バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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最終章・転生勇者編

第179話 一人と一柱と一振り

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 タロー家は、今日もいつも通りである。
 家主のタローはソファで寛ぎ。
 使い魔のタマコはテーブルで紅茶を飲み。
 魔剣のプーは割烹着を着てリビングのお掃除をしていた。

「…………zzZ」
「………………」
「(^・ω・^)♪」
(訳:じょ~ねえ~つの、あ~かい~ば~ら~♪)

 いたっていつも通りである。
 ……一柱を除いて。

(ぅおおおおおおいいぃぃッッ! なんでいつも通り寝てるんじゃ!?)

 内心あらぶっていた。
 一見落ち着いて紅茶を飲んでいるように見えるが、よく見ればカップを持つ手は震えている。
 もちろん数日前に両親の墓参りの際に、勢いでキスしてしまったことが原因であった。
 あれ以来ろくに目を合わせられない日々が続いている。
 自分でしてしまったことだし、自分で何とかしなければならない……が、しかし。

(キスしてなんにも言わない何てことあるのか!? 返事すらしないのは違くないのか?
 いや……タローなら仕方ないのか? いやいやいやいや、それでも!)

 324歳、乙女心は難しい。
「う~~~~ん……」と唸り声をあげながら頭を抱えていると、突然ドアが勢いよく開けられた。

「「「タローさんッッ!!! 失礼します!」」」

 なだれ込むように入って来たのは3人の男たち。
 バタンッ! ドタドタッ! という大きな音にタローも目を開けた。
 気怠い体を起こし玄関まで行くと、そこに居たのはAランクパーティー【トップオブ・ザ・ワールド】。いや、今は【タロー一味】と名を変えたパーティー。
 ワン、ツウ、スリイであった。

「…………だれだっけ?」

 そして当然ながらタローは憶えていないのであった。

「ほら俺たちですよ! 一緒に洞窟で戦った!」
「…………?」
「命の危機を救ってもらった!」
「…………?」
「……122話から124話で登場しました」
「あぁお前らか」
「それで思い出すんですか!?」
「で、どしたん?」

 いいリアクションをしていても関係なく用件を訊くのがタローの良い所であり、悪い所でもある。
 コホンと一つ息をつくと、ワンたちは口を開いた。

「実は、謎のダンジョン迷宮が出現したらしいです!」
「一緒に攻略しに行きませんか?」
「財宝があるかもしれませんよ?」
「ざいほう……」

 男は財宝という言葉に弱い。
 莫大な金銭に心が揺らぐ中、タローは一つの質問を投げかけた。

「場所は?」
「ここから北に1万kmです!」
「めんどくさ、帰れ」

 そう言ってバタン! と扉を閉めた。
 流石はタロー。金銭欲より怠慢が勝つ男である。
 溜息をつきながらリビングに戻ると、テーブルに頭を突っ伏すタマコがいた。

「どしたの?」
「……べつに」
「?」

 ようやくタマコの様子がおかしいことに気付くが、原因まではわからない様子である。
 首をひねっていると、またもや玄関の扉が開かれた。

「やぁタローくん!」

 ムサシがいた。
 用件を訊こうとするが、その前に切り出した。

「今度は転生者も交えて魔剣争奪戦みたいなバトル大会しようぜ!」
「やらねぇよ、帰れ」

 そう言ってバタン! と扉を閉めた。
 溜息をつきながらリビングに戻る。

「なんなんだよ今日はゾロゾロと、最終回かよ。
 ……あ、次で最終回か」
「そーじゃのー最終回じゃのー」
「……なんだよ?」
「べつにー? 最終回前に言うことがないのかなー……とな?」
「?」

 まるで見当がつかないタローである。
 トンボくらい首をひねっていると、またしても玄関から音がした。

「タロー大変だ!」

 そこに居たのはユウシだった。
 何やら慌てている様子である。

「なんでどいつもこいつもインターホン鳴らさないんだよ。
 もうドアがガッタガタだよ。蝶番ちょうつがいがバカになってんじゃねーか」

 苦言を呈すが全く聞いている様子はない。

「この世界……一夫多妻制じゃなかったんだ! どうしよう!?」

「異世界が全部ハーレム作れると思うなよバカ勇者が」

 そう言ってバタン! と扉を閉めた。
 溜息をつきながらリビングに戻る。

「まぁ幸せになって欲しいね、アイツにも」
「そして私にもな」
「……幸せじゃないの?」
「いや、幸せじゃないっていうか……あのツッコミづらいのやめてくれない?」
「?」

 やっぱり見当がつかないタローである。
 もはや一回転しそうなくらい首をひねっていると、またしても玄関から音がした。

「おいタロー! 大変だ!」

 ドラムスがいた。
 顔中汗だらけである。

「大変なのはドアのほうなんだけどな」
「ドアなんてどうでもいいわ! それよりお前、責任取ってどうにかしろ!」
「は? なにがだよ?」

 まったく心当たりがない。
 が、この流れはきっとどうでもいい内容なのだろう。

「お前がこの前開けた次元の穴から、異世界の生物が現れたんだ!
 いま各地で暴れているらしいから、討伐しに行ってこい!」
「ホントに重要な内容だったッ!?」

 まさかの最終回直前で侵略者である。
 飛び出そうなくらいに目ん玉ひん剥かせると、急いで支度をする。

「いくぞプー」
「(`・ω・´)」
(訳:ガッテンだ!)

 プーは割烹着を脱ぐと、主の肩に跳び乗った。
 そして、もう一柱――

「タマコ、準備いいか?」
「うむ、もちろんじゃ!」

 不敵に笑むと、タローの後ろをついていった。
 最強の冒険者、至高の魔王、強大な魔剣。
 その背中に、ドラムスは頼もしさを感じずにはいられなかった。
 きっと彼らなら、どんな災厄も解決してくれるだろう。

「よし、頼んだぞ!」

「うぃ~」
「頼まれてやろう」
「(^・ω・^)」
(訳:お任せあれ!)

 一人と一柱と一振りは、異世界からの侵略者を討伐しに向かった。
 その後、少々手こずりはしたが、きっちり勝利して帰ってくるのは、また別の話だ。

 この物語はあくまでも――
 バイトで冒険者を始めたら最強だった、というお話である。


「あ、そうだタマコ、結婚するか?」
「こんな終わり際でッ!?」
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