降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

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第四章 球技大会

23.球技大会と秘密兵器



 開会式では校長先生や生徒代表による挨拶、諸注意、選手宣誓等がなされた。

 その後、それぞれの種目ごとに体育館とグラウンド、テニスコートに分かれて、全学年クラス対抗のトーナメント戦が始まった。

 俺達バスケ組の一試合目の対戦相手は、同じ二年生同士の二年D組だ。

 練習試合と同じように、スタメン五人で相手チームとコート中央で向かい合って整列し、挨拶を交わして、審判のトスしたジャンプボールで試合が始まる。

 それを制したのは、朝倉だった。

 タップされボールが味方に渡り、パスを繋いで攻め入ると、ゴール下で早風が巧みなフェイクで相手を引っ掛け、ジャンプシュートを放った。

 放たれたボールがバックボードに当たってその下のリングを通過し、お手本のようなバンクシュートが決まる。

「ナイッシュー!」
「グッショ!」

 幸先よく先制点を奪ったナイスプレーに、味方からの声援が飛ぶ。

 この後も俺達のチームは、相手チームを圧倒し、終了のホイッスルが鳴った時には、ダブルスコア以上の点差が付いていた。


   §


 二試合目、三試合目も危なげなく勝ち進み、昼休憩を挟んで、その後の準決勝となる四試合目でも、接戦ではあったが、辛うじて勝利を収める事が出来た。

 そして、ついに決勝戦の舞台。

 相手となるのは、事前に予想していた通り、バスケ部キャプテンが率いる3年E組のチームだった。

 雪代がエースとしてウイングスパイカーを務めていたバレーのチームは、彼女の活躍があったものの、惜しくも準決勝で敗退してしまったらしく、俺達の応援にきてくれている。
 それ以外にも、既に敗退したクラスの生徒達が集まり、キャットウォークまで観客で一杯になっていた。

「2のBファイトー!」
「キャプテン、準決勝で散った俺達の無念を晴らしてくださーい!」
「どっちも頑張れー!」


 観客達からの声援を受けつつ、試合前の挨拶を終え、ジャンプボールで決勝戦の幕が上がった。


   §


 試合は間にハーフタイムを挟んで後半戦に入り、一進一退の攻防が続いていた。

 だが、この重要な局面にきて、度重なる連戦で体力が尽きかけているのか、未経験者二人の動きが鈍り始めた。

 そのディフェンスの隙を突かれ、相手チームに連続でシュートを決められてしまい、十点の点差をつけられてしまう。

 ──このままずるずると点数を離されてしまうのはまずい。ここは狙ってみるか。

「パスをくれ!」

 スリーポイントラインぎりぎりに立って、声を上げて味方に指示を出す。

 すぐにパスが回ってきて、フリーの状態でそれを受け取った俺は、真上にジャンプし、手首のスナップを効かせ、指先でボールにバックスピンを掛け、ゴールに向かって山なりに放った。

 綺麗な放物線が宙に描かれ、ボールはリングに掠りもせずにネットを揺らした。

「緋本君、ナイッシュー!」

 クラスメイト達からの声援が届く中、雪代の一際高い凛とした声が耳朶に響く。
 試合の熱にあてられて高揚しているのか、自分の普段の誰にも媚びない孤高のスタイルを忘れて、大きく声を張り上げている。

 ──けれど、まだスリー一本じゃ弱い。仕方ない。試合で成功させられるかどうかは半々だけど、もしチャンスがきたら、流れを変えるためにも、伸るか反るか、一つあれに挑戦してみるか。

 俺がそんな風に算段を立てていると、スリーで点差を縮められた相手チームが、それを取り戻そうと、勢い込んでこちらの陣地に攻め込んできた。

 相手チームのバスケ部主力メンバーが、味方ディフェンスを引き付けつつ、ノールックでゴールに近いローポストにいるキャプテンへとパスを出した。

 ──ここだ!

 だが、そのパスを予測していた俺は、素早いフットワークでパスカットした。

 前を向くと、相手チームは全員が攻撃に参加していたため、守るべきコートは無人。

 ──いける! あれをやるなら今しかない!

 意を決し、全力で相手コートのゴールへ向けて、空気を切り裂くようにして疾走する。

 そして、十分な助走をつけてトップスピードに乗ったまま、フリースローラインからジャンプした。

 エアウォーク──。

 宙を歩くようにして進み、その勢いのままワンハンドでボールを強烈にリングに叩き込む。

 その瞬間、体育館はしんと静まり返ったが、すぐに爆発したように観客が一気に沸き立った。

「凄ぇ! ダンクだ!」
「今フリースローラインから飛ばなかったか!?」
「あいつ身長百八十ないだろ? それでダンク──しかもあんなところからなんて、どんなバネしてんだよ!」
「ヤバい! あの人格好良過ぎる! 顔もいいし、ファンになっちゃいそう」
「でもバスケ部の二年にあんなやついたか?」
「バスケ部じゃねぇよ! なのにスタメンの俺より上手いなんて反則だろ!」

 ジョーダンダンクやレーンアップダンクとも呼ばれるそれは、長い滞空時間を必要とする、超人的な跳躍力と高い技術を必要とするスーパープレイ──。

 生まれつき身体的能力のポテンシャルが異常に高かった俺が、トレーニングによってそれを伸ばし、最近になって漸く実現が可能になった技だ。

「きゃー! 緋本君、すごーい!」

 雪代も喜んでくれているようで何より。
 でも君は、自分の影響力ってやつをもう少し考えた方がいい。
 『雪氷の美姫』の氷が完全に溶け切っているぞ。

 とまれ、最高の魅せプレイでもあるレーンアップダンクを決める事が出来たおかげで、試合の流れは一気にこちら側に傾いた。

 その後どういう結果になったかは、語らずとも想像に難くないだろう。


   §


「緋本だっけ? お前のおかげで自分のスキルももまだまだだって気付かされたよ。でも、これからもっとトレーニングを積んで、いつかお前に追い付いて見せる。ただ、俺は来年の球技大会がある頃にはもう卒業してるから、リベンジの機会がないのだけが残念だけどな。なぁ、本当にバスケ部に入る気はないのか?」

 何とか激闘を制す事が出来た決勝戦の後に、対戦したバスケ部のキャプテンに声を掛けられた。
 
「はい。俺は協調性がないんで、ストリートで自由にやる方が向いてますから」
「そうか。まぁどういうスタイルでやるかはお前が決める事だからな」

 そう言葉を交わした後、バスケ部キャプテンは、「じゃあな。いい試合だったよ」と悔しがるチームメイトの元へと戻っていった。


 閉会式では、各種目で優勝したチームには、賞状が授与され、総合優勝したクラスには、賞状だけでなく、トロフィーと、それに加えて景品で学食のデザート券が進呈された。

 式後は、着替えて教室に戻り、俺は勝利の立役者として、クラスの皆に熱烈な称賛を浴びて迎えられた。

 ──冴えない根暗な陰キャぼっちとして、遠ざけられたり蔑まれたりしてきた訳だけど、こうして自分の努力が形になって報われるのは、存外悪くないもんだな──。

 そんな風に思えた、いつか見たあの日の幻想が現実になったかのような一時だった。


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