降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

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第四章 球技大会

19.第四ミッションと種目決め



ブルー『じゃあ、二巻の発売はお盆期間中になりそうなんだな』

 夕食や風呂を済ませ、今は午後九時を少し回ったところ。

 バックミュージックに流れているのは、美しいピアノの旋律と、フレーバーたっぷりなメロディに乗せて唱われる歌詞に込められた切実な願いが心に刺さる、Billy Joelの『Honestyオネスティ』。
 いつ聞いても、素直な感動を呼び起こされる名曲だ。

ねーじゅ『うん。それと新情報。喜ばしい事に、「変調愛テロル」一巻が十万部を突破しそうな勢いだというのを記念して、二巻の発売日には、純風堂書店の池袋店で、サイン会が開催される事が決定しました!』
ブルー『おおー! それはファンとしては凄く嬉しいし、絶対外す事が出来ないイベントだ。ぜひ参加させてもらうよ』
ねーじゅ『ありがとう。君はねーじゅが、私、雪代怜愛だと知ってからも、変わらずに熱心なファンでいてくれるね』
ブルー『ねーじゅさんが誰であろうと作品の持つ輝きが損なわれる訳じゃないからな』
ねーじゅ『じゃあ君は、仮にねーじゅの中の人が姫歌とかだったりしても、向ける熱意は変わらなかったと思う?』
ブルー『それはどうだろう? 白鳥は人間的には嫌いじゃないけど、ねーじゅさんは君だったからよかったというか、君以外のねーじゅさんは考えられないというか⋯⋯というか、やめてくれよ、そんな意地悪な問いかけ』
ねーじゅ『ふふ。そうだね。こんな仮定には意味がない。君と私は、出会うべくして出会ったんだから』
ブルー『運命的にか。確かにそうかもな』
ねーじゅ『さて、ではいい雰囲気で締められたところで、早速始めます。第四回「緋本蒼介成り上がりリア充化プロジェクト」会議!』

 雪代が音頭を取り、『ひそリプ』と略されている(雪代だけがそう呼んでいる)プロジェクトの会議が始まった。

ねーじゅ『次の第四ミッションのタイトルはズバリ! 「球技大会で優勝して皆にいいところを見せよう」!』

ブルー『球技大会か。確か七月の頭に開催されるんだっけ?』
ねーじゅ『そう。男子はバスケとフットサル。女子はバレーとテニス。形式は全学年クラス対抗のトーナメント戦。悠果姉さんから仕入れた情報だから間違いないよ』
ブルー『トーナメント戦なら、一度でも負ければそこで敗退だから手は抜けないし緊張感があるな』
ねーじゅ『君は確かバスケの経験者だって前に言っていたよね』
ブルー『ああ。小五から中三の初めの頃までバスケ部にいた。そこで事情があって退部したけど、ボールにはずっと触れていたし、高校に入ってからも、一人でやる事が多いけど、一応ストリートバスケっぽい事ならそこそこの頻度でやってる』
ねーじゅ『それじゃあ、近い内にホームルームで、出場する種目とメンバー編成を決めるための話し合いがあるはずだから、その時は真っ先にバスケに立候補してね』
ブルー『分かった。未経験のフットサルに回されでもしたら、目も当てられないからな』
ねーじゅ『今回も前回の林間学校の時みたいな高い成果を上げられるといいね』
ブルー『バスケなら結構自信があるからな。チームプレイをするのは久しぶりだから、慣れるまで少し掛かるかもしれないけれど、個人技ならバスケ部相手でも十分に通用すると思う』
ねーじゅ『君がそこまで言うって事は相当だね。よし! バスケで華麗なプレイを皆に見せて、勝利の立役者としてヒーローになっちゃおう!』
ブルー『優勝するには他のチームメイトの力と運も必要になるだろうけど、今回も何とか頑張ってみるか。そして、ねーじゅさんの「変調愛テロル」一巻十万部突破記念に花を添えさせてもらうよ』



   §


 今日の六限目は、その時間を丸々使ってのホームルーム。
 来月七月の頭に開催される球技大会についての話し合いが行われる。

「えー、それでは男子のバスケから出場者を決めていきたいと思いまーす」

 皆の纏め役、クラス委員長でショートポニーの眼鏡っ娘秋里あきさとさんが、教壇に立って告げた。

「当然俺は出るぜ!」

 バスケ部の朝倉が、いつものでかい声で立候補する。

早風はやかぜ、お前もだよな!」
「落ち着け、大翔。そう急かさなくても出るから。バスケ部なら断る訳にはいかないしな」

 早風はやかぜという名の落ち着いた雰囲気の彼も、どうやらバスケ部らしい。
 すぐに暴走してしまう朝倉の制御役として苦労していそうだ。
 共感出来る。彼となら酒ならぬ美味い珈琲が飲めそうだな。

「じゃあ、二人はバスケで決定って事で。このクラスでバスケ部は彼らだけだったと思うけど、他に誰か立候補する人はいませんかー?」

 背後から、雪代の鋭い視線を感じる。分かってるよ。逃げやしないって。

 俺は声は出さずに、すっと手を挙げた。

「お? えーっと、ひ、緋崎君はバスケ経験者な感じ?」

 つっかえながら尋ねられた。
 惜しい。緋という一文字だけでも合っていた事を喜ぶとしよう。
 まぁ俺の認知度なんてそんなものだ。贅沢を言ってはいけない。

「一応」

 一言。端的にしか返せなかった。皆の視線が痛い。

「ふーん。じゃあ緋崎君もバスケでいっか。異論はないよね? どうせ他に立候補する人いないんだし」

 名前の誤りとともに、ぞんざいな扱いでバスケに放り込まれた。
 目的は達成したので雪代も文句はないだろうが、何か釈然としない。

 その後の話し合いでは、他に立候補者が現れなかったため、じゃんけんで決められる事になった。

 結果、男子はバスケに八名が振り分けられた。
残りの八名がフットサルだ。

 女子の方では、雪代は他薦でバレーに入れられていた。
 彼女は身長が平均よりかなり高いモデル体型なので、向いているだろう。

 バスケで5on5の試合に出るのは久しぶりだ。
 いつもは仁さんとの1on1形式でしかやれないからな。
 球技大会までは、体育の授業が全部出る種目の練習に充てられるので、そこで勘を取り戻すしかない。

 そして、密かに練習していた”あれ”も、状況によっては試合で実践出来るように調整しておかないと──。

 ちらりと雪代の方へ顔を向けると、彼女はこちらの視線に気付き、ぱちりと目配せを返してくれた。

 俺には勝利の女神が味方についている。何も心配は要らないな。

 その優しげな心強さに、柔らかい温もりのあるカシミヤの毛布で包まれたような安心感を得た。


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