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旦那様は魔王様≪最終話≫
消えた記憶 11
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沙良が帰ったあと、シヴァはソファに座って、クッキーの入った包みをじっと見つめていた。
おそらくアスヴィルとミリアムに言いくるめられたのだろうが、あれだけ怯えていたのに、よくシヴァに近づこうとしたものだ。だが、クッキーの包みを渡そうとしたときの沙良の震えた指先や、真っ青な表情を思い出して、シヴァは言いようのない悲しみを覚える。
リボンの端をひっぱり、そっと包みを開けば、沙良お手製のチョコチップクッキーが出てきて思わず微苦笑を浮かべてしまう。
アスヴィルに何を言われたのか知らないが、記憶を失う前の沙良は、このチョコチップクッキーがシヴァの大好物だと信じていた。
もちろん、嫌いではない。ほんのりビターなチョコチップを使っているクッキーは、紅茶にも珈琲にもよく合うし、甘いものの中では好きな部類に入る味だ。
だが、あれば食べるくらいのもので、どうしても食べたいものではない。沙良が作るようになって、格段に口に入れる頻度が上がったが、それは沙良が作ったからであって、おそらく相手が沙良でなければ、毎日のように食べはしなかっただろう。
シヴァは星の形をしたクッキーを一つ口に入れながら、テーブルの上においてある古びた本に視線をやった。アスヴィルがセリウスから回収してきた古代魔法について書かれた本。沙良の記憶を奪った魔法は、古代魔法だと言っていたらしい。
「星降る夜に―――、か」
本の表紙には、古代語で「星降る夜に」と書かれている。
星に関する魔法をまとめてあるようだが、古代語にも古代魔法にも精通していないシヴァにとって、該当箇所を拾うだけでも精いっぱいだった。それでもようやくそれらしい箇所までたどりついたが、発動された魔法の解除方法については何も書かれていなかった。
「星を戻して、記憶を操作する魔法―――、か」
古代魔法は複雑かつ緻密で、自然現象に干渉して行うものも多く、多くの魔力もようする難解な魔法だ。セリウスの双子の弟クラウスは古代魔法を研究しているが、古代魔法を使う才能と言う点ではセリウスに軍配が上がる。生まれ持った素質とでもいうのだろうか、セリウスは誰もがてこずる古代魔法をあっさり読み解き、なおかつ発動させてしまう天才だった。
だが、根っからの研究者体質のクラウスと違い、飽き性で自己の利害を優先させるセリウスは、研究には興味を示さなかったらしい。漁夫の利よろしく、クラウスが集めたり解読した蔵書に目を通して、必要なものだけ拾っていくのが彼だった。
「クラウスも余計な本を城において行ったものだ……」
この本の出所は、クラウスが使っていた部屋の本棚に間違いないだろう。
(気は進まないが、仕方ない……)
シヴァはクッキーをもう一枚口に入れると、本を片手に立ち上がった。
おそらくアスヴィルとミリアムに言いくるめられたのだろうが、あれだけ怯えていたのに、よくシヴァに近づこうとしたものだ。だが、クッキーの包みを渡そうとしたときの沙良の震えた指先や、真っ青な表情を思い出して、シヴァは言いようのない悲しみを覚える。
リボンの端をひっぱり、そっと包みを開けば、沙良お手製のチョコチップクッキーが出てきて思わず微苦笑を浮かべてしまう。
アスヴィルに何を言われたのか知らないが、記憶を失う前の沙良は、このチョコチップクッキーがシヴァの大好物だと信じていた。
もちろん、嫌いではない。ほんのりビターなチョコチップを使っているクッキーは、紅茶にも珈琲にもよく合うし、甘いものの中では好きな部類に入る味だ。
だが、あれば食べるくらいのもので、どうしても食べたいものではない。沙良が作るようになって、格段に口に入れる頻度が上がったが、それは沙良が作ったからであって、おそらく相手が沙良でなければ、毎日のように食べはしなかっただろう。
シヴァは星の形をしたクッキーを一つ口に入れながら、テーブルの上においてある古びた本に視線をやった。アスヴィルがセリウスから回収してきた古代魔法について書かれた本。沙良の記憶を奪った魔法は、古代魔法だと言っていたらしい。
「星降る夜に―――、か」
本の表紙には、古代語で「星降る夜に」と書かれている。
星に関する魔法をまとめてあるようだが、古代語にも古代魔法にも精通していないシヴァにとって、該当箇所を拾うだけでも精いっぱいだった。それでもようやくそれらしい箇所までたどりついたが、発動された魔法の解除方法については何も書かれていなかった。
「星を戻して、記憶を操作する魔法―――、か」
古代魔法は複雑かつ緻密で、自然現象に干渉して行うものも多く、多くの魔力もようする難解な魔法だ。セリウスの双子の弟クラウスは古代魔法を研究しているが、古代魔法を使う才能と言う点ではセリウスに軍配が上がる。生まれ持った素質とでもいうのだろうか、セリウスは誰もがてこずる古代魔法をあっさり読み解き、なおかつ発動させてしまう天才だった。
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「クラウスも余計な本を城において行ったものだ……」
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