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兵革の五月[May of Struggle]
Mission11 傷心
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湖城先輩は頭部を角材で殴られ、崩れる様にしてその場に倒れた──
「っ……ぁ……ッ!」
──否、正確にはその場に倒れたのは湖城先輩ではなかった。
男が彼女を殴打しようとした時、咄嗟に彼女を庇った人物がいた。
「…………たぁくん…………?」
失意に打ちひしがれていた彼女はふと我に返り、自身を庇って倒れた人物の愛称を口にする。
「おやおやァ?仲が悪いンじゃなかったのか?庇うなんて……泣かせてくれるねェ──」
「七菜っ!しっかりしろッ!」
環さんを殴打した男の頬へと湖城先生は鋭いパンチを放つ。
ゴリッと頬骨が折れる様な嫌な音が聞こえると男の身体はその場で崩れる。
「……ゆ、柚ちゃん!」
「環と共にここから出るんだ!東条君、環を運んでくれっ!」
「判りましたっ!」「わ、判った……!」
床で頭を抱え、倒れている環さんを俺は背負う様にして運ぶ。
湖城先輩は環さんを背負っている俺の隣を小股で走る。
「たぁくん!なんで……」
「……なんで、か。君が傷付けられると思ったら咄嗟に、ね……」
まだ意識のあった環さんはそう言葉を紡ぎ出す。
頭頂部からは赤い鮮血が流れ出していて、それが右目に入って痛そうだった。
「オラッ!このまま逃がすとでも思ったか!?」
木刀を持った男が俺へと得物を振りかぶる。
1人ならば避けられただろうが今の俺は環さんを背負っていて、動きを制限されている。
まずい、このままでは──
ダン、ダン
──そんな時、2つの乾いた音が響き渡り、男がその場で倒れる。
銃撃だ。俺はぱっと銃弾の飛んできた方向を向いた。
「森さん!渚!」
2人とも拳銃と狙撃銃を構えており、その銃口からは白煙が上がっている。彼女たちが撃ったのだ。
「助かった!ありがとう!」
「それよりも早く彼を連れて行きなさい!」
「OKッ!」
2人に感謝しつつ俺たちは彼を連れて外へと向かった。
彼は意識が朦朧としているのか「う……っ」と呻き声を上げている。
このままでは彼は危ない。そう思い、俺は走る速度を上げた。
──それから8時間後、午後6時──
出血はしているものの思ったよりも軽傷だった環さんは病院で手当てを受け、俺たちと共にホテルの会議室へと戻る。
会議室の出入り口には『KEEP OUT』と書かれたバリケードテープが貼られており、その前には2人の男性が立っている。警察官だ。
「なんだ君たちは──失礼しました!」
彼らは俺たちが近付くのを見て、扉の前に立ち塞がろうとしたが俺の制服を見てすぐに扉から離れ、敬礼をする。
それもそうだろう。対テロ戦闘員は逮捕権も捜査権も有しており、現場を見ることもできるのだから。制服を着ていたお陰で楽に入れた。
中に入ると早速湖城先生がやって来た。
「君たちか……環は大丈夫か?」
「ああ、思ってたよりも軽かったらしくてね……まだ痛いけど」
そう答えると包帯の巻かれた頭に手をやる。まだ痛むらしく彼は苦虫を噛み潰したような顔をする。
俺は蹂躙され尽くした和平の場を軽く見回す。
「そうか……よかった」
「……それで湖城先生、襲ってきた連中は?」
怪我の程度が軽いと聞いて安堵の表情を浮かべている彼女に問うた。
すると彼女の表情は重く、冷たいものへと戻る。
「ああ、襲撃してきた連中の大半は捕らえた。しかし数名を逃してしまった……」
彼女は悔しそうに視線をすっかり暗くなった窓外へと向ける。
男たちによって割られた窓からは生ぬるい風が吹き込んできて、肌を撫でる。
「これは酷いな……」
「ああ酷えな」
蹂躙された室内に2人の人物がそんなことを言いながら入ってくる。神崎さんと直巳だ。
「……姉さんと、北見さんは?」
「2人はホテルの電気室にいる。ホテル全体の照明が落ちた原因は電気室にあると睨んでいるらしくてな」
「……そうか」
照明が落ちたのは確実に連中の仕業だろう。自然に襲撃と停電のタイミングが被るなんてまずないだろうから。
なにかしらの方法で停電させ、混乱している隙に両家を襲撃……そう考えるのが妥当だろう。
「……実は湖城家が雇った連中なんじゃないの?」
誰かがそうぽつりと呟く様に言った。
室内は騒々しいが俺たちには聞こえた。
「……なんだって?」
湖城先生が低い声で呟いた人物の元へと問い、距離を詰める。
呟いたのは和服に身を包んだ若々しい女性だった。流城家の人だろう。
170ある長身の湖城先生にずんずんと接近、見下ろす様に問われて「ひっ」と小さな悲鳴を上げるがすぐに彼女を見上げる様に睨み、言葉を紡ぐ。
「だって、湖城家に負傷者はいないじゃない!」
「それは……そうだが……」
毅然とした態度だった湖城先生だが女性の言葉に思わず言葉を濁す。
反論できない。だって事実なのだから。
「ほら!反論できない!和平をしようと見せかけて私たちを殺そうと画策してたんじゃないの!?」
「違う!私たちはホントに仲直りしようと……」
俺の隣にいた湖城先輩がそう叫ぶ様に言った。
けれど女性は信じていない様で、彼女を冷たく見下ろしている。
「────ッ!」
「湖城先輩っ!」
その視線に耐え切れず彼女は走って会議室から出て行ってしまう。
バンッと扉を叩きつける様に閉める音が響く。
「……いくらなんでも言い過ぎだ」
「判ってるわよ、あなたたちがそんなことを画策してはいないって……。でも、これだけ理不尽にやられて動揺してたのよ!」
彼女は動揺して、その感情の矛先が湖城先輩に向いてしまったのだろう。
無理もない。こんなことがあったのだ、動揺しない方がおかしい。
そんな時、扉がガチャリと開く音がする。
「おーい、一旦休憩にしましょう」
「ああ。休憩も大事だからね」
「姉さん……と北見さん」
入ってきたのは2人だった。
その手にはビニール袋が握られていて、ペットボトルが数本入っている。
姉さんはそれを俺たちと警察の人々に差し出す。
「……ハーブティ?」
ペットボトルのラベルには『オーガニックハーブティー』と書かれている。
数ある飲み物の中で何故ハーブティーを選んだのか、そんなことを考えていると姉さんが心中を察したのか答える。
「ハーブティーにはリラックスさせてくれる効果があるのよ。イライラだったり、落ち込んでたり、不安だったり……そんな感情を鎮めてくれるの」
「ああだからか……」
これは姉さんなりの気遣いなのだろう。
一口飲んだら少し気分が落ち着いた感じがする。
「そういやさっき廊下で湖城さんとすれ違ったんだけど……なにかあったの?」
そんな俺たちに姉さんが思い出した様に言った。
「悲しみや怒りや戸惑い……色々な感情が彼女の心の中で渦巻いている様に見えた」
やはりそうだろう。抱え切れなくなった感情を俺たちの前で見えまいとして……。
「……今は1人にしておいた方がいいかもしれないね」
森さんは彼女の心中を察し、そう言った。
それもそうだろう。俺も少し考える時間が欲しい時は1人になりたい。
「……姉さん、彼女はどこに行った?」
「ホテルの階段を駆け上っていったわ。何階にいるかは判らないけど……」
「……判った」
俺はハーブティーを飲み干すと姉さんの持つビニール袋からもう1本ペットボトルを取り出し、部屋から出る。
「大和?どこに行くの?」
「ちょっと、ね」
そう短く答えると俺は階段を上る。
……森さんは1人にしておいた方がいいとは言っていたが俺としてはその逆に感じた。
今の彼女には抱え切れない感情の捌け口がない。俺は思わず最悪の未来を想像してしまい、目的地へと向かう足を早める。
「……湖城先輩」
ガチャリと俺はホテルの屋上へ出る扉を開ける。
そこに彼女はいた。
「……東条くん」
「っ……ぁ……ッ!」
──否、正確にはその場に倒れたのは湖城先輩ではなかった。
男が彼女を殴打しようとした時、咄嗟に彼女を庇った人物がいた。
「…………たぁくん…………?」
失意に打ちひしがれていた彼女はふと我に返り、自身を庇って倒れた人物の愛称を口にする。
「おやおやァ?仲が悪いンじゃなかったのか?庇うなんて……泣かせてくれるねェ──」
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床で頭を抱え、倒れている環さんを俺は背負う様にして運ぶ。
湖城先輩は環さんを背負っている俺の隣を小股で走る。
「たぁくん!なんで……」
「……なんで、か。君が傷付けられると思ったら咄嗟に、ね……」
まだ意識のあった環さんはそう言葉を紡ぎ出す。
頭頂部からは赤い鮮血が流れ出していて、それが右目に入って痛そうだった。
「オラッ!このまま逃がすとでも思ったか!?」
木刀を持った男が俺へと得物を振りかぶる。
1人ならば避けられただろうが今の俺は環さんを背負っていて、動きを制限されている。
まずい、このままでは──
ダン、ダン
──そんな時、2つの乾いた音が響き渡り、男がその場で倒れる。
銃撃だ。俺はぱっと銃弾の飛んできた方向を向いた。
「森さん!渚!」
2人とも拳銃と狙撃銃を構えており、その銃口からは白煙が上がっている。彼女たちが撃ったのだ。
「助かった!ありがとう!」
「それよりも早く彼を連れて行きなさい!」
「OKッ!」
2人に感謝しつつ俺たちは彼を連れて外へと向かった。
彼は意識が朦朧としているのか「う……っ」と呻き声を上げている。
このままでは彼は危ない。そう思い、俺は走る速度を上げた。
──それから8時間後、午後6時──
出血はしているものの思ったよりも軽傷だった環さんは病院で手当てを受け、俺たちと共にホテルの会議室へと戻る。
会議室の出入り口には『KEEP OUT』と書かれたバリケードテープが貼られており、その前には2人の男性が立っている。警察官だ。
「なんだ君たちは──失礼しました!」
彼らは俺たちが近付くのを見て、扉の前に立ち塞がろうとしたが俺の制服を見てすぐに扉から離れ、敬礼をする。
それもそうだろう。対テロ戦闘員は逮捕権も捜査権も有しており、現場を見ることもできるのだから。制服を着ていたお陰で楽に入れた。
中に入ると早速湖城先生がやって来た。
「君たちか……環は大丈夫か?」
「ああ、思ってたよりも軽かったらしくてね……まだ痛いけど」
そう答えると包帯の巻かれた頭に手をやる。まだ痛むらしく彼は苦虫を噛み潰したような顔をする。
俺は蹂躙され尽くした和平の場を軽く見回す。
「そうか……よかった」
「……それで湖城先生、襲ってきた連中は?」
怪我の程度が軽いと聞いて安堵の表情を浮かべている彼女に問うた。
すると彼女の表情は重く、冷たいものへと戻る。
「ああ、襲撃してきた連中の大半は捕らえた。しかし数名を逃してしまった……」
彼女は悔しそうに視線をすっかり暗くなった窓外へと向ける。
男たちによって割られた窓からは生ぬるい風が吹き込んできて、肌を撫でる。
「これは酷いな……」
「ああ酷えな」
蹂躙された室内に2人の人物がそんなことを言いながら入ってくる。神崎さんと直巳だ。
「……姉さんと、北見さんは?」
「2人はホテルの電気室にいる。ホテル全体の照明が落ちた原因は電気室にあると睨んでいるらしくてな」
「……そうか」
照明が落ちたのは確実に連中の仕業だろう。自然に襲撃と停電のタイミングが被るなんてまずないだろうから。
なにかしらの方法で停電させ、混乱している隙に両家を襲撃……そう考えるのが妥当だろう。
「……実は湖城家が雇った連中なんじゃないの?」
誰かがそうぽつりと呟く様に言った。
室内は騒々しいが俺たちには聞こえた。
「……なんだって?」
湖城先生が低い声で呟いた人物の元へと問い、距離を詰める。
呟いたのは和服に身を包んだ若々しい女性だった。流城家の人だろう。
170ある長身の湖城先生にずんずんと接近、見下ろす様に問われて「ひっ」と小さな悲鳴を上げるがすぐに彼女を見上げる様に睨み、言葉を紡ぐ。
「だって、湖城家に負傷者はいないじゃない!」
「それは……そうだが……」
毅然とした態度だった湖城先生だが女性の言葉に思わず言葉を濁す。
反論できない。だって事実なのだから。
「ほら!反論できない!和平をしようと見せかけて私たちを殺そうと画策してたんじゃないの!?」
「違う!私たちはホントに仲直りしようと……」
俺の隣にいた湖城先輩がそう叫ぶ様に言った。
けれど女性は信じていない様で、彼女を冷たく見下ろしている。
「────ッ!」
「湖城先輩っ!」
その視線に耐え切れず彼女は走って会議室から出て行ってしまう。
バンッと扉を叩きつける様に閉める音が響く。
「……いくらなんでも言い過ぎだ」
「判ってるわよ、あなたたちがそんなことを画策してはいないって……。でも、これだけ理不尽にやられて動揺してたのよ!」
彼女は動揺して、その感情の矛先が湖城先輩に向いてしまったのだろう。
無理もない。こんなことがあったのだ、動揺しない方がおかしい。
そんな時、扉がガチャリと開く音がする。
「おーい、一旦休憩にしましょう」
「ああ。休憩も大事だからね」
「姉さん……と北見さん」
入ってきたのは2人だった。
その手にはビニール袋が握られていて、ペットボトルが数本入っている。
姉さんはそれを俺たちと警察の人々に差し出す。
「……ハーブティ?」
ペットボトルのラベルには『オーガニックハーブティー』と書かれている。
数ある飲み物の中で何故ハーブティーを選んだのか、そんなことを考えていると姉さんが心中を察したのか答える。
「ハーブティーにはリラックスさせてくれる効果があるのよ。イライラだったり、落ち込んでたり、不安だったり……そんな感情を鎮めてくれるの」
「ああだからか……」
これは姉さんなりの気遣いなのだろう。
一口飲んだら少し気分が落ち着いた感じがする。
「そういやさっき廊下で湖城さんとすれ違ったんだけど……なにかあったの?」
そんな俺たちに姉さんが思い出した様に言った。
「悲しみや怒りや戸惑い……色々な感情が彼女の心の中で渦巻いている様に見えた」
やはりそうだろう。抱え切れなくなった感情を俺たちの前で見えまいとして……。
「……今は1人にしておいた方がいいかもしれないね」
森さんは彼女の心中を察し、そう言った。
それもそうだろう。俺も少し考える時間が欲しい時は1人になりたい。
「……姉さん、彼女はどこに行った?」
「ホテルの階段を駆け上っていったわ。何階にいるかは判らないけど……」
「……判った」
俺はハーブティーを飲み干すと姉さんの持つビニール袋からもう1本ペットボトルを取り出し、部屋から出る。
「大和?どこに行くの?」
「ちょっと、ね」
そう短く答えると俺は階段を上る。
……森さんは1人にしておいた方がいいとは言っていたが俺としてはその逆に感じた。
今の彼女には抱え切れない感情の捌け口がない。俺は思わず最悪の未来を想像してしまい、目的地へと向かう足を早める。
「……湖城先輩」
ガチャリと俺はホテルの屋上へ出る扉を開ける。
そこに彼女はいた。
「……東条くん」
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