されて護は思はず息をのむ。
 それでもこの思いを無視するのは後悔するよな……

「大丈夫です。もしそれで意識が戻る前に何かあったとしても二人を恨むようなことは致しません」

 ランドロスはやっと立ち上がり護を見て手をかざす。
 
「守護神であるはずの俺が色々振り回してしまってごめんな。」

 そういいながら護に加護を付与する。
 何だこれ……体が何か分からないけどおかしいな。
 護は体が異常にだるく異変を感じる。

「それは魂のキャパシティとは関係ないとはいえ神の最大級の加護を魂に刻んだのだから異変の一つや二つ出てきてもおかしくない。本来加護なんてものは与えても少しだけなんだから」

 ランドロスは驚きの表情を見せたあと護を心配そうにオロオロする。そんなランドロスをみて護は思わず笑ってしまう。

「ランドロス様大丈夫ですよ!何とかなります」

「護よ申し訳ないがスキルの内容や加護については転生後に確認してくれ。最後まで説明してあげたいがそろそろ護の魂が限界にきてるから早くしないと転生できずに浄化されてしまうぞ」

 そういわれ慌てて自分の姿を確認する。そこにはもう足も見えず今にも消えそうな自分がいた。
 これ大丈夫かな?アレク様とランドロス様を信じよう。

「それではありがとうございました!これからも楽しく生きていくのでずっと見守っていてください」

 ランドロスのお酒が原因で死んだにも関わらずお酒を勧めるとランドロスとアレクはお互いが目を合わせ困ったものを見るような目を護に向ける。

 護は薄く消えていく自分をみて目を瞑り身を任せる。
 それにしても人間味の強く優しさにあふれた神様だったな……また会いたいな。会えるかな?

「護君また会おう。ずっと見守っているよ私の愛しい子よ」
「護また会える日を楽しみにしてるぞ!」

 見たことがないのに護の閉じた瞳には満面の笑みで見送るアレクとランドロスの姿が浮かんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...