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第十章 修学旅行
74.偶然の再会
次に俺達が訪れたのは、八坂神社。
八坂神社は、約1350年の歴史を持つ、全国にある八坂神社や素戔嗚尊を祭神とする約2300の神社の総本社だ。
厄除け、縁結び等のご利益があり、『祇園祭』が行われる事でも有名だな。
着物で訪れた事で、神社の雰囲気と歴史とが一層深まった気がする。
ここにくる途中の八坂通りから、祇園の街並みと八坂の塔を一緒に収めた写真は、人気No.1と言われるだけあって、『THE・京都』な風情あるものだった。
八坂神社には、国宝『祇園造』の本殿。『祇園祭』で知られる舞殿、石鳥居、南楼門等の重要文化財。美の神を祀る美御前社。縁結びの大国主社。本殿下の龍穴等、歴史的建造物とパワースポットが満載。
京都のシンボルでもある八坂の塔からの眺めは絶景で、京都の伝統的な街並みを一望する事が出来た。
帰りには、社務所で、家族の分も合わせてお守りを買った。
建物の美しさや神秘的な雰囲気を堪能しつつ、歴史に思いを馳せた有意義な時間だった。
その後は、近くにあった茶屋で、冬日向の中、京都らしい風情を味わいつつ、名物の田楽豆腐を堪能する等した。
§
夕暮れ時になり、京都駅の改札を出てすぐ目の前に聳え立つ、最後の観光スポットになる京都タワーへとやってきた。
京都のシンボル・京都タワーは、京都の活性化を導く”まちなかの灯台”をイメージして造られた。
高さは131メートルで、滑らかな曲線を描く純白の巨塔は、京都市街で一番高い建物だ。
鉄骨を使わず円筒形の鋼板を繋ぎ合わせた『モノコック構造』で建造されており、ビルの屋上に建っているのが特徴的で、京都駅と地下通路で繋がっていて、大浴場やレストランもあるそうだ。
地上百メートルの展望室に上がると、京都の街並みを三百六十度見渡せた。
「きれーい!」
「すげー眺めだな!」
白鳥や朝倉等が、真っ先にその眺望に感嘆の声を上げた。
空が紺青に染まる中、古都の落ち着いた街並みや清水寺や東寺といった歴史的建造物がその深い色合いと対照をなし、幻想的な光景を織り成す。
他、比叡山等の名峰に囲まれた山紫水明の優雅な大自然の山々を、大パノラマで見る事も出来た。
そうして、展望室からの眺めを堪能していると、そこに新たにやってきた観光客と思われる見知った水色のセーラー服の集団がいた。
その集団の中から、一人の少女が輪の中から抜けて、こちらに近付いてきた。
「ね。やっぱり、また、会えた」
特徴的な、その澄み切った透明感のある、それでいて少し掠れたハスキーな声で、短く区切りながら語り掛ける。
「茅野⋯⋯君も京都にきていたんだな」
それは、修学旅行一日目に、夜の大阪で出会った、あの銀髪蒼眼の不思議の国からやってきたような彼女──茅野アリスだった。
「うん。私と、蒼介は、運命の糸で、繋がっている、から」
「ちょっと、蒼介君、誰この美少女! 君の事、下の名前で呼んでるし、しかも、呼び捨てにしちゃってるし!」
さっきまで来栖に捕まっていたはずの怜愛が、目敏く察知して、文句を付けるように間に割って入ってきた。
「貴女、誰?」
茅野が、きょとんと首を傾げる。
「私は蒼介君の──大切な友人だよ。そう言う貴女こそ⋯⋯ん? ち、ちょっと待って!」
怜愛が急に態度を一変させた。
一体どうしたというんだろう? 彼女がここまで動揺を見せる姿は珍しい──否、初めての事かもしれない。
「何?」
「あ、貴女、もしかして、ネットシンガーの、Aliceじゃない!?」
「多分、そう」
コクリと首を縦に振る。
「怜愛、彼女の事知ってるみたいだけど、そんなに有名なのか?」
「有名も何も、今ネットで一番勢いのある歌い手だよ。主にWetubeで顔出しでオリジナルの楽曲を歌っている歌姫。未だ配信デビューして間もないから、知名度はそこまで高くないけど、その異次元めいたビジュアルの良さと歌唱力で、人気急上昇中。チャンネル登録者数も一気に十万人を突破して、まだまだ伸びる事が予想するまでもなく分かり切っている状況。既に一部の熱狂的なファンを獲得していて、その人達の間で付いた二つ名は、『蒼銀の歌姫』。今度蒼介君にも紹介しようと思っていたんだけど、まさか、こんなところで本人に会えるなんて」
怜愛は、興奮を隠し切れない様子のまま、早口で一気に語り終えた。
「へぇ、君、そんなに凄い歌い手だったんだな」
可憐さとセクシーさを両方内包している魅力的な声だと思っていたら、その道の人だったらしい。納得だ。
「そうなの?」
と他人事のように。
「自覚してないのか?」
「そういうの、全部、エリカに、任せてる、から」
「エリカって?」
「妹。可愛い」
「ちょっと、蒼介君! 二人でばっかり話してないで、私にも彼女の事紹介してよ!」
彼女のファンらしい怜愛が、その真っ白な頬を膨らませながら割って入ってきた。
「あぁ悪い。茅野、彼女の名前は、雪代怜愛。俺と同じ都内にある青黎高校に通う友人だ」
「アリス」
「え?」
「そう、呼んで」
「否、君とは未だ出会って間もないし⋯⋯」
「呼んで」
俺に拒否権はないらしい。なんで俺の周りには、こう強情な女の子が多いんだ。
「はぁ⋯⋯分かったよ、アリス。これでいいだろ?」
「うん」
茅野──アリスが、頷きながらはにかむ。
「それで、怜愛。彼女の名前は、もう言わなくても分かってるだろうけど、茅野アリス。こちらも都内にある聖愛女子高校に通ってる。一昨日、夜の大阪の街中で、彼女が道に迷ってたところを俺がちょっとだけ力を貸してやったんだ」
「そうなんだ。年齢は? 私達と同じ、二年生?」
「どうなんだ、アリス?」
「うん、そう」
「だそうだ」
「ねぇねぇ、じゃあ、私もアリスって呼んでいい?」
「うん。友達が、増えた。嬉しい」
「私も。ねぇアリスって、歌詞は全部自分で書いてるんだよね?」
「うん、そう」
「物書きとしては、どうしても言葉の方が気になっちゃってね。共感出来るし、素敵な表現が多いから。でも、勿論、綺麗なメロディラインとかも好きだよ。曲は誰が作ってるの?」
「エリカ。可愛い」
アリスは妹推しと見える。分かるぞ。同じ可愛い妹を持つ者として、彼女とは互いにいい理解者になれそうだ。
「りっちゃん、そろそろいくよー」
そこに、聖愛の集団の中から呼び掛けてくる声が届いてきた。
アリスは友人からは、その愛称で呼ばれているらしい。
「いかないと」
「ああ、また暇な時にでも、Rainでメッセージを送るよ。使い方は分かるか?」
「覚える。エリカに、教わって」
「アリス、私ともまたゆっくり話そうね」
「うん。じゃあ、また。蒼介、怜愛」
「ああ、またな」
「またね、アリス」
アリスは俺達に別れを告げると、彼女を待つ友人の元へと戻っていった。
「なんだか、不思議な印象の子だったね。私、配信で歌ってる姿しか見た事なかったから、あんな子だとは思ってなかった。うん。でも、幻想的なイメージぴったりかも。どこか浮世離れしていて」
「ああ。俺は彼女と接してみて、『不思議の国のアリス』を思い浮かべたよ」
「確かに。名前も、迷ってたっていうのも符号してるね。じゃあ、そのアリスに道を教えた蒼介君は、チェシャ猫かな?」
「俺はあんな風に、いつもニヤニヤしてる悪戯好きとは違うぞ。どっちかっていうと、君の方がそういうタイプじゃないか」
「『俺が可怪しいんじゃなくて、ただ俺の現実が、あんたの現実と違っているだけなんだ』」
「確か、アリスがチェシャ猫に、『あなたも狂ってるの?』と聞いた問いに対する答えだな」
「私と蒼介君の現実も、違ってるんだろうね。でもいつか、溶け合って交わる時がくればいいなぁ」
幻想に生きている──という意味では、そんな意味深な台詞を吐く怜愛も、掴みどころのない雲のようなアリスも、稀有な美を湛える容姿の面を比べても、よく似ている。
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