架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
247 / 549
第7章 天下分け目の大決戦編

21.最期の褒美

しおりを挟む
志太家の評定から数日後、継晴は長包を三浦宮御所に呼びつけていた。

御所に到着した長包は、幕府の案内人によって御所内の大広間へと通された。
すると、辺りには大勢の幕臣たちが座っており、その先には継晴の姿があった。

長包
「大月長包、桐丘島より参りました。」

長包は口から心臓が出そうなほどの緊張を感じていたが、それを悟られぬように必死で取り繕っていた。

継晴
「うむ、御苦労であった。しかし長包よ、国米での戦いは真に残念であったな。」

継晴が重い声で長包にそう言った。
その言葉を聞いた長包は、何かがぷつりと切れたかのように取り乱し始めた。

長包
「継晴様!こたびの件は誠に申し訳ございませぬ!」

長包はその場でひれ伏し、何度も何度も額を床に擦り付けて継晴に対して謝罪の言葉を口にしていた。
その様子を見た継晴は、苦笑いを浮かべながら静かに口を開いた。

継晴
「顔を上げられよ長包よ。許すも何も、今日はお主に褒美を授けてやろうと思って呼んだのじゃ。」

何と、長包に対して褒美を与えるというのだ。
この予想外とも言える継晴の言葉に長包は一瞬にして落ち着きを取り戻すのであった。

長包
「ほ、褒美にございますか?かような失態を犯した拙者が褒美など頂いてよろしいのでございますか?」

長包は、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてそう言った。

継晴
「うむ、お主もきっと喜ぶであろうな。ささっ、もっと近う寄れ。」

継晴は、こちらに来るように長包を手招いていた。

長包
「真に…真に有難き幸せにございます。継晴様、心より感謝申し上げます。」

長包は目に涙を溜めながらそう言って継晴の元へと寄った。
すると次の瞬間、継晴は不気味な笑みを浮かべながら長包に言った。

継晴
「さぁさぁ長包よ、心して受けるが良い。褒美は、これじゃ!」

継晴は懐から脇差を取り出すやいなや素早く鞘を抜き、長包の胸元を目掛けて一突きした。
長包は一瞬、何が起こったか分からぬ様子ではあったが、自身の胸の激痛を感じ、継晴に刺された事を理解した。

長包
「ぐっ…つ、継晴様…これは一体…どういうことに…ございますか…」

長包は胸に刺さった脇差しを握り締めて膝をがくんと落とし、前屈みになりながら継晴に対して疑問を投げかける。

継晴
「将軍である余の元で死すること、それこそがお主への褒美ぞ。さぁ、遠慮はいらぬぞ。心して受けるが良い。」

そう言うと継晴は、長包の胸に刺さった脇差しを勢いよく抜いた後に素早く一太刀を浴びせた。

長包
「ぐっ…む、無念にござる…」

長包はそう一言残して息絶えた。

継晴
「余は主命を果たせぬような者は嫌いじゃ。」

継晴は、脇差しに付いた血を拭いながら長包の亡骸にそう吐き捨てていた。
そして続けて、幕臣たちの前で釘を刺すように言った。

継晴
「お前たちもこうなりたくなければ、せいぜい励まれよ。良いな?」

継晴による先程の凶行と言葉に幕臣たちは底知れぬ恐怖を感じていた。

長包の亡骸は、幕臣たちが引き取った後に葬られた。

当初は名も無い足軽兵たちの共同墓地に埋葬されていたが、後に継晴は三浦将軍家の菩提寺の隣に墓石を建て、そこに改めて埋葬される事となる。
これは、縁戚とは言えども三浦将軍家の身内であろう大月家に対して継晴なりの敬意を払った為、という見解が現代においてなされている。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...