シンデレラは貧乏性~結婚に必要な条件は『金銭感覚』です!~

狭山ひびき

文字の大きさ
12 / 46
いざ舞踏会へ!

7

しおりを挟む
 王子を探して城の中庭を歩き回ったカレンだったが、結局それらしい人物を見つけることができなかった。

 というか――

(しまった! そういえばわたし、王子様の外見知らないんだった!)

 さんざん中庭を探し回って、ふとその事実に気づいたカレンである。

 自分の馬鹿さ加減に頭を抱えながら大広間に戻れば、舞踏会はもう終わるのだと姉が教えてくれた。なんでも、王子は一度顔を見せたが、しばらく誰かを探すように会場の中を歩き回ったのち、気分が悪いと言って早々に退出したらしい。

 結局、金貨五十枚は誰の手にもわたらなかった――もとい、誰一人王子とダンスを踊ることはなかったそうだ。

 カレンはがっくりとうなだれて姉とともにとぼとぼと帰途についた。

 一攫千金を夢見た自分が馬鹿だったのだ。やはりお金はこつこつと労働して稼がなくてはいけなかった。賞金で借金返済なんて、世の中そんなに甘くない。

「そんなに落ち込まなくても、今にいいことあるわよきっと」

「そうそう。美味しいものが食べられただけよかったじゃないの」

 確かに、城の料理はおいしかった。スモークされた鴨肉。宝石みたいに綺麗だったジュレ。パンはバターの風味がしっかりしていて、パチパチと細かな泡がはじけるシャンパンの中には大きなイチゴも入っていた。

 王子様に会えなかったのは残念だが、豪華な料理がお腹いっぱい食べられただけでもよしとするべきなのかもしれない。

(そう言えばあの人、大丈夫だったかしら?)

 王子を探して中庭をうろうろしていたとき、ベンチで具合が悪そうに横になっていた青年に出会った。

 黒髪に、伏せられた長いまつ毛の下の瞳は綺麗なエメラルド色。カレンが今まで見たことのあるどの男性よりも端正な顔立ち。

(綺麗な人だったわね)

 具合が悪かったらしく、顔が青ざめていたが、それでも息を呑むほどの美丈夫だった。

 まるで、おとぎ話に出てくる王子様が、そのまま現実にあわわれたような――

 中庭で何をしていたのかはわからないが、きっと城の関係者なのだろう。もう二度と会うことはないだろうけど、別れる間際、ひどく怯えたような表情をしていたのが気になった。

(名前くらい聞けばよかったわ。お城で働いてるってことは高給取りでしょうし……。あの顔なら、面食いなお姉さま方も気に入ると思うから、いっそどっちかと結婚してくれれば家経も潤ったのに……)

 惜しいことをしたかもしれない。

 王子とダンスを踊って金貨を手に入れることしか考えていなかったせいで、せっかくの脱・貧乏チャンスを棒に振るとは。

 つくづくついてない。

 カレンはそっと自分が来ているドレスに視線を落とした。このドレスのお金も、近いうちに払いに行かないといけないのだが、まとまったお金がない。

 カレンはちょっと考えて、顔をあげると、にっこりと二人の姉に微笑みかけた。

「お姉様たち、たくさんあるアクセサリーの中で、どれか売り払ってもいいものあるかしら?」

 無邪気な笑みを浮かべながら、「ちょうだい」と両手を広げる妹に、姉二人は引きつり笑いを浮かべた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...