バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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魔剣争奪戦編

第114話 天王山

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 極限のラッシュを決めていたタロー。
 このまま反撃の隙を与えなければ間違いなく勝利は自分の手の中だった。

(さっさと終わりたいなー……)

 そろそろ本格的に飽きてきたこの戦い。さすがに100億のためとはいえど面倒なものは面倒なのであった。
 だからこそ、このトドメの一発を撃ち込んで終わらせたい。とタロー魔剣を握る手に力を籠めた。
 が、もちろんそう簡単に終わらせてくれる相手ではなかった。

「――最大解放」

 その言葉は静かだが力強く聞こえた。
 最大解放という言葉にタローは強く反応すると、攻撃の手を止めて距離を取る。
 次の瞬間、ムサシの身体は黄金に輝きだしたのであった。

「あぁクッソ……もうちょいだったのに」

 小さく舌打ちするタロー。
 転移者のみが持つ特有の能力である"スキル"を爆発的に進化させるのが最大解放だ。
 時間制限はあるものの、その間は戦闘力は倍以上に感じるほどで、まさしく奥の手という言葉に相応しいものであった。
 ましてやムサシの最大解放。下手に攻撃すれば一瞬で逆転される可能性もある。
 タローは身の危険をいち早く察知して退いたのであった。

 そんな奥の手を出してきたムサシを包む黄金の光は、やがて姿を変える。するとムサシの纏っていた黒衣が黄金へと色を変えた。
 刃に纏われていた魔力も金色となり、漆黒の刃から黄金の刃へと輝きを変化させたのだった。

「これが、僕の最大解放――天下無双テンカムソウだ」

 一見すると色が変わっただけだ。
 だが、タローは感じ取っていた。まるで喉元に刃を突き付けられているような強烈な殺気。
 ムサシの、本当の全力を。

「いっちょ前に金色になりやがって。
 大学デビューか? それともスーパーサ○ヤ人か?」

 挑発してはいるが、タローはこの間に魔力を溜めていた。
 全身にも付与し、万全の態勢を整える。
 そうしなければ勝てないと、タローの本能が告げていた。
 と、ムサシはタローへと右腕を向けると、魔剣を握る右手の人差し指のみをクイックイッと二回曲げた。

「御託はいいから、早く来なよ」

 ニヒルに笑むムサシに、タローは逆にイラっとする。
 完全に挑発をやり返されているが、どのみち始めなければ終わりもしない。

「……じゃあ遠慮なく!」

 強化された身体能力から繰り出される速度でムサシへと高速接近する。
 怠惰の魔剣ベルフェゴールを握る手に力を籠めると、ムサシの腹部へと振り翳した。
 手を抜いたわけではないが確かな必殺の威力を秘めた一撃だった……しかし。

「……は?」

 ムサシはそれを防御もしないまま受けた。
 しかも、全くと言っていいほどダメージをくらった様子がない。

「教えてあげるねタローくん。僕の最大解放の持続時間は10分間。
 そして能力は――」

 ムサシはおもむろに打刀の方の憤怒の魔剣サタンを天に向ける。

「無敵になることだよ」

 言葉と同時に刀は軽く振り下ろされた。
 タローは怠惰の魔剣ベルフェゴールを盾にして防御する。

「うおっ!?」

 だが、それを貫通するほどの凄まじい威力が怠惰の魔剣ベルフェゴールの上から伝わってきた。
 突然の劇的なパワーアップに狼狽するが、すぐに力を入れて対抗。
 足元の地面に足が埋まると、ようやく止まった。

「なるほどね……無敵、か……」

 防御力を貫通し、万物を斬る魔剣。
 タマコのトップスピードを超える速さ。
 そして、あらゆる攻撃を通さない最強の防御力。
 まさしくそれは『無敵』という言葉に相応しいものであった。

「チート主人公かよテメェは!」

 パワーアップするにしてもビフォーアフターが違いすぎる。
 思わずツッコミを入れながらも、タローは憤怒の魔剣サタンを力ずくで押し返した。
 ムサシはフッと小さく笑い少しだけ距離を取る。

「なんとでも言いなよ。さぁタローくん」

 ムサシは憤怒の魔剣サタンの切っ先をタローへと向けた。

「――天王山ファイナルラウンドだ」
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