バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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最終章・転生勇者編

第131話 まっすぐな正義

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「ついに来たな……タイタン!」

 冒険者が集まるという情報だけは知っていたが、実際に訪れるのは今回が初である。
 意図的に行かなかったわけではなく、ただただ他のことが忙しかったりして訪れる機会を逃していたのだ。
 だが今回はタイタンここに用がある。
 やる気を漲らせるユウシに、キララは首をかしげて訊いた。
「ところで何でタイタンなんですか?」

 あ、理解できてなかったのか。とユウシも他の仲間はジト目でキララを見つめた。

「え、なんですか!?」

 少し天然なところのあるキララに、頭を抱えながらセイバーが答えた。
「魔王タイラントの情報を集めるために決まっているだろう」
「魔王タイラントがここにいるんですか?」
「それはわからん。けれど他の魔王なら知っているかもしれないだろう?」

 と、その言葉でようやくキララは理解した。
「あ、他の魔王は使い魔だから! Sランク冒険者ならタイタンにいる可能性が高いってことですね!」

 正解に辿り着いたキララにセイバーも「うむ!」と頷いた。
 全員が理解したところでユウシがパン! と手を一回鳴らす。

「わかったところで、さっそく情報収集だ。まずはギルドの本部へ向かってみよう」

 4人もその言葉に了承すると、一行は中心部へと向かった。



 ***



 タイタンの中心街は屋台や八百屋、武器屋とたくさんの店が賑わっていた。
 冒険者が多いこの街にも、住んでいる人がいるのだということがよくわかる。

「地図によれば、この商店街を抜けた先にギルドの本部があるらしいが……」

 人が多くて中々前に進めない中で、ユウシは目を奪われ、その場で立ち尽くした。

(な――)

 視線の先にいるのは一人の女性。
 セミショートの美しい金髪に、コバルトブルーの瞳。
 服装は黒いジャージだが、顔の美しさが違和感を抱かせない。
 女性は売られている野菜を見ているため、こちらに気付いていなかった。
 しかしユウシがジッと視線を向けていたためか、チラリと一瞬だけ視線を向けた。
 本当に一瞬だけで、あとはどうでもよくなったのかこちらを見ることはなかった。

(な、なんて……なんて――)

 ユウシは震えるほど、その女性の美しさに魅了され――

(なんてプレッシャーを放つ女だぁああああ!)

 ――ていたわけではなかった。
 それは勇者としての、強者としての勘であった。
 その勘が、ユウシに大声で叫んでいた。

 ――コイツは危険である、と

 ゴクリと生唾を飲み込むユウシを、仲間たちは不審に思った。

「どうしたんですかユウシさん?」キララが代表して訊くと、ユウシは静かな声で命令した。

「キララ、君の"魔眼"であの女性を視てくれないか?」

 ユウシが指をさしたほうを見ると、キララたちもようやく金髪の美女を認識した。
 4人も「わ、奇麗……」と思わず感嘆の声を漏らす。
 少しだけ目を奪われたが、キララはハッと思い出し、急いで魔眼を発動した。

 キララの"魔眼"だが、もちろんただの目ではない。
 この世界には魔法ともスキルとも違う能力を持つ人間。地球で言うところの"超能力者"のような人間が存在する。
 魔眼はその内の一つで、人それぞれ能力も違う。透視をできるものや、メデューサのように見たものを石にしてしまう能力が確認されている。

 そしてキララの魔眼の能力は『ステータスの視認』である。

 通常、ステータスを知るためには計測用の水晶を使用しなければならない。
 そしてその上限は4桁(0~9999)までと決まっている。そのため10000を超える数値は『測定不能』と表示される。

 だが、キララの魔眼には上限は存在しない。
 たとえ10万だろうが100万だろうが1000万だろうが、ステータスの数値を見通すことができるのである。

 で、その魔眼で金髪美女の数値を見ると、キララはギョッと目を見開いた。

 ____________
 ステータス:
 攻撃力:8728
 防御力:6221
 速度 :8937
 魔力 :6056
 知力 :7003
 ____________


「な、なんか凄まじい数値なんですけど!? これ、ユウシさんくらいしか太刀打ちできないですよ……ッ!」

 あまりの数値にビビって震えだすキララ。
 見たままの数値を伝えるとキララ以外の女性3人も驚き、額から汗が滲みでた。

 対してユウシは、その数値に(やはり!)と納得した様子であった。
 そして、今度はその足で女性に近づいていった。
 その歩みに迷いはなく、女性の前にどうどう立ちふさがった。

「お前が魔王タイラントか?」

 ストレートな質問であった。
 仲間たちは止める間もなかったため、いったん様子見することに。
 ユウシの質問はおそらく正しい。あれだけの数値を叩き出せるのは魔王くらいなものだ。
 自分たちでは足手まといになるだろう。だが、いつでも戦闘に入れるよう準備はしておくこと。

 話しかけられた女性はゆっくりと顔をユウシのほうへと向けた。

「そうじゃが?」

 女性は意外とあっさり肯定してしまう。
 流石は魔王だと感心したいところではあるが、今はそれどころではない。

 魔王タイラントは使い魔ではない。
 ならばいつ、この場にいる人間を襲ってもおかしくない。
 ここで、勇者としての使命を果たす!

「おれと戦え、魔王!」

 ユウシの正義は誰よりも真っすぐであった。
 凛々しい姿に、キララ、マホ、セイバー、マーティが頬をほんのり赤くした。

 あのときだってそうだった。
 亜人として迫害されていたマーティを受け入れたときも。
 魔法学校で庶民だからと理由で不当な扱いを受けていたマホを助けたときも。
 魔眼を持っていたため人攫いに襲われたキララを救助したときも。
 村を襲うドラゴンにたった一人で立ち向かい、死にかけたセイバーを救ったときも。

 いつだってユウシは、逞しく立ち向かったのだ。
 そして、今回はいままでのどのときよりも、力強さを感じた。

 真剣な瞳で睨むユウシに、女性――いや、魔王タイラントは、その紅い唇をゆっくりと開いた。


「え……嫌だけど」

 普通に断られた。
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