25 / 101
第四章 球技大会
23.球技大会と秘密兵器
開会式では校長先生や生徒代表による挨拶、諸注意、選手宣誓等がなされた。
その後、それぞれの種目ごとに体育館とグラウンド、テニスコートに分かれて、全学年クラス対抗のトーナメント戦が始まった。
俺達バスケ組の一試合目の対戦相手は、同じ二年生同士の二年D組だ。
練習試合と同じように、スタメン五人で相手チームとコート中央で向かい合って整列し、挨拶を交わして、審判のトスしたジャンプボールで試合が始まる。
それを制したのは、朝倉だった。
タップされボールが味方に渡り、パスを繋いで攻め入ると、ゴール下で早風が巧みなフェイクで相手を引っ掛け、ジャンプシュートを放った。
放たれたボールがバックボードに当たってその下のリングを通過し、お手本のようなバンクシュートが決まる。
「ナイッシュー!」
「グッショ!」
幸先よく先制点を奪ったナイスプレーに、味方からの声援が飛ぶ。
この後も俺達のチームは、相手チームを圧倒し、終了のホイッスルが鳴った時には、ダブルスコア以上の点差が付いていた。
§
二試合目、三試合目も危なげなく勝ち進み、昼休憩を挟んで、その後の準決勝となる四試合目でも、接戦ではあったが、辛うじて勝利を収める事が出来た。
そして、ついに決勝戦の舞台。
相手となるのは、事前に予想していた通り、バスケ部キャプテンが率いる3年E組のチームだった。
雪代がエースとしてウイングスパイカーを務めていたバレーのチームは、彼女の活躍があったものの、惜しくも準決勝で敗退してしまったらしく、俺達の応援にきてくれている。
それ以外にも、既に敗退したクラスの生徒達が集まり、キャットウォークまで観客で一杯になっていた。
「2のBファイトー!」
「キャプテン、準決勝で散った俺達の無念を晴らしてくださーい!」
「どっちも頑張れー!」
観客達からの声援を受けつつ、試合前の挨拶を終え、ジャンプボールで決勝戦の幕が上がった。
§
試合は間にハーフタイムを挟んで後半戦に入り、一進一退の攻防が続いていた。
だが、この重要な局面にきて、度重なる連戦で体力が尽きかけているのか、未経験者二人の動きが鈍り始めた。
そのディフェンスの隙を突かれ、相手チームに連続でシュートを決められてしまい、十点の点差をつけられてしまう。
──このままずるずると点数を離されてしまうのはまずい。ここは狙ってみるか。
「パスをくれ!」
スリーポイントラインぎりぎりに立って、声を上げて味方に指示を出す。
すぐにパスが回ってきて、フリーの状態でそれを受け取った俺は、真上にジャンプし、手首のスナップを効かせ、指先でボールにバックスピンを掛け、ゴールに向かって山なりに放った。
綺麗な放物線が宙に描かれ、ボールはリングに掠りもせずにネットを揺らした。
「緋本君、ナイッシュー!」
クラスメイト達からの声援が届く中、雪代の一際高い凛とした声が耳朶に響く。
試合の熱にあてられて高揚しているのか、自分の普段の誰にも媚びない孤高のスタイルを忘れて、大きく声を張り上げている。
──けれど、まだスリー一本じゃ弱い。仕方ない。試合で成功させられるかどうかは半々だけど、もしチャンスがきたら、流れを変えるためにも、伸るか反るか、一つあれに挑戦してみるか。
俺がそんな風に算段を立てていると、スリーで点差を縮められた相手チームが、それを取り戻そうと、勢い込んでこちらの陣地に攻め込んできた。
相手チームのバスケ部主力メンバーが、味方ディフェンスを引き付けつつ、ノールックでゴールに近いローポストにいるキャプテンへとパスを出した。
──ここだ!
だが、そのパスを予測していた俺は、素早いフットワークでパスカットした。
前を向くと、相手チームは全員が攻撃に参加していたため、守るべきコートは無人。
──いける! あれをやるなら今しかない!
意を決し、全力で相手コートのゴールへ向けて、空気を切り裂くようにして疾走する。
そして、十分な助走をつけてトップスピードに乗ったまま、フリースローラインからジャンプした。
エアウォーク──。
宙を歩くようにして進み、その勢いのままワンハンドでボールを強烈にリングに叩き込む。
その瞬間、体育館はしんと静まり返ったが、すぐに爆発したように観客が一気に沸き立った。
「凄ぇ! ダンクだ!」
「今フリースローラインから飛ばなかったか!?」
「あいつ身長百八十ないだろ? それでダンク──しかもあんなところからなんて、どんなバネしてんだよ!」
「ヤバい! あの人格好良過ぎる! 顔もいいし、ファンになっちゃいそう」
「でもバスケ部の二年にあんなやついたか?」
「バスケ部じゃねぇよ! なのにスタメンの俺より上手いなんて反則だろ!」
ジョーダンダンクやレーンアップダンクとも呼ばれるそれは、長い滞空時間を必要とする、超人的な跳躍力と高い技術を必要とするスーパープレイ──。
生まれつき身体的能力のポテンシャルが異常に高かった俺が、トレーニングによってそれを伸ばし、最近になって漸く実現が可能になった技だ。
「きゃー! 緋本君、すごーい!」
雪代も喜んでくれているようで何より。
でも君は、自分の影響力ってやつをもう少し考えた方がいい。
『雪氷の美姫』の氷が完全に溶け切っているぞ。
とまれ、最高の魅せプレイでもあるレーンアップダンクを決める事が出来たおかげで、試合の流れは一気にこちら側に傾いた。
その後どういう結果になったかは、語らずとも想像に難くないだろう。
§
「緋本だっけ? お前のおかげで自分のスキルももまだまだだって気付かされたよ。でも、これからもっとトレーニングを積んで、いつかお前に追い付いて見せる。ただ、俺は来年の球技大会がある頃にはもう卒業してるから、リベンジの機会がないのだけが残念だけどな。なぁ、本当にバスケ部に入る気はないのか?」
何とか激闘を制す事が出来た決勝戦の後に、対戦したバスケ部のキャプテンに声を掛けられた。
「はい。俺は協調性がないんで、ストリートで自由にやる方が向いてますから」
「そうか。まぁどういうスタイルでやるかはお前が決める事だからな」
そう言葉を交わした後、バスケ部キャプテンは、「じゃあな。いい試合だったよ」と悔しがるチームメイトの元へと戻っていった。
閉会式では、各種目で優勝したチームには、賞状が授与され、総合優勝したクラスには、賞状だけでなく、トロフィーと、それに加えて景品で学食のデザート券が進呈された。
式後は、着替えて教室に戻り、俺は勝利の立役者として、クラスの皆に熱烈な称賛を浴びて迎えられた。
──冴えない根暗な陰キャぼっちとして、遠ざけられたり蔑まれたりしてきた訳だけど、こうして自分の努力が形になって報われるのは、存外悪くないもんだな──。
そんな風に思えた、いつか見たあの日の幻想が現実になったかのような一時だった。
あなたにおすすめの小説
絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。
孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。
その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※特別編9が完結しました!(2026.3.6)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2026.1.21)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。