ヴァイオレント・ノクターン

乃寅

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兵革の五月[May of Struggle]

Mission31 編入生VS編入生

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「ここが……アリーナ……」

俺たちは学園にあるアリーナと呼ばれる施設内に入る。
アリーナは円の形をしていて、中央にあるグラウンドを取り囲む様にして観客席が規則正しく並んでいる。
まるで円形闘技場コロシアムだ。だから闘技場アリーナか。

「来るのは初めてだね。あるのは知ってたけど」

観客席まで来ると森さんは適当な席を見つけて座った。最前列の席だ。
俺たちも空いている席を見つけて座る。

「騒がしいと思って来てみたが……なにがあった?」
「なんかあったの?みんなアリーナに集まってるけど……」

神崎さんとレイは俺たちの近くへとなにがなんだか判らないといった様子で歩いてくる。
俺はそんな二人に軽く説明をする。

「なるほどな……それでこの騒ぎか……」
「っていうか、全校生徒が集まったんじゃない?道理で騒がしいわけだよ……」

アリーナの観客席はほぼ全て埋まってしまっている。
この施設は全校生徒をある程度の余裕を残して収容できる計算で造られている。
つまり全校生徒のほとんどが集まっているということになる。

〈──さて、と。聞こえるかしら〉

小さなハウリングの後に流城先生の声がアリーナ全体に響き渡る。
遠くを見てみると彼女が実況席からマイクで話している様だった。

「はい、問題ありません」
「ええ。大丈夫ですわ」

グラウンドにいる両者は互いに睨み合いながらそう答えた。
紅宮さんは刀を使うのに対し、ベアは三尺ちょっとの長さを持つ斧だ。

「へぇ……斧か、使う人なんて初めて見るな」
「刀と斧……どんな戦いになるんだろう?」

この学園に来て斧を使っている人間はいなかった。
故にどんな戦い方をするのか、俺たちは戦いの結末が気になり初めていた。

〈それじゃあルールを説明するわ。ルールは先に相手の身体に武器による攻撃を与えた方が勝ち、手や足での攻撃を相手に与えてもそれは無効になるわ〉

武器による攻撃で相手を倒すことができる、ルールはサバイバルゲームに似ている。

〈そして最後にもう一度言うけれど勝った方は負けた方に言うことを聞かせることができる、負けた方は勝った方の言うことを聞く。いいわね?〉
「はい」「ええ」

二人は頷き、武器を構える。
それを見て、流城先生は一度深く息を吸った。

〈それでは──開始ッ!〉

彼女の合図と共に紅宮さんが一気に距離を詰める。
その手には刀が握られており、ベアの間合いに入ると同時にそれを振りかぶった。

「はあっ!」
「くっ……」

ベアは彼女の刃を斧の柄で受け止めた。ガキン、という金属音がアリーナに響き渡る。
そのまま両者は互いの武器に力を込めたまま睥睨する。

「ベアトリクス・スプリンガー……ワタシは国害となる存在を許さない」
「あら、わたくしはそんな存在じゃありませんことよ」
「ふん、密入国をしておいてよく言う」

蔑む様な口調でそう言うと彼女はベアの横腹へと蹴りを入れた。
制服が衝撃を吸収してくれたお陰でダメージはなさそうだが彼女はバランスを崩した。

「なっ……!?手と足での攻撃は無効じゃあ……!?」
「……無効だが体術は禁止だとは一言も言っていなかった」

予想しなかった一撃に唖然としていた俺たちに神崎さんはそう冷静に言った。

「極端な話、相手が動かなくなるまで殴ったり蹴ったりしてから武器を当てても問題はないだろうな」

彼女はさらりと恐ろしいことを口にする。
俺たちは彼女の説明を聞きながら注意深く二人の試合を見る。

「……っと、危なかったですわ……!」

バランスを崩し、後ろから倒れたベアは自身を追撃するために振るわれた刃を斧で受け止めた。
それを見て、紅宮さんは「小賢しい……」と吐き捨てる様に呟いた。

「さっきからベアちゃん、攻撃を受け止めてばかりいるけど……」
「初手防御がまずかったな。一度守勢に入ると攻勢に転じるのは至難の業だ」

神崎さんによる説明を交えつつ、観戦を続ける。
ベアは尻をグラウンドについた状態で刀を受け止めていて、受け止める姿勢としては最悪であると全員が思っていた。
けれど──

「ッ!」

──彼女はありったけの力を込めて刀を押し切った。
姿勢的にも対して力は入れられないはずなのに彼女は紅宮さんを押し切ったのだ。
そしてバランスを崩した紅宮さんへと勢いよく斧を振るう。

「貴様……!」

彼女は咄嗟に自身の刀で受け止めた。
しかしその表情には余裕はなく、なんとか受け止めているといった感じだった。

「斧の最大の特徴はなんといってもその破壊力だ。白兵戦における武器の中でトップクラスだろうな」
「うん……重そうな一撃だしね」
「しかしその破壊力を出している重量が弱点だ。あれを持ったまま相手の間合いへと駆けていくのは難しいだろう」

だから初手に防御をするしかなかったのか。
威力はあるものの動きが制限される……使うのにコツの要りそうな武器だ。

「くっ……!」

紅宮さんは一度後ろに下がると刀を構え直す。
賢明な判断だろう。あそこで斧による一撃を受け止め続けていれば膂力を消費することになる。

「……すまない、見くびっていた」
「ふふん、これでも結構戦えるんですのよ」
「ああ。その通りだ──」

彼女は構え直した刀をどういうわけか鞘に収めた。
一体どういうつもりだと思っていると彼女はもう一度刀を抜いた。それも高速で。

「な……ッ!?」

するとどういうことだろう。紅の炎に包まれた刃が出てきた。

「燃える刀……!?」
「ここからは全力で相手をさせてもらう」

そう言って彼女は燃える刀を手に、ベアへと駆けていく。
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