46 / 46
隣国の王子は好敵手
8
しおりを挟む
リチャードの部屋を出て、裏庭に降りたカレンが井戸から水をくみ上げていると、うしろから誰かが縄に手をかけた。
「そんな細い腕で、重たいだろう?」
びっくりして振り返れば、アレクが立っている。
「リチャード王子は風邪だって?」
カレンのかわりに水をくみ上げてくれたアレクは、そのままカレンが用意していた木桶の中に水を注いでくれた。
カレンがお礼を言うと、「どういたしまして」とアレクは微笑む。
「こんなところで何をなさってるんですか?」
「リチャード王子が風邪を引いたから、今日の予定がほとんどなくなってね、暇だから散歩していたんだよ。でも、こうして君に会えたから、暇もいいものだね。……先日のドレスもよかったけど、その紺色のお仕着せ姿も、可愛いよ」
パチンとウインクされて、カレンは微苦笑を浮かべる。
運命だとか攫うとか言われて最初のころは警戒していたが、こうしてみると、アレクはこういうふざけたことをさらりと言う性格なのかもしれない。
「もしかしてリチャード王子の看病をしているの?」
「はい。熱が上がったので、冷やそうと思って水を」
「そうなんだ。君に看病してもらえるなんてうらやましいな」
「またそんな冗談を」
カレンはアレクの言うことは「冗談」として受け流すことにして、よいしょと木桶を持ち上げる。すると、横からアレクが木桶を取り上げた。
「部屋の前まで運んであげるよ。重いからね」
カレンは謝辞を述べて、素直にアレクに運んでもらうことにした。確かに重いからである。
「ところで、気になっていたんだけど、君はいつからリチャード王子の侍女として働いているの?」
「先月からですけど……」
「先月か。じゃあ、まだひと月と少しの浅い仲なんだね」
そうかそうかとアレクは何やら上機嫌だ。
カレンは首をひねって、
「わたしがここでいつから働いているか、アレクさんに何か関係があるんですか?」
「もちろんあるよ」
アレクはふと足を止めて、微笑んだままカレンを見下ろした。
「言っただろう? 君のことを攫いたい。君は俺の運命なんだ、子猫ちゃん」
「その子猫ちゃんって言うのやめてください。それに、攫うなんて冗談笑えません」
カレンがむっと眉を寄せると、アレクは突然笑みを引っ込めると、真剣な表情になった。
「冗談じゃないよ。俺は最初から本気だ。一目見たときから君のことが気に入った。国に連れて帰りたい。子猫ちゃんが嫌なら天使と呼ぶよ。君は俺の天使。――このまま俺が帰るときに、イオライトへ行かないか。結婚してくれ」
「そんな細い腕で、重たいだろう?」
びっくりして振り返れば、アレクが立っている。
「リチャード王子は風邪だって?」
カレンのかわりに水をくみ上げてくれたアレクは、そのままカレンが用意していた木桶の中に水を注いでくれた。
カレンがお礼を言うと、「どういたしまして」とアレクは微笑む。
「こんなところで何をなさってるんですか?」
「リチャード王子が風邪を引いたから、今日の予定がほとんどなくなってね、暇だから散歩していたんだよ。でも、こうして君に会えたから、暇もいいものだね。……先日のドレスもよかったけど、その紺色のお仕着せ姿も、可愛いよ」
パチンとウインクされて、カレンは微苦笑を浮かべる。
運命だとか攫うとか言われて最初のころは警戒していたが、こうしてみると、アレクはこういうふざけたことをさらりと言う性格なのかもしれない。
「もしかしてリチャード王子の看病をしているの?」
「はい。熱が上がったので、冷やそうと思って水を」
「そうなんだ。君に看病してもらえるなんてうらやましいな」
「またそんな冗談を」
カレンはアレクの言うことは「冗談」として受け流すことにして、よいしょと木桶を持ち上げる。すると、横からアレクが木桶を取り上げた。
「部屋の前まで運んであげるよ。重いからね」
カレンは謝辞を述べて、素直にアレクに運んでもらうことにした。確かに重いからである。
「ところで、気になっていたんだけど、君はいつからリチャード王子の侍女として働いているの?」
「先月からですけど……」
「先月か。じゃあ、まだひと月と少しの浅い仲なんだね」
そうかそうかとアレクは何やら上機嫌だ。
カレンは首をひねって、
「わたしがここでいつから働いているか、アレクさんに何か関係があるんですか?」
「もちろんあるよ」
アレクはふと足を止めて、微笑んだままカレンを見下ろした。
「言っただろう? 君のことを攫いたい。君は俺の運命なんだ、子猫ちゃん」
「その子猫ちゃんって言うのやめてください。それに、攫うなんて冗談笑えません」
カレンがむっと眉を寄せると、アレクは突然笑みを引っ込めると、真剣な表情になった。
「冗談じゃないよ。俺は最初から本気だ。一目見たときから君のことが気に入った。国に連れて帰りたい。子猫ちゃんが嫌なら天使と呼ぶよ。君は俺の天使。――このまま俺が帰るときに、イオライトへ行かないか。結婚してくれ」
6
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
狭山先生の物語は主人公がどれも魅力的でとても面白いです。
更新を今か今かと心待ちにしています。
頑張ってください!
ありがとうございます!
更新できておらず、すみません😣💦
狭山先生のお話全部大好きです!!続きがとても気になります。更新、心待ちにしております。
ありがとうございます😊
がんばって!殿下!(≧▽≦)
とんちんかんですが頑張ってます笑