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第7章 天下分け目の大決戦編

41.捜索

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志太家が政豊の捜索を行う為に忍びを放って数週間が経とうとしていた。
志天城では、任務を終えた忍びたちが続々と祐藤に報告に訪れていた。

祐藤
「ふむ、どれも政豊殿に繋がる情報が得られぬようじゃな…」

祐藤は、困った表情を浮かべていた。

どうやら政豊に関する有力な情報が入手できた忍びは、今の所では一人も居ないようである。
だが、政豊の存在は知っているといった情報が各地で流れている事から、盗賊としては相当幅広く活動していたのであろうか。

その様子に、貞勝が諦めたような表情で口を開いた。

貞勝
「殿、ここまで有力な情報が得られぬということはですぞ…その、既に亡くなっているということは考えられませぬか…」

貞勝は、政豊が既に亡くなっているのではないかと考えていた。

盗賊という身分は、武将と同じく常に死と隣り合わせである。
しかし、こと盗賊に関して言うとその死のリスクは武将よりも大きいという。
対抗勢力との抗争や領内を収める大名による討伐。
周りの勢力全てが敵だらけになりがちな盗賊の特性を分析した貞勝の結果である。

祐藤
「いや、少なくともそれは無いじゃろう。」

祐藤は、貞勝の意見に対してそう即答した。

祐藤
「政豊殿は、今は武将にあらず盗賊の身。政豊殿が死んだとあらば、敵対する大名どもがその情報を必ず流すであろう。」

貞勝
「なるほど、領内に盗賊の存在があらば国を収める大名にとっては目の上の単瘤。仮にその頭領が亡くなったと聞けば、国中が話題になりましょうな。」

祐藤
「うむ。その情報が今も無いということはつまり、政豊殿はどこかで生きておるということじゃ。」

政豊は柊家の滅亡後は盗賊の頭として復帰し、盗賊を生業として生計を立てていたとされている。
それ故、乱暴狼藉をはたらいた土地を収める大名家からは目の敵にされて皆が政豊の討伐に躍起になっているはずだ。

もし政豊を討伐したとなれば、大名家としての威信を保つ為にも大々的にその死を公表するであろう。
しかし、そういった情報は依然として入って来ない故に政豊は健在であると祐藤は判断していた。

祐藤
「まぁ、そう焦るでない。吉報を今は待つのじゃ。」

祐藤は、落ち着いた様子でそう言った。

すると、一人の忍びが祐藤の元にやってきた。
急いで報告に訪れたのであろうか、忍びは息を切らせていた。
忍びは、一息ついたのちに祐藤に言った。

忍び
「祐藤様、申し上げます!立天野山の奥深き森の中に政豊殿の住処を見つけましたぞ!」

政豊の現在の住処を突き止めたようである。

祐藤
「なに?立天野山じゃと?!意外と近き場所におったものじゃのう…」

祐藤は、これに対して非常に驚いた様子でそう言った。
そして忍びが続けて言った。

忍び
「その住処は、人が住むなど到底考えられぬような場所にございました。それ故に、政豊殿を探し出すまでに随分と骨を折らされましたが、結果として良き御報告ができまして何よりにございます。」

やっとの思いで政豊を探し出す事が出来た忍びは、達成感に満ち溢れた様子である。

貞勝
「いやはや、灯台下暗しと申しましょうか…真に意外にございますな…」

貞勝もまた、この忍びによる報告に驚いた様子であった。

祐藤
「お主よ、でかした!早速じゃが、そこまで儂らを案内してくれぬか。政豊殿と会って話をつけようぞ。」

忍び
「御意にございます。」

祐藤らは早々に天守を飛び出していった。
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