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奪取
六
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騎却は燕王より、楽毅を生け捕りにするように命じられていたが、そのつもりは毛頭なかった。騎却自身にも、一方的なものであるが、楽毅に対する積憤がある。できれば、この手で殺してやりたかった。
全身に矢を受け絶命した、魏竜の屍を馬蹄で踏みつけ、騎却は砂に埋まる、楽毅を見て、剣を抜き放った。
自ら下馬し、這這の態の楽毅に、とどめを刺そうとした、その時である。彼の足許に数本の矢が突き立った。
「何!?」
尻餅をつき、眼前のなだらかな丘を見遣ると、そこから黒衣を靡かせた者が十人ばかりの集団が姿を現した。
手には弓。彼等は恐ろしいほどの速さで、矢を番え、此方に射かけてきた。
その一本が、騎却の腿に突き刺さった。あまりの痛さに悶える。麾下は予想していなかった、伏兵に戸惑い狼狽している。
「何をしている!奴等を叩き潰せ!」
喝で我に返った、麾下達が馬を駆ろうとするが、また矢の雨が降り、麾下の馬を射貫いた。馬が嘶き、数十頭の馬が痛みで暴れ始めると、他の馬にも混乱が伝播した。
「くそ!たった十人程度で」
騎却は忿怒に燃え上がり、片足で立ち上がる。眼光の尾が、眼前を通り過ぎた。
「何だと」
先ほどまで、眼前にあった、瀕死の楽毅の姿はない。
指呼の間。馬を駆った黒衣の者が、楽毅を馬の背に乗せていた。
「追え!追え!」
だが指示は虚しく、矢の雨に阻まれた。
全身に矢を受け絶命した、魏竜の屍を馬蹄で踏みつけ、騎却は砂に埋まる、楽毅を見て、剣を抜き放った。
自ら下馬し、這這の態の楽毅に、とどめを刺そうとした、その時である。彼の足許に数本の矢が突き立った。
「何!?」
尻餅をつき、眼前のなだらかな丘を見遣ると、そこから黒衣を靡かせた者が十人ばかりの集団が姿を現した。
手には弓。彼等は恐ろしいほどの速さで、矢を番え、此方に射かけてきた。
その一本が、騎却の腿に突き刺さった。あまりの痛さに悶える。麾下は予想していなかった、伏兵に戸惑い狼狽している。
「何をしている!奴等を叩き潰せ!」
喝で我に返った、麾下達が馬を駆ろうとするが、また矢の雨が降り、麾下の馬を射貫いた。馬が嘶き、数十頭の馬が痛みで暴れ始めると、他の馬にも混乱が伝播した。
「くそ!たった十人程度で」
騎却は忿怒に燃え上がり、片足で立ち上がる。眼光の尾が、眼前を通り過ぎた。
「何だと」
先ほどまで、眼前にあった、瀕死の楽毅の姿はない。
指呼の間。馬を駆った黒衣の者が、楽毅を馬の背に乗せていた。
「追え!追え!」
だが指示は虚しく、矢の雨に阻まれた。
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