1 / 1
緑の図書館
しおりを挟む
『そんなに怖がらないで、焦らないで。
大丈夫。
闇はいつも痛みや弱みを糧に増殖する。
覚えておけば役に立つ。
あなたを脅かすものは何もない。
唯一あるなら、あなた。
それに成りすました何者か。』
古い図書館に忍び込んで、棚から取り出した一冊の本のページをめくり現れたのは、詩。なんだか今のわたしの状況に似てる。……でも膝を怪我しててもわたしは別に焦ってはいないし、怖がってもいない。
この自然に飲まれた国に入ってからは木の根に気を付けながら歩いていたけど、うっかりつまずいて転んでしまった。擦りむいた膝は持っていた水筒の水で綺麗にして包帯を巻いたけどちょっと痛くて。だから、道の途中にいた精霊に聞いたこの図書館にやってきたんだ。中には癒しの水が流れていて、そこで膝を洗えば怪我は治るんだって。
もう図書館の中に入ったし、少し探せば見つかる筈。だから大丈夫。デリーもいるし。
そう思ってわたしは持っているランタンに目をやった。
「ねえ、デリーって怖いものある? 水とか? 自分が消えちゃったらって思う?」
「僕はどこにでも存在してるから消えはしないよ。だから分かんない」
ランタンの火にかんたんな顔が浮かんで、彼は幼い子どもの声で返事をする。
彼は火の精霊。わたしの友だちで、旅に出る時に一緒に付いてきてもらった。
苔に塗れ自然に飲まれたこの古い図書館でも、どんな旅の途中でも、彼は真っ暗闇をオレンジに照らしてわたしの心を安心させてくれる。
「それにしてもメーリャ、寄り道してていいの?」
「旅なんて寄り道が醍醐味なんだからいいの」
「なるほど。覚えとこ」
怪我をした膝は痛むけれど、まだ大丈夫。
折角だからと気になった本を開いていたわたしはもう一ページめくってみる。
『ありがとう、と言ってみましょう。
相手はきっと喜びます。
あなたの心もそっと温かくなるでしょう。
ごめんね、と伝えてみましょう。
相手もきっとこちらを向いて、その言葉を受け取ってくれます。
あなたの心もゆっくりと解けることでしょう。
お互いが手を取り合って、日々を生きていきましょう。』
これは多分詩集だ。
かつて栄えていた王国は何があったか緑に飲まれて、今は廃墟となっている。苔むした室内は夜なのもあって薄暗い。
どんな人がこれを書いたのか分からないけど、知らない場所に来て知らないものを見るのは面白い。
「でも、そろそろ行かないとね」
わたしは本を棚に戻すと立ち上がる。
どこから来たのか、所々木の根が出ている館内を進んだ。
「ひざ、痛くない?」
「痛い……」
ズボンの下で今もズキズキと痛む傷に目を向ける。 でも奥に行けばいずれ辿り着く筈。わたしは前を向き
「メーリャがんばれ~」
と応援してくれるデリーの声と歌を聞きながら進んだ。
でもいくら進んでも目的地に辿り着かない。水の音はするのに、それは大きくも小さくもならないで、ずっと鳴り響いている。
わたしが歩みを緩め辺りを見回していると
「ねえ迷ってる?」
「ま、迷ってない。ただの図書館で迷う訳ないわ」
「ぼくのこともっと前に持っていって、遠くまで照らしてみて。扉があったら見逃してるかも」
「分かった」
出来るだけ自分の体から遠ざけて、目を凝らして先へと進む。
「ねえ、やっぱり君同じところを回ってるよ。さっき読んだ本の棚の前に戻ってきてる」
「……なんでだろう」
わたしは考えてみた。今までずっと真っ直ぐ進んできた。途中に逸れる道があったかは……分からない。もしそこが目的地への入り口だったら見逃していることになる。
「この部屋、円形になってるのかも」
デリーが言う。
「水の音、ずっと大きさが変わらなかったから、多分部屋の真ん中に泉があるんだと思う」
「なるほど。でもわたし、真っ直ぐ進んでると思ってたのに」
「この部屋ずいぶんと広いみたい。それに暗いと分かりにくいから仕方ないよ」
「じゃあもう一回行きましょ。扉や道があるか、ちゃんと確認しないとね」
そういう訳でもう一回、わたし達は大きな部屋を道に沿って時計回りに進むことにした。
「あ、ここに道があるわ」
左側に通路がある。わたしは新たな発見に頬が緩み足を進める。
「待って。それ、ぼく達が入ってきたところだよ」
「えっ?」
「ほら、足跡が」
言われてランタンの光を近付けると、確かにわたしの靴の跡が少しだけ苔を沈めている。
「なんだ……。じゃあもう一回って訳」
振り返って、暗闇にランタンを向ける。
「がんばろう」
「うん……」
そうは言ったけど、半分歩いた辺りでわたしは地面に座り込んでしまった。
ループしてはいないけど、何も見えない暗闇の中、ただただ水の音だけを聞き続けて嫌になってしまった。ずっとランタンをかざしていたせいで腕は疲れたし、擦りむいた膝もズキズキと痛む。
「進まないの? あともう少しでゴールかもしれないよ」
「でも、行き方が分からないもの。それに疲れちゃったの。少し休まないと」
「そっかぁ。じゃあぼくは待つよ」
この数十分の間、ただ口を出すことしかしていなかったデリーが気楽そうに言うのを聞いて、少し腹が立ってしまう。
「……あなたがそこから出ていって確認してきてくれたらいいのに」
「そんなことしたらこの図書館が焼け落ちちゃうよ。そうならない為にメーリャがこの家をくれたんだ」
「……分かってるわ」
わたしはそのまま壁を背にして膝を抱えていたけれど、知らない間に眠っていたみたい。彼の声で目を覚ますと横になっていた。
「ねえメーリャ見て見て!」
「何……」
眠い目を擦りながら、はしゃぐデリーの小さな指の先を見る。照らされた地面には地下への扉らしきものがあった。一メートルより少し大きいくらいの長方形の扉だ。
「見つけたの⁉︎」
「うん。これで君の怪我が治るね。痛そうだったから心配してたんだ。ここが扉だったなんて、すっごくラッキー!」
「ぁ……」
嬉しそうな彼を見て気付いた。わたしが探索している間色々言ってきていたけど、それはわたしの怪我を早く治したかったからなんだ。
わたし、焦ってイライラして当たっちゃったな。
「デリー、ごめんね」
「え? いいけど、何かあった?」
「イライラしてさっき意地悪言っちゃったの」
「あ、そうだったの? 全然気づかなかったや」
「デリーって本当に鈍感」
「それもぼくのいいところでしょ」
明るく笑う彼に元気付けられる。確かに、殆ど何も気にしない彼がいてくれると暗くならなくて済むことが多い。心も、もちろん周りも。
立ち上がって、リュックを背負うとランタンを手に取る。
「じゃあ、行こう」
石で出来た扉の端に長細いボタンのようなものを見つけた。ちゃんと扉が開くかドキドキしながらそれを押し込むと扉の縁が白く発光して、わたしがいる側と反対側にスムーズに開いた。
そこには一メートルくらいの穴と下に続くハシゴがあって、わたしはランタンをリュックに付けると下りていく。
リュックが入る大きさでよかった。
とん、と下に到着すると左側は行き止まりで右側に道が続いている。多分図書館の中心方向。
少しだけ歩くとその先は広場のようになっていた。植物が天井から垂れ下がっていて、黄色く光る果実をつけている。少し低くなった中央の地面からは水が湧き出ていた。
「やったね、メーリャ!」
「うん!」
デリーと顔を見合わせて、地面にリュックを下ろす。
まずは水を飲んで、お腹を満たす為に果物を一つだけ食べた。あんまり味はしないけど、瑞々しくて生き返る。
そして次は……ズボンをめくって包帯を取る。まだ、あまりかさぶたが出来ていない。
そっと掬った水で洗ってみた。
「いてっ」
「だ、だいじょうぶ?」
「うん。ちょっと沁みちゃっただけ」
何回か洗い流していく内に傷はどんどん綺麗になって、最後には跡もなく治ってくれた。
もう痛みはない。何も気にすることなく歩けそうだ。
「よかった。これでまた安心してメーリャと冒険ができるよ」
「そうだね。……ありがとうね、デリー」
「どういたしまして。……って、なにが?」
「デリーが扉を見つけてくれたでしょ。あとこのお水と、頑張ってくれたわたしの足にもお礼言わなきゃ。ありがとう」
デリーがぱっと炎を強くした。辺りが一段と明るくなる。
「じゃあぼくも、ありがとうを君に。一緒に進んでくれてありがとう。また歩いていけそうでうれしいよ」
それにわたしの頬がちょっぴり緩む。こういうところが大好きで、こういう瞬間がとても嬉しい。
……本の言う通りだったかも。色々と。
「じゃあそれにまたありがとうって言っちゃお」
「えー、ずるーい」
「ずるいのかな?」
「わかんない」
二人で笑い合う。やっぱり、一緒にいると楽しいな。これからも、色んな場所に冒険に行きたい。一人じゃ挫けそうなことがあってもデリーがいれば安心できる。
わたし達、多分最高のチームだよ。
そう思った時、なんでだろう……図書館から優しい笑い声がした気がした。
*
読んでくださりありがとうございます☆
大丈夫。
闇はいつも痛みや弱みを糧に増殖する。
覚えておけば役に立つ。
あなたを脅かすものは何もない。
唯一あるなら、あなた。
それに成りすました何者か。』
古い図書館に忍び込んで、棚から取り出した一冊の本のページをめくり現れたのは、詩。なんだか今のわたしの状況に似てる。……でも膝を怪我しててもわたしは別に焦ってはいないし、怖がってもいない。
この自然に飲まれた国に入ってからは木の根に気を付けながら歩いていたけど、うっかりつまずいて転んでしまった。擦りむいた膝は持っていた水筒の水で綺麗にして包帯を巻いたけどちょっと痛くて。だから、道の途中にいた精霊に聞いたこの図書館にやってきたんだ。中には癒しの水が流れていて、そこで膝を洗えば怪我は治るんだって。
もう図書館の中に入ったし、少し探せば見つかる筈。だから大丈夫。デリーもいるし。
そう思ってわたしは持っているランタンに目をやった。
「ねえ、デリーって怖いものある? 水とか? 自分が消えちゃったらって思う?」
「僕はどこにでも存在してるから消えはしないよ。だから分かんない」
ランタンの火にかんたんな顔が浮かんで、彼は幼い子どもの声で返事をする。
彼は火の精霊。わたしの友だちで、旅に出る時に一緒に付いてきてもらった。
苔に塗れ自然に飲まれたこの古い図書館でも、どんな旅の途中でも、彼は真っ暗闇をオレンジに照らしてわたしの心を安心させてくれる。
「それにしてもメーリャ、寄り道してていいの?」
「旅なんて寄り道が醍醐味なんだからいいの」
「なるほど。覚えとこ」
怪我をした膝は痛むけれど、まだ大丈夫。
折角だからと気になった本を開いていたわたしはもう一ページめくってみる。
『ありがとう、と言ってみましょう。
相手はきっと喜びます。
あなたの心もそっと温かくなるでしょう。
ごめんね、と伝えてみましょう。
相手もきっとこちらを向いて、その言葉を受け取ってくれます。
あなたの心もゆっくりと解けることでしょう。
お互いが手を取り合って、日々を生きていきましょう。』
これは多分詩集だ。
かつて栄えていた王国は何があったか緑に飲まれて、今は廃墟となっている。苔むした室内は夜なのもあって薄暗い。
どんな人がこれを書いたのか分からないけど、知らない場所に来て知らないものを見るのは面白い。
「でも、そろそろ行かないとね」
わたしは本を棚に戻すと立ち上がる。
どこから来たのか、所々木の根が出ている館内を進んだ。
「ひざ、痛くない?」
「痛い……」
ズボンの下で今もズキズキと痛む傷に目を向ける。 でも奥に行けばいずれ辿り着く筈。わたしは前を向き
「メーリャがんばれ~」
と応援してくれるデリーの声と歌を聞きながら進んだ。
でもいくら進んでも目的地に辿り着かない。水の音はするのに、それは大きくも小さくもならないで、ずっと鳴り響いている。
わたしが歩みを緩め辺りを見回していると
「ねえ迷ってる?」
「ま、迷ってない。ただの図書館で迷う訳ないわ」
「ぼくのこともっと前に持っていって、遠くまで照らしてみて。扉があったら見逃してるかも」
「分かった」
出来るだけ自分の体から遠ざけて、目を凝らして先へと進む。
「ねえ、やっぱり君同じところを回ってるよ。さっき読んだ本の棚の前に戻ってきてる」
「……なんでだろう」
わたしは考えてみた。今までずっと真っ直ぐ進んできた。途中に逸れる道があったかは……分からない。もしそこが目的地への入り口だったら見逃していることになる。
「この部屋、円形になってるのかも」
デリーが言う。
「水の音、ずっと大きさが変わらなかったから、多分部屋の真ん中に泉があるんだと思う」
「なるほど。でもわたし、真っ直ぐ進んでると思ってたのに」
「この部屋ずいぶんと広いみたい。それに暗いと分かりにくいから仕方ないよ」
「じゃあもう一回行きましょ。扉や道があるか、ちゃんと確認しないとね」
そういう訳でもう一回、わたし達は大きな部屋を道に沿って時計回りに進むことにした。
「あ、ここに道があるわ」
左側に通路がある。わたしは新たな発見に頬が緩み足を進める。
「待って。それ、ぼく達が入ってきたところだよ」
「えっ?」
「ほら、足跡が」
言われてランタンの光を近付けると、確かにわたしの靴の跡が少しだけ苔を沈めている。
「なんだ……。じゃあもう一回って訳」
振り返って、暗闇にランタンを向ける。
「がんばろう」
「うん……」
そうは言ったけど、半分歩いた辺りでわたしは地面に座り込んでしまった。
ループしてはいないけど、何も見えない暗闇の中、ただただ水の音だけを聞き続けて嫌になってしまった。ずっとランタンをかざしていたせいで腕は疲れたし、擦りむいた膝もズキズキと痛む。
「進まないの? あともう少しでゴールかもしれないよ」
「でも、行き方が分からないもの。それに疲れちゃったの。少し休まないと」
「そっかぁ。じゃあぼくは待つよ」
この数十分の間、ただ口を出すことしかしていなかったデリーが気楽そうに言うのを聞いて、少し腹が立ってしまう。
「……あなたがそこから出ていって確認してきてくれたらいいのに」
「そんなことしたらこの図書館が焼け落ちちゃうよ。そうならない為にメーリャがこの家をくれたんだ」
「……分かってるわ」
わたしはそのまま壁を背にして膝を抱えていたけれど、知らない間に眠っていたみたい。彼の声で目を覚ますと横になっていた。
「ねえメーリャ見て見て!」
「何……」
眠い目を擦りながら、はしゃぐデリーの小さな指の先を見る。照らされた地面には地下への扉らしきものがあった。一メートルより少し大きいくらいの長方形の扉だ。
「見つけたの⁉︎」
「うん。これで君の怪我が治るね。痛そうだったから心配してたんだ。ここが扉だったなんて、すっごくラッキー!」
「ぁ……」
嬉しそうな彼を見て気付いた。わたしが探索している間色々言ってきていたけど、それはわたしの怪我を早く治したかったからなんだ。
わたし、焦ってイライラして当たっちゃったな。
「デリー、ごめんね」
「え? いいけど、何かあった?」
「イライラしてさっき意地悪言っちゃったの」
「あ、そうだったの? 全然気づかなかったや」
「デリーって本当に鈍感」
「それもぼくのいいところでしょ」
明るく笑う彼に元気付けられる。確かに、殆ど何も気にしない彼がいてくれると暗くならなくて済むことが多い。心も、もちろん周りも。
立ち上がって、リュックを背負うとランタンを手に取る。
「じゃあ、行こう」
石で出来た扉の端に長細いボタンのようなものを見つけた。ちゃんと扉が開くかドキドキしながらそれを押し込むと扉の縁が白く発光して、わたしがいる側と反対側にスムーズに開いた。
そこには一メートルくらいの穴と下に続くハシゴがあって、わたしはランタンをリュックに付けると下りていく。
リュックが入る大きさでよかった。
とん、と下に到着すると左側は行き止まりで右側に道が続いている。多分図書館の中心方向。
少しだけ歩くとその先は広場のようになっていた。植物が天井から垂れ下がっていて、黄色く光る果実をつけている。少し低くなった中央の地面からは水が湧き出ていた。
「やったね、メーリャ!」
「うん!」
デリーと顔を見合わせて、地面にリュックを下ろす。
まずは水を飲んで、お腹を満たす為に果物を一つだけ食べた。あんまり味はしないけど、瑞々しくて生き返る。
そして次は……ズボンをめくって包帯を取る。まだ、あまりかさぶたが出来ていない。
そっと掬った水で洗ってみた。
「いてっ」
「だ、だいじょうぶ?」
「うん。ちょっと沁みちゃっただけ」
何回か洗い流していく内に傷はどんどん綺麗になって、最後には跡もなく治ってくれた。
もう痛みはない。何も気にすることなく歩けそうだ。
「よかった。これでまた安心してメーリャと冒険ができるよ」
「そうだね。……ありがとうね、デリー」
「どういたしまして。……って、なにが?」
「デリーが扉を見つけてくれたでしょ。あとこのお水と、頑張ってくれたわたしの足にもお礼言わなきゃ。ありがとう」
デリーがぱっと炎を強くした。辺りが一段と明るくなる。
「じゃあぼくも、ありがとうを君に。一緒に進んでくれてありがとう。また歩いていけそうでうれしいよ」
それにわたしの頬がちょっぴり緩む。こういうところが大好きで、こういう瞬間がとても嬉しい。
……本の言う通りだったかも。色々と。
「じゃあそれにまたありがとうって言っちゃお」
「えー、ずるーい」
「ずるいのかな?」
「わかんない」
二人で笑い合う。やっぱり、一緒にいると楽しいな。これからも、色んな場所に冒険に行きたい。一人じゃ挫けそうなことがあってもデリーがいれば安心できる。
わたし達、多分最高のチームだよ。
そう思った時、なんでだろう……図書館から優しい笑い声がした気がした。
*
読んでくださりありがとうございます☆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる