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第6章 風雲志太家編

08.攻略目標

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破竹の勢いで急成長を遂げた志太家は、天下を統一すべく次なる目標を探していた。
抑えておけば志太家にとって有利になれる地はどこか。
祐藤は日夜問わず考えに考え抜いていた。

そして数日後、祐藤は城内に家臣たちを集めて評定を開いた。
どうやら次の目標が決定したようである。

祐藤
「皆の者よ、これより志太家の今後の目標を発表いたす。これから儂が申す目標に向かって皆一丸となって励まれよ。よいな。」

祐藤の真剣な表情が家臣たちに向けられ、緊迫した空気が漂っていた。
そして、しばらく間を置いて祐藤が発表を行った。

祐藤
「次に我ら志太家が目指すは立天野城の郷田家である。この地を我らが貰い受ける。」

祐藤が目をつけたのは、志天城の南部に位置する立天野の地を治める郷田家であった。


※ 黄丸が立天野城

・立天野城(たてあまのじょう)
郷田直胤(ごうだ なおたね)の居城。
城の東側には立天野山をはじめとした険しい山岳地帯が広がっており、外部からの侵入に強い堅城であったと言われている。

・郷田直胤(ごうだ なおたね)
立天野城を居城とする大名。
三浦幕府成立後、時の将軍によってこの地を治める事を命じられた郷田氏を祖とする。
郷田氏は守護大名として代々の子孫が当主の座に就き、統治される事を許されてきた。
だが、直胤が当主となった時代は度々飢饉に悩まされており、様々な策を練るがいずれも失敗に終わる。
こうした失態が続いた事により、守護大名としての地位も最早意味を成さなくなりつつあった。
また、城下の兵や民たちの不満が次第に積もりつつある事に焦りを感じているようである。

祐藤の言葉を聞いて家臣たちはざわめき始め、やがて家臣の一人が口を開いた。
現在の志太家において政務を取りまとめている吉江貞勝であった。

貞勝
「殿、郷田家は現在、飢饉に見舞われて国力が疲弊しきっているかと思われます。かような国を我が志太家の領地にするのは余りにも時期が悪過ぎます。厄介事が増えるだけに思えるのですが…」

貞勝の言葉に家臣一同が頷いていた。
至極もっともな意見であるからだ。
現在の立天野城下は一揆はもちろんの事、家臣による謀叛もいつ起こってもおかしくは無いほど不安定な情勢だ。
そのような国を占領すれば、今度は志太家が対処に手を焼かれてしまうのは目に見えている。
今、そうまでして本当にその地が志太家によって必要なのであろうか。
家臣たちは皆、口にこそしないがそう思っていた。

祐藤
「確かに、今の立天野の地を我らが普通に手に入れたとて貞勝殿の言うように厄介事が増えるであろうな。じゃが、儂の考えた策をもってすれば何も問題はあらぬ。」

祐藤は自信げに家臣たちに向けてそう言った。9
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