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デンキウナギ①
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「だからーおかしいやろ! なんでそこで弦くんと俺が絡むんよ!」
「だって浮気でもしなきゃ絡まねぇだろ」
「甘い俺と朔の話なんやろ? なんで浮気だよ!」
「おい、一応ここ、公共の場だよお前ら……」
薄暗い箱の中。
営業を始めたばかりのその店に客はいなくて、堂々と大声で騒ぐその内容は、浮気だ絡みだと、普通ならば、伏せなければならないようなことだった。
「弦くんの店、人おらんくて話しやすいわ」
「はぁ!? 平日のこんな時間に人おらんわ!」
弦の店がオープンして、事務所の他に、その店にいることが多くなった。そしてそこで話されるのは、新作の企画の話、そして、イベントの話だった。
「作品の中で使うなにかをさ、イベントでプレゼントしたいなぁ」
「作品のキーになるような物ってこと?」
「そうそう、コストかからんもんでさぁ」
「恩返しみたいなん、したいなぁ、ファンに……」
作品の内容も、イベントの内容も、あーでもないこーでもないといいながら作り上げていく過程が、楽しかった。
「おーす!」
「おー凌空くん! お疲れー」
「仕事帰り? 早いなぁ」
「今日早番だったからさぁ。企画できた?」
「できん。そもそも俺と朔の1日に絡み3回て、どんだけハードやねん」
「ははっ! 確かに」
「お疲れ様ですー!」
「おぉ、お前らも来れたんかぁ!」
「つぅかこの時間に全員集合とかどんだけ暇やねん」
なにかとこの店で、飲んで話した。
全員で集まれることは少なかったが、ココで飲みながら、なんでも話をした。
「だからさぁ、そもそも甘い1日の中に3絡みってのが無理じゃん」
「そんなんSUUに言えよ」
「やっぱ出会いの前からやって最後に結ばれるのが良いんじゃねぇの? で、演技もので全員参加」
「櫂の元彼が凌空で、後輩が聖也で」
「あぁ~元彼とは回想で絡むとか?」
「なっげぇ回想だな」
「それか思い切って学園もの」
「え、学ランとか着んの?」
「まだ行けるだろお前らは。俺は無理だな」
「はははっ! 弦くんとか絶対面白くなるやつ!」
そこに、意見を否定する人はいなくて。冗談にも取れるような意見を、真面目にぶつけ合った。
カウンターで酒と簡単なつまみを出す弦は、たまにフロアに出て座り込んで話に加わる。その隣で凌空は、意見をぶつけ合う顔を見て楽しそうに笑った。朔良も、櫂も、聖也も碧生も、皆、よく笑った。
新しいチームとして、最高のスタート。
朔良はそう感じていたし、後輩がきてもやはり、そこは楽しい、居心地の良い場所に変わりはなかった。
*
「おはよぉ……」
『あ、朔? 今起きたん?』
「んん……」
『なぁ、遊びに行かねぇ?』
「え……急だなぁ……」
眩しそうに目を開けた朔良は、壁にかかる時計に目をやる。
「早いなぁ……」
『早いってもうすぐ昼やで』
「うぅん……」
身体を伸ばしながら朔良は起き上がり、床にぺたりと足をつけた。
『都合悪いん?』
「んや、行く行く、どこ行くん?」
『水族館!』
「すいぞくかん?」
『外、見て?』
「え?」
ベッドに座ったままの朔良は急いで立ち上がりパタパタと足音を鳴らし、カーテンを開けた。見下ろすとそこには、ひらひらと手を振る櫂。
「は? なに?」
『いこーぜぇ!』
「はぁーー!? ち、ちょっと待って!」
スマホを片手に、チェックのパジャマ姿でバタバタと部屋に戻る。
「はい、おっけー。流石だねぇ、櫂朔は」
「櫂ー! 1回戻ってきてー」
寝癖のついた髪、いや、先ほど櫂によってつけられた寝癖を、わしゃわしゃと朔良は触る。
「朔ちゃん、次外行くで、着替えや」
「はぁい」
「なんやパジャマでオフモードか」
「パジャマなんか普段着ないけどさ、なんかスイッチがオフんなるな」
リラックスした空間。
今日は、甘い甘い1日の撮影。
仕事だと割り切って、心の距離に線を引いて臨むべきか、悶々とした時もあった。でも甘い雰囲気を求められているのなら、もう身を任せようと、朔良は思った。流れと雰囲気に身を任せて、その甘い1日に浮かれてみてもいいじゃないか、そんな考えのもと、リラックスした空気に漂う心地よさの中にいた。
「朔~髪やったるわー」
「おぉー」
コーヒーを飲みながらダイニングに座り、櫂の手を頭部に感じる。柔らかい髪を撫でる櫂の手が、温かい。
「朔、運転する?」
「どっちでもいいよ。途中で変わる?」
「あー、それもいーな」
小さく「よしできた!」と呟き櫂は、ポンと朔良の肩を叩いた。
「ありがとー、すげぇなぁ」
「朔の髪は扱いやすいわ」
「準備できたら行くぞー」
すでにスタッフが荷物を積み込んだ車。
運転席と助手席にはカメラをセットする。
「じゃぁ櫂が乗り込んで、朔良は急いで駆け込んできて」
「はい」
SUUの指示のもと、撮影が進む。
「お待たせ……つーか、なんで?」
「ハハッ! 驚かせたろーかと思って」
「いやびっくりしたわ!」
「成功やわぁ! 乗って、行こう」
ポンポンと助手席のシートを叩く櫂に促され、乗り込んだ。
「いいね、楽しそうだなぁふたりとも。自然でいい」
カットをかけたSUUも、満足げに後部座席に乗り込む。
「よっしゃ! しゅっぱぁーつっ!」
陽気な櫂の掛け声で、車が動き出した。
「だって浮気でもしなきゃ絡まねぇだろ」
「甘い俺と朔の話なんやろ? なんで浮気だよ!」
「おい、一応ここ、公共の場だよお前ら……」
薄暗い箱の中。
営業を始めたばかりのその店に客はいなくて、堂々と大声で騒ぐその内容は、浮気だ絡みだと、普通ならば、伏せなければならないようなことだった。
「弦くんの店、人おらんくて話しやすいわ」
「はぁ!? 平日のこんな時間に人おらんわ!」
弦の店がオープンして、事務所の他に、その店にいることが多くなった。そしてそこで話されるのは、新作の企画の話、そして、イベントの話だった。
「作品の中で使うなにかをさ、イベントでプレゼントしたいなぁ」
「作品のキーになるような物ってこと?」
「そうそう、コストかからんもんでさぁ」
「恩返しみたいなん、したいなぁ、ファンに……」
作品の内容も、イベントの内容も、あーでもないこーでもないといいながら作り上げていく過程が、楽しかった。
「おーす!」
「おー凌空くん! お疲れー」
「仕事帰り? 早いなぁ」
「今日早番だったからさぁ。企画できた?」
「できん。そもそも俺と朔の1日に絡み3回て、どんだけハードやねん」
「ははっ! 確かに」
「お疲れ様ですー!」
「おぉ、お前らも来れたんかぁ!」
「つぅかこの時間に全員集合とかどんだけ暇やねん」
なにかとこの店で、飲んで話した。
全員で集まれることは少なかったが、ココで飲みながら、なんでも話をした。
「だからさぁ、そもそも甘い1日の中に3絡みってのが無理じゃん」
「そんなんSUUに言えよ」
「やっぱ出会いの前からやって最後に結ばれるのが良いんじゃねぇの? で、演技もので全員参加」
「櫂の元彼が凌空で、後輩が聖也で」
「あぁ~元彼とは回想で絡むとか?」
「なっげぇ回想だな」
「それか思い切って学園もの」
「え、学ランとか着んの?」
「まだ行けるだろお前らは。俺は無理だな」
「はははっ! 弦くんとか絶対面白くなるやつ!」
そこに、意見を否定する人はいなくて。冗談にも取れるような意見を、真面目にぶつけ合った。
カウンターで酒と簡単なつまみを出す弦は、たまにフロアに出て座り込んで話に加わる。その隣で凌空は、意見をぶつけ合う顔を見て楽しそうに笑った。朔良も、櫂も、聖也も碧生も、皆、よく笑った。
新しいチームとして、最高のスタート。
朔良はそう感じていたし、後輩がきてもやはり、そこは楽しい、居心地の良い場所に変わりはなかった。
*
「おはよぉ……」
『あ、朔? 今起きたん?』
「んん……」
『なぁ、遊びに行かねぇ?』
「え……急だなぁ……」
眩しそうに目を開けた朔良は、壁にかかる時計に目をやる。
「早いなぁ……」
『早いってもうすぐ昼やで』
「うぅん……」
身体を伸ばしながら朔良は起き上がり、床にぺたりと足をつけた。
『都合悪いん?』
「んや、行く行く、どこ行くん?」
『水族館!』
「すいぞくかん?」
『外、見て?』
「え?」
ベッドに座ったままの朔良は急いで立ち上がりパタパタと足音を鳴らし、カーテンを開けた。見下ろすとそこには、ひらひらと手を振る櫂。
「は? なに?」
『いこーぜぇ!』
「はぁーー!? ち、ちょっと待って!」
スマホを片手に、チェックのパジャマ姿でバタバタと部屋に戻る。
「はい、おっけー。流石だねぇ、櫂朔は」
「櫂ー! 1回戻ってきてー」
寝癖のついた髪、いや、先ほど櫂によってつけられた寝癖を、わしゃわしゃと朔良は触る。
「朔ちゃん、次外行くで、着替えや」
「はぁい」
「なんやパジャマでオフモードか」
「パジャマなんか普段着ないけどさ、なんかスイッチがオフんなるな」
リラックスした空間。
今日は、甘い甘い1日の撮影。
仕事だと割り切って、心の距離に線を引いて臨むべきか、悶々とした時もあった。でも甘い雰囲気を求められているのなら、もう身を任せようと、朔良は思った。流れと雰囲気に身を任せて、その甘い1日に浮かれてみてもいいじゃないか、そんな考えのもと、リラックスした空気に漂う心地よさの中にいた。
「朔~髪やったるわー」
「おぉー」
コーヒーを飲みながらダイニングに座り、櫂の手を頭部に感じる。柔らかい髪を撫でる櫂の手が、温かい。
「朔、運転する?」
「どっちでもいいよ。途中で変わる?」
「あー、それもいーな」
小さく「よしできた!」と呟き櫂は、ポンと朔良の肩を叩いた。
「ありがとー、すげぇなぁ」
「朔の髪は扱いやすいわ」
「準備できたら行くぞー」
すでにスタッフが荷物を積み込んだ車。
運転席と助手席にはカメラをセットする。
「じゃぁ櫂が乗り込んで、朔良は急いで駆け込んできて」
「はい」
SUUの指示のもと、撮影が進む。
「お待たせ……つーか、なんで?」
「ハハッ! 驚かせたろーかと思って」
「いやびっくりしたわ!」
「成功やわぁ! 乗って、行こう」
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「いいね、楽しそうだなぁふたりとも。自然でいい」
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