旦那様は魔王様!

狭山ひびき

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離宮の夜は大混乱!?

浮気はドロドロだからダメなのです! 2

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 沙良はシヴァの膝の上に抱っこされて、ゼノが紅茶とともに持ってきてくれたプリンを食べていた。

 どうして自分が今この体勢なのか、実のところ、沙良にも原因はよくわからない。

 朝、シヴァの抱き枕状態で目覚めて、しばらくは沙良も一人で部屋の中を動き回っていた。

 着替えて、朝食をとって、温泉に入った。

 用心のためだと言って一緒に温泉に入ろうとするシヴァをどうしても止めることができなかったので、押し問答の末、ゼノに頼んで水着を用意してもらうことで混浴の恥ずかしさを少しだけ回避することに成功し、昨日までよりは快適に温泉を楽しんだ。

 ここまではよかったのだ。

 午後になり、昼前まで惰眠をむさぼっていたジェイルが起きてきて、物欲しげに沙良の首筋をじーっと見つめてきて――、このあたりから、シヴァの様子がおかしくなった。

 最初は警戒していた沙良も、シヴァさえそばにいれば安全だと、余裕綽々でシヴァの隣で本を読んでいたのだが、不機嫌オーラを醸し出しはじめたシヴァにより、ひょいと抱きあげられて、気づけば膝の上に抱きかかえられる羽目になったのである。

 沙良が恥ずかしくなって膝から降りても、少ししたら膝の上に戻されるので、沙良はシヴァの膝の上に落ち着くことになったのだった。

「エルザを締め出しておけばどうにかなる問題ではないだろう。なにか考えたのか?」

 シヴァが問えば、ジェイルはにっこりと微笑んだ。

「エルザが僕の胸に飛び込んできてくれるのを待ちます」

「……」

 シヴァは無言でソファの上のクッションを掴むと、ジェイルの顔面目掛けて投げつけた。

「ぶ!」

「相変わらず脳内花畑な男だな! 馬鹿なことを言っていないで、自分のことなんだ、少しは考えろ!」

「そんなこと言われても……。エルザは短気だし、すぐに怒るけど、いつも必ず腕の中に戻ってきてくれるんです。今回はたまたま少し長いですけど……」

「じゃあ何か? いつもエルザは、怒ると木のくいを持ち出してお前を追いかけるのか?」

「―――さすがにそれは、今回がはじめてですけど」

 シヴァはため息をついた。

 当人がのほほんと構えているから、この一か月もの間、問題が解決しなかったのだろう。

 だが、せっかく離宮にのんびりしに来たというのに、面倒ごとに巻き込まれたシヴァは、のほほん、と構えているつもりはなかった。

 問題が解決しなければ、いつまでたってもゆっくりできない。

「どうしてエルザさんは、ジェイルさんの心臓がほしいんでしょうか」

 プリンを食べ終えた沙良が素朴そぼくな疑問を口にすると、ジェイルがへらっと笑み崩れる。

「僕の心が―――」

「そんなはずないだろう!」

 シヴァに一喝いっかつされて、ジェイルはシュンと肩を落とした。

「ちょっと思ったんですけど、急に心臓って変だなぁって思ったんです。心臓とられたら死んじゃうって昨日シヴァ様言ったけど、殺したいなら、わざわざ木の杭にこだわらなくてもいいと思いませんか?」

 のんびりした口調で沙良が言えば、シヴァが沙良を見下ろして目を丸くした。

「確かにな。木の杭を心臓に打ちつけるなんて、相当な力が必要だ。非効率だな」

「ですよね。みなさん魔法が使えるみたいだし、木の杭じゃなくても、ほかにもいくらでも方法ありそうなのに」

「そうだな。殺すならもっと効率的な方法がいくらでもあるな」

「あの、二人とも……、なんか僕を殺すこと前提で話してません?」

 のんびりした様子で繰り広げられる魔王夫妻の会話に、さすがに黙っていられなくなったジェイルは口を挟んだ。

 虫も殺せそうにない、ほわわんとしたお人形みたいな沙良の口から「殺す」という単語が出てきただけでも驚きだが、世間話をするように怖い会話をはじめるのはもっと驚きだ。

 沙良はハッとして、あわあわと胸の前で手を振った。

「あ、ジェイルさんを殺そうとか思ってませんよ!」

「……沙良、そこは誰も心配していない」

 頓珍漢とんちんかんなことを言う沙良の頭を撫でて、シヴァが苦笑する。

 その時、コンコンと部屋の扉が叩かれて、ゼノが顔を出した。

「お話し中すみません。ジェイル様へお客様がいらしていますが、いかがされますか?」

 ジェイルは、急な来客に目を丸くした。

「客? 誰も来る予定はなかったけど―――、誰?」

 ゼノは少しだけ困った顔をした。

「リリア様が、いらしています」
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