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第2章:潜入と情報収集
Episode6:灰街の灯――失われた王子と試される力
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帝国の城を離れ、
三人はようやく
夜明け前の街にたどり着いた。
灰色の靄に包まれたその場所は、
貧民と流浪の民が暮らす
「灰街(はいがい)」と呼ばれる一角。
城の煌びやかさとは対照的に、
路地には煤(すす)が舞い、
焚き火の煙が漂っていた。
「ここが……帝国の“裏側”か。」
リネルはフードを深く被り、
周囲を見回す。
傷ついた兵士、職を失った者、
盗品を売り買いする商人――
帝国の繁栄の陰に、
これほど多くの
“見捨てられた人々”がいた。
イリスが小声で言う。
「この街には、武器職人と闘技場がある。
腕を試したり、
装備を整えたりするには最適。」
セリスがうなずき、地図を広げる。
「表通りは危険だ。
裏路地を抜ければ、職人街に出られる。」
リネルは、母の手紙を思い出した。
“民を知れ、そして彼らの声を聞きなさい。”
(……母上。今の帝国の民は、
これほどまでに苦しんでいるのか。)
灰街の奥、油にまみれた扉をくぐると、
ひとりの老職人がいた。
「武具の修理か?それとも
……命を預ける一本を探しに来たか?」
低い声に、リネルは静かに剣を見せる。
「……この剣を、直したい。」
老職人は剣「レグナス」を受け取ると、
じっと刃を見つめた。
「……ほう。王国製だな。
細工が繊細だ。どこで手に入れた?」
「……遺品だ。」
「そうか。ならば大切にせい。
――だが、このままでは戦場じゃ折れる。」
職人は手際よく作業台に置き、
魔導炉を起動させた。
青白い炎が剣を包み、
鉄が鳴くような音が響く。
「“灰鋼(はいこう)”を混ぜる。
帝国の技と王国の技の融合だ。
……お前がこの地に立つ覚悟を決めたなら、
この剣は応えるだろう。」
リネルは静かにうなずく。
――そのとき、
店の外から歓声が聞こえた。
「闘技場だ。毎朝、
腕試しをしてる連中がいる。」とセリス。
リネルは新たな剣を手に、
闘技場へと向かう。
⸻
闘技場は荒くれ者と傭兵の集まりだった。
観客席では賭け金が飛び交い、
鉄と血の匂いが充満している。
受付の女がリネルを一瞥し、鼻で笑った。
「新顔かい?見た目じゃ弱そうだが
……命は落とすなよ。」
リネルは名を告げず、
ただ「試したい」とだけ言った。
対戦相手は、帝国の傭兵
――巨躯の男、ザルド。
戦斧を肩に担ぎ、観客に吠える。
「新入りか? 粉々にしてやる!」
試合開始の鐘が鳴る。
リネルは息を整え、構えを取る。
レグナスが新しい輝きを放ち、
刃の軌跡が空を裂く。
ザルドの斧が唸る。
地面を砕くほどの一撃。
しかしリネルは、
刃の間を滑るように避け、
逆手で一閃。
「なっ……!」
ザルドの斧が弾かれ、
肩に浅い傷が走る。
会場が一瞬、静まり返る。
「まさか……魔導補正の動きか?」
観客の声がざわつく。
セリスが微笑み、イリスが呟いた。
「やっぱり……あの子、普通じゃない。」
リネルはすぐに剣を収め、
観客に背を向けた。
勝利の余韻よりも、
心の奥で母の声が響いていた。
“力は誇示するためでなく、
守るために使いなさい。”
老職人の言葉が蘇る。
「帝国の技と王国の誇り
その両方を背負える者こそ、
真の戦士だ。」
リネルは剣を見つめ、静かに呟いた。
「……俺は、まだ途中だ。
父のように強くなるために。」
その夜、宿の窓から見える灰街の灯が、
遠く揺れていた。
復讐の炎とは違う、どこか温かな光。
それは、王国を失った少年が
――初めて「守りたい」と思えた灯だった。
三人はようやく
夜明け前の街にたどり着いた。
灰色の靄に包まれたその場所は、
貧民と流浪の民が暮らす
「灰街(はいがい)」と呼ばれる一角。
城の煌びやかさとは対照的に、
路地には煤(すす)が舞い、
焚き火の煙が漂っていた。
「ここが……帝国の“裏側”か。」
リネルはフードを深く被り、
周囲を見回す。
傷ついた兵士、職を失った者、
盗品を売り買いする商人――
帝国の繁栄の陰に、
これほど多くの
“見捨てられた人々”がいた。
イリスが小声で言う。
「この街には、武器職人と闘技場がある。
腕を試したり、
装備を整えたりするには最適。」
セリスがうなずき、地図を広げる。
「表通りは危険だ。
裏路地を抜ければ、職人街に出られる。」
リネルは、母の手紙を思い出した。
“民を知れ、そして彼らの声を聞きなさい。”
(……母上。今の帝国の民は、
これほどまでに苦しんでいるのか。)
灰街の奥、油にまみれた扉をくぐると、
ひとりの老職人がいた。
「武具の修理か?それとも
……命を預ける一本を探しに来たか?」
低い声に、リネルは静かに剣を見せる。
「……この剣を、直したい。」
老職人は剣「レグナス」を受け取ると、
じっと刃を見つめた。
「……ほう。王国製だな。
細工が繊細だ。どこで手に入れた?」
「……遺品だ。」
「そうか。ならば大切にせい。
――だが、このままでは戦場じゃ折れる。」
職人は手際よく作業台に置き、
魔導炉を起動させた。
青白い炎が剣を包み、
鉄が鳴くような音が響く。
「“灰鋼(はいこう)”を混ぜる。
帝国の技と王国の技の融合だ。
……お前がこの地に立つ覚悟を決めたなら、
この剣は応えるだろう。」
リネルは静かにうなずく。
――そのとき、
店の外から歓声が聞こえた。
「闘技場だ。毎朝、
腕試しをしてる連中がいる。」とセリス。
リネルは新たな剣を手に、
闘技場へと向かう。
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闘技場は荒くれ者と傭兵の集まりだった。
観客席では賭け金が飛び交い、
鉄と血の匂いが充満している。
受付の女がリネルを一瞥し、鼻で笑った。
「新顔かい?見た目じゃ弱そうだが
……命は落とすなよ。」
リネルは名を告げず、
ただ「試したい」とだけ言った。
対戦相手は、帝国の傭兵
――巨躯の男、ザルド。
戦斧を肩に担ぎ、観客に吠える。
「新入りか? 粉々にしてやる!」
試合開始の鐘が鳴る。
リネルは息を整え、構えを取る。
レグナスが新しい輝きを放ち、
刃の軌跡が空を裂く。
ザルドの斧が唸る。
地面を砕くほどの一撃。
しかしリネルは、
刃の間を滑るように避け、
逆手で一閃。
「なっ……!」
ザルドの斧が弾かれ、
肩に浅い傷が走る。
会場が一瞬、静まり返る。
「まさか……魔導補正の動きか?」
観客の声がざわつく。
セリスが微笑み、イリスが呟いた。
「やっぱり……あの子、普通じゃない。」
リネルはすぐに剣を収め、
観客に背を向けた。
勝利の余韻よりも、
心の奥で母の声が響いていた。
“力は誇示するためでなく、
守るために使いなさい。”
老職人の言葉が蘇る。
「帝国の技と王国の誇り
その両方を背負える者こそ、
真の戦士だ。」
リネルは剣を見つめ、静かに呟いた。
「……俺は、まだ途中だ。
父のように強くなるために。」
その夜、宿の窓から見える灰街の灯が、
遠く揺れていた。
復讐の炎とは違う、どこか温かな光。
それは、王国を失った少年が
――初めて「守りたい」と思えた灯だった。
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