バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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最終章・転生勇者編

第142話 兆し

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 そこには魔王ジードもランもいない。
 いるのは蒼雷迸らせる龍人が一人。
 対峙しただけでその恐ろしさがビリビリと伝わってきた。

(魔剣とスキル。魔王と人間の融合、か)

 決して相容れることの無い二つの力。
 それらが合体したとき、いったいどれほどの力が生み出されるのかは想像もできない。

(上等だ、来い!)

 ユウシは警戒心をMAXに上げる。とったのは左手の盾を前にした防御主体の構えだ。
 攻撃を一度受け実力を測り、隙があれば即座に斬る。
 ユウシの作戦はシンプルであった。

「「じゃあそろそろ、いくぞ!」」

 ランとジードの重なり合った声を発すると同時に、龍人は身を低くした。
 ユウシは僅かな挙動から攻撃を予測するために注意深く観察する。
 だが、それは無駄に終わることとなる。

 ――バチィッ!

 一瞬の雷鳴が轟いた瞬間に、龍人の姿は消えていたからだ。

(消えた!? どこへ――)

 ユウシは龍人を探そうと辺りを見回そうとする。
 しかし、それより早く身体が動いていた。
 ユウシの意思を無視し、身体が、魂が危険を感知したのだ。
 咄嗟に後ろを振り向き盾を力いっぱいに持ち、前へと突き出した。
 そのコンマ数秒後だ。
 雷を纏った拳が盾を襲ったのは。

「「――青龍雷電拳せいりゅうらいでんけん」」

 刹那の後、ユウシの体は後ろに吹っ飛んだ。

「なんてパワー、だ!」

 吹っ飛ばされつつバランスをとると、剣を地面に突き刺し減速した。
 ようやく静止に成功し、再び龍人の方へと向き直る。
 が、最初に目に飛び込んできたのは、蒼雷を纏った脚だ。

「「青龍雷轟脚せいりゅうらいごうきゃく!」」

 強烈な回し蹴りが顔面に直撃した。
 ユウシは大量の血を吐きながら地面に叩きつけられてしまった。

「ガハッ!!」

 防御に失敗しダメージをもろに受けてしまう。
 龍人はこの機を逃すわけも無く、さらに追い打ちをかけるため、身体を大きく捻り、雷を帯びた尻尾を振り下ろした。

「「青龍雷槌尾せいりゅうらいついび!」」

 強力な尾が迫る中、ユウシは激痛に耐えながら近づく尾へと盾を向けた。

「勇者の盾よ、解放せよッ!」

 そのとき、盾から赤い光が発生した。
 同時に大火力の爆炎が巻き起こり、尾とぶつかり合った。

「「ぬわッ!?」」
「ぐっ!」

 衝撃波で互いに飛ばされてしまい距離ができる。
 しかし、それは龍人にとっては好ましくない状況である。ユウシにとっては回復のチャンスになってしまうのだから。
 だから、ここで手を緩めることはしない。

(ラン、まだ攻撃するぞ)
(りょーかいッス!)

 龍人は蒼雷を角にチャージし、それを喉へと移動させる。
 その技は、かつてタローにすら傷をつけた一撃――

青龍神王牙せいりゅうじんおうが!」

 龍の牙を彷彿とさせる大火力電磁砲は爆風を容易に貫くと、ユウシの身を焼いた。

「うわぁああああ!!!」

 雷電が身体を駆け抜ける。
 画鋲を大量に体内に入れられたような痛み、全身の血が沸騰するような苦しみ、心臓をハンマーで何度も殴られるような衝撃。
 言葉にしたらキリがないほどの痛みが、ユウシを襲った。

(まずい、意識が……)

 朦朧とする中、ユウシは限界を迎えつつあった。
 けれど、決まってそういうときに、それは決まって起こるのだ。

<――レベルアップ・成功>

 脳内に声が響いた。

 それは、"進化の兆し"である
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