バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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魔剣争奪戦編

第107話 見守る女性たち

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「――……っ」

 目を覚ますと、タマコはベッドの上にいた。
 困惑するが徐々に記憶が戻ると、強制転移したのだと理解する。

(そうか、私は……)

 魔王アンブレラを退けるという偉業ジャイアントキリングをやってのけたのも束の間、その後にやってきた魔王ハザードには手も足も出なかった。
 キズ一つ付けられなかったことに悔しさが滲む。
 だが、それ以上にタローの役に立てなかったことが、胸にずっしりと伸し掛かっていた。
 思わず涙が出そうになっていると、横から話しかけられる。

「マリア様! よかった気が付いたんですね」
「おつかれ、マリア」

 顔を傾ければ安堵するシャルルと労うエリスの姿がそこにはあった。

「エリス、約束は守ったぞ」
「えぇ……頑張ったわね、マリア」

 タマコはエリスに感謝していた。
 嫌っていた父の力と向き合う機会をくれたことに。
 きっとこれから、タマコはもっと強くなれるだろう。

「シャルル……お前は……」

 次にシャルルに言葉を掛けようとする。
 シャルルは何を言われるのだろうと期待の眼差しを向けた。

「お前……いつ転移してたんじゃ?」
「ウ゛ッ!?」

「回復してくれてありがとう」的なことを想像していたら、言われたのは本人が一番気にしていたことであった。

「ほらマリア、あのとき――」
「あっ、そういえばそうじゃったの……」

 エリスに説明されて思い出したタマコ。
 急に申し訳なくなり謝ろうとするが、それはシャルルが止めた。

「いいんですぅ……わたしが悪いんですから……」

 どうやら事実を真摯に受け止めているようだった。
 彼女もこれを機に精進することだろうとタマコとエリスは思った。


 ・・・


 シャルルから話を聞くと、最初は男女とも同じ部屋で治療されていたそうだ。
 人数も多くなったので男女で部屋を分けたようだった。
 ちなみにランと魔王ジードは二人っきりの個室に移動したらしい。
 というわけで、今現在ラン以外の女性がここに集まっている。
 なので――

「……ぼー……」
「アリスちゃん? 大丈夫?」

 先ほどまでタローと戦っていたアリスと、タマコに敗北したアンブレラもいるわけである。
 正直気まずい。できれば部屋を移動したかったのだが部屋数も限られているそうで個室はランとジードが使っている場所が最後だそう。
 あとでランとジードは殴っておくとして、甘んじてこの状況は受け入れることにした。
 と、そのとき空中に投影されていた魔方陣から爆音が流れた。

「なんじゃ?」
「中継映像です。今行われている戦いが映されているのですが……」
「あ~……あなたの主様がやってくれたみたいよ~」

 タマコが見ると、そこには自分が手も足も出なかった魔王ハザードがブッ飛ばされているところが映っていた。
 その一撃でハザードは光に包まれて消えていく。
 紛れもなく、タローの勝利である。

「……おうじ、さすが」
「ぬおっ!?」

 主の活躍に見惚れていると、横からアリスが呟いた。
 気配がなかったので驚いたが、それ以上に気になった発言があった。

「おうじ?」

 タマコが訊くとアリスが頷いた。

「……アリスのおうじさま。だからアリス、おうじと"けっこん"する」
「は? テメェ何言ってんじゃコラ」
「マリア、子供相手に大人げないわよ?」

 聞き捨てならない言葉にタマコはキレかけるがエリスが静止した。
 ちなみにアンブレラは「まあアリスちゃんに旦那さんだなんて! 碌な奴じゃなかったら殺してやろうかしらあ!」と嬉しいんだか怒っているんだかよくわからないことを言っていた。
 ワーギャー騒いでいると、タローはムサシと接触した。
 そこでタマコは気付く。
 残りの参加者が、この二人だということに。

「泣いても笑ってもこれで最後ね~……」
「タロー様もムサシさんもファイトです!」
「……おうじ、がんばれ」
「アリスちゃんの惚れた男なら、きちっと見ないとね!」

 エリス、シャルル、アリス、アンブレラがそれぞれ口にした。
 他の場所でも、レオンやアキラが見守っていることだろう。

(勝つのじゃぞ、主殿!)

 タマコは胸の前で両手をギュッと握りしめて静かに祈った。
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