貴族転生〜異世界で移動式ホテル事業を始めます〜

神月ちとせ

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2話 転生

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「マモル……早く元気になってね……」

 若い女性の声と共に頭を撫でられる。すると女性は場を立ち音をたてないようにゆっくり扉を開けて出ていく。
 今の声は誰だ?……それにこの体の怠さは何だ?かなり熱もありそうだな。
 マモルはゆっくり目を開けるとそこには豪華な部屋に豪華な家具がたくさんある。意識がはっきりしない頭で神様の事を思い出しながら少し体を起こし自分の身体を確認する。

「本当に転生してる……でも何歳なんだ……赤ちゃんじゃないぞ?」

 マモルは自分の身体を見て神様との会話を思い出す。
 スキルによる負荷によって数年後に目覚める事になるって言ってたけど想像より成長してないか?話してる時の感じだとせいぜい2歳から3歳くらいの感じだったし何より調整して負荷も軽くなってるはずだよな。
 疑問に思いもう一度自分の身体を確認する。誰がどう見ても2歳や3歳ではない。何故か体の節々が痛く動かしずらいが頑張って腕を持ち上げる。

「どう見ても幼子ではないよな。体は細いしかなり色白だけど自転車に乗れそうなくらい手足がしっかりしてるし5歳から7歳くらいか?ここまで生活してたはずの記憶もないしどうしたらいいんだろう」

 マモルは現状を理解できず頭を悩ませる。
 アレス様は神様だし時間の間隔がずれてたとかか……ありえるかな?もしくは想定外が起きたとか。まぁとりあえず現状の確認をしたいけど身体が痛すぎるぞ。

「いだ!いだだだだだだ……」

 ベッドから出ようと体を動かすと激痛が走る。
 何でこんなに痛いんだ。全身の骨が砕けてると感じてるほど痛い……
 痛みに悶えていると扉の外でドタドタと人が走る音が聞こえて徐々に近づいてくる。

 ガチャ!!

 勢いよく扉が開く。するとそこからは最初に聞いた声の女性に続きメイド服を着た女性たちが何人も焦った表情で部屋に入ってくる。

「マモルちゃん!意識が戻ったのね!」

 奇麗な寝巻を着た若い女性はベッドに座りマモルを泣きながら抱き寄せる。

「いだだだだ!」

「あ……ごめんね」

 泣きながら謝るも女性は抱きしめる腕を緩めてくれない。
 
「あの……どちらさんですか?」

「「「「「え?」」」」」

 部屋に入ってきた女性たちが困惑の表情を見せる。
 ここまでの記憶もないし家族なのか?だとしても何でみんな泣いてるんだ?

「マモルちゃん……記憶が……。私はマモルちゃんのお母さんよ。分からない?」

「奥様、マモル様も状況が分からず困ってる様子……今日のところは体のこともあることですしお医者様が朝に到着予定なのでそれまで一旦様子を見るのはどうでしょうか?」

「そ……そうね。マモルちゃんにも時間が必要よね」

 母親と名乗る若い女性はメイドといくつか言葉を交わし納得した後、涙をぬぐいマモルを見る。

「マモルちゃん。何もしてあげられなくてごめんね。朝にはお医者様がくるからそれまで痛いだろうけど我慢してね」

 マモルは目覚めてからの展開に頭がついていけずとりあえず頭を縦に頷いておく。すると母親である若い女性に続きメイドたち全員が一礼して部屋を出ていく。
 部屋に誰もいなくなってしばらくするとマモルは一旦状況整理を頭で行う。

「年齢は神様に聞かないと分からないしとりあえず後回しにするとしてもこの痛みは何なんだ?外傷は見える範囲には無いようだし医者がくるみたいだから何かの病気か?何よりも問題なのはこの歳までの記憶が全くないという事だよな。」

 マモルは色々な可能性を考えるも答えが出ない。

「最も嫌な可能性は今まで別の人の魂がこの体にいて俺が乱入することで消滅してしまってた場合なんだけど……あまり考えたくないな」

 嫌な想像をして気持ち悪くなるも思考を止めない。
 そういえば転生してからスキルなどを確認するようにと言っていたけどどうやって確認したらいいんだろう。確認できるアイテムの様なものでもあるのかな?
 リラックスして瞳を閉じ瞑想をしてみるが何も起きない。

「どうしたらいいんだ?スキル確認!スキルチェック!開けーーごま!」

 何をしてもうんともすんとも言わない。
 スキルもだけど自分の情報を全部しりたいんだけどなぁ……
 ふと前世で小学生の頃に読んでいたファンタジー小説で主人公がステータス確認をしていたのを思いだす。

「ステータスオープン!」
 
 すると目の前に突如半透明のウィンドウが現れる。

「うわ!」

 本当に出来ると思っておらず驚いてしまう。
 そこにはスキル一覧やステータスなど区分けされて表示されており初めから確認できるのは名前と年齢、職業、称号のみだ。

「なんだこりゃ……スキルだけじゃなくて身体パラメータもあるじゃん……スキルの横にある▼は何だ?」

 何が何なのか分からないからとりあえず気になるものに触れていく

「これが神様がくれたスキルか……」

 スキル横の▼に触れると詳細がでてくる。

==========

・施設召喚Lv.1【U】▼
(LV.に応じてスキル効果の解放、宿泊施設やレジャー施設などあらゆる建造物を購入・デザインでき召喚できる。)

==========

 説明どうりなら施設と名のつくものなら何でも購入できるって事かな?この辺りは実際に使ってみないと分からないな。
 マモルは一旦全て確認したいと思い全体表示にする。

==========

マモル・グラディール 5歳

職業:夢見る会長
称号:神の愛し子

・ステータス ▼

Lv.1
HP:20 MP:1
STR:3 DEX:2 
AGI:2 VIT:1 INT:100

・スキル ▼

①施設召喚Lv.1【U】▼
(LV.に応じてスキル効果の解放、宿泊施設やレジャー施設などあらゆる建造物を購入・デザインでき召喚できる。)
②保管庫【U】▼
(スキルで購入した建造物を含むあらゆる物を異空間に収納できる)
③健康Lv.1【L】▼
(あらゆる状態異常を無効化し老化を抑える)
④祈祷Lv.1【R】▼
(神に祈りを捧げ対話することができるかも……)
⑤神眼Lv.1 【L】▼
(鑑定眼、暗視、透視、魔眼など全ての眼力を統一した神の目)
⑥鉄壁Lv.1【L】▼
(あらゆる攻撃から一度身を守る
CT…24h 効果時間1s 移動速度-100%)

<加護>
創造神の加護Lv.10 ▼ 
・スキル習得条件の緩和
・獲得経験値、獲得熟練度を+300%
・スキル【健康】【祈祷】【神眼】の付与
守護神の加護Lv.10 ▼
・身体強化やVITを大幅強化
・スキル【鉄壁】の付与

==========

「なんじゃこりゃ!!」

 全てを確認したがこれにはマモルも驚きを隠せない。
 これはさすがに異常だよな……転生初心者でガイドブックすらなく放り出された感がある自分ですら異常性に気づくぞ。これ誰かに見られたらヤバくないか?ひとまず冷静に確認しよう。
 むせそうなほど深く深呼吸をしてもう一度ウィンドウを確認する。

「名前がマモル・グラディールで年齢は5歳なのはまぁ見た目どうりだしいい。なんで名前が前世と同じなのかは気になるがそれどころじゃないな……」

 もはや驚きすぎて気が付いたらずっと一人で驚き一人でリアクションをしている。

「INTってのはたしか精神力的なやつだったよな?……これは前世の記憶がある訳だしそこまで不思議でもないけどこっからだよな……」

 そこから並ぶスキルに加護へと何度も目を走らせるが衝撃は変わらない。

「保管庫は神様が言っていた施設召喚と分けて作成したスキルだろうけどこれがあれば持ち運べるって事だから助かるな。スキルにある横の【U】は何だろう?アレク様は専用に作るっていってたからユニークの【U】かな?……となると【R】はレアで【L】はレジェンドか」

 この時点でおかしい。レアとは一般的に良い部類のもののはずなのに他が凄すぎてレアがおまけにしか見えない。

「他のスキルは神様からの加護で得たスキルみたいだな。神眼があれば探索や目利きに困ることはなさそうだし病気を防げる健康、それに身を守る鉄壁……いたれりつくせりとはこのことだよな。祈祷で会話もできるみたいだし近いうちに改めてお礼をしよう」

 アレク様やランドロス様にもう一度会う事を心に決めながら次を見ていく。

「加護のLv.10が凄いのかどうかは判断できないけどこの世界を自由に生きたいからこそスキル所得条件の緩和や経験値を多くもらえるのは嬉しいな。ランドロス様からの強化も生存率を大きく上げるだろうしやっぱり神様は凄いな」

 二人の神様への感謝と共にいつでもお祈りができるよういつか神像を造る事を心に決める。 
 
 コンコンコン!
 
 突然扉がノックされる

「マモル様失礼します!お身体は大丈夫ですか?何か声が聞こえてきましたが……」

 本来は部屋の主からの入室許可がなければ入ることは決して許されない事が分かっているのか申し訳なさそうに扉を開け幼さの少し残るメイドが声をかけてくる。

「大丈夫です。痛みで寝れないので独り言を話していただけです」

「分かりました。何かありましたら扉の外に居ますのですぐに声をかけてください。それとマモル様……私たち使用人に敬語は不要ですのでお願いします」

「そ……そうか、ごめんね。気をつけるよ」

 今までのマモルとの違いにメイドは驚きの表情をする。
 さすがに砕けすぎたかな?目が飛び出そうなくらい目を開いて驚いてるけど……

「君の名前を聞いてもいいかな?」

「はい。私はケティと言います。マモル様が生まれてからずっとお傍で使えさせていただいております」

「ケティ……。分かったありがとう覚えておくね!」

 痛みで多少顔が引き攣っているものの笑顔で返す。

「はい今後ともよろしくお願いします。それでは私は部屋を出ますので何かあれば声をかけてください。それでは失礼します」
 
 ケティはそっと扉を閉める。
 びっくりしたな……それにしてもこれは俺にしか見えてないのか?
 マモルは目の前に広がるウィンドウに触れながらケティの事を思い出そうとするがやはり記憶はない。

「いたたたたた……とりあえずはこの体を何とかしないと記憶どころではないな」

 体を少し動かし枕に頭を乗せるとすぐに睡魔が襲ってくる。ステータスを閉じて今後の事を考えるが頭が働かない。
 体も痛いしもう寝るか……

「アレク様、ランドロス様ありがとうございます。そしてケティもおやすみなさい」

 マモルは神様たちと先ほど会ったケティの顔を思い浮かべながら寝る。
 
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