白く凍りついた打席

冴えないさん

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1章

芯を追いかける17歳の朝

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 「次こそは絶対芯で捉える」
 だいたい人生は八十年くらいだと言われている、その中でも学生でいられる時間は長い人で十六年間、短い人では九年で終わってしまうのだ。その中でも高校生活はあっという間に終わってしまう。

「木の床から漂うワックスの甘く、どこか温かい香りに、かすかに古い汗の乾いた残り香が混ざっていた。式の緊張と新たな始まりの空気が、まるで身体を包み込むようにゆっくりと染み渡っていく――そんな香りを、大勢の拍手とともに胸いっぱいに吸い込んだ。」
この春、私は期待と不安で胸を膨らせ入学した。「えー要するに高校生活は長いようで短いので無駄にすることなく、やるべきことをー」「まじで校長先生話長ぇーな」
 先輩たちが座る席から愚痴がこぼれる、私は野球推薦でこの福島県の東北高校に入学した、地元は神奈川県だが、野球でもっと高みを目指したく県外の強豪校を志望した。校長先生の話が終わったあとクラスで軽く自己紹介をし、学校生活一日目が終了した。放課後ユニホームに着替えグラウンドまで駆け足で向かった。最初の三十分程度で新入生の自己紹介が終了した、その後は新入生の実力を見るために、一年生を中心に紅白戦が行われた。私も三番サードで出場した。私たちのチームは、後攻だったため試合開始の合図が鳴り全員が駆け足で自分の守備位置に着いた。高校での野球は、中学生の時とは比べ物にならない緊張感があった、
心臓が耳を塞ぐように、鼓膜に「ドクッ ドクッ」と跳ね返る。
足裏で砂利の粒がはねる感覚が、まるで身体中を揺さぶるようだ。
一球目は鋭く振り切った――「キーン、パシッ」。
二球目は静かに転がる見逃し。
スイングを繰り返すごとに、身体の芯が固まり、視界が鋭敏になる。
「パァーン」三球目。ボールはキャッチャーミットに深く飲み込まれた。
静寂の中、監督席からの重いため息――雷のように胸を打つ。
その瞬間、世界が白く凍り付いた。
だが、かすかな決意が耳元で囁いた。
「次は、絶対に捉えてやる」
だが現実はそんなにも甘いものでは無かった、チャンスで空振りをしてしまった私は、この日の試合で次に、出番が回ってくることはなかった。
次の日、
教室にいる間も、私の頭は昨日の打席に囚われていた。
放課後、グラウンドを借りた僕は、バットを振る前にそっとつぶやいた――
「昨日は良い経験だった次こそ、ちゃんと芯で捉える」。
朝陽が控えめに広がるグラウンド。砂の匂いとワックスの香りが混じり、空気が肌を包む。
グリップを握り直し、目を閉じてイメージする。「ボールがバットの芯で弾ける感覚」――
スイング。打ち返すたびに、音も振動も微妙に違う。フォームを修正しながら、繰り返す。
練習が終わるころ──
「……まだ練習してたのか」
背後に聞こえた声に振り返ると、監督が立っていた。
緊張と期待が同時に胸を満たす。「はい、昨日の三振から自分の課題が見つかったのでそこを重点的に練習してました。」私がこう言うと監督は、「そこがお前のいい所だ、自分の課題が見つかったということは改善できるということだ、先輩に勝てるよう頑張れ」その言葉は今の自分にとって一番励みになる一言だった。それから監督が校舎に戻ったあと。
 雨が細く落ち始めた。グラウンドの砂が濡れて、バットが滑りそうになる。
「大丈夫か?」声をかけてきたのは、同期の高森晃だった。集中しすぎて気づかなかった、「うん、大丈夫、晃も自主練?」「そう、昨日の試合思うように結果出せなくてさそれが悔しくて気づいたらバットを振ってた」晃は昨日3打席2安打という好成績だった、だが満足せずまだまだ高みを目指していた。「どうせだったら一緒に練習しないか?」晃からの提案に私は迷わずうなずいた。その後1時間ほど練習をして、その日の練習を終えた。家に帰ってからも、「野球ノート」に昨日の試合でダメだったことや、今日の練習でどのくらい改善できたかを、メモした、疲れが溜まっていたのだろう、ノートを書き終えた瞬間、睡魔に襲われ気づくと朝日が私を照らしていた。
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