それぞれの事情

紫陽花

文字の大きさ
39 / 52
第八章 爽

ときめくなんて恥ずかしい

しおりを挟む
 車内は金曜日とあってラッシュなみに混んでいた。
 爽は矢島に迷惑かけないように
立ちたいのだか、つり革も届く位置に無くて必死に踏ん張るが
何とも危なっかしくて、矢島は爽を必然的に抱き寄せる形になってしまった。
「ごめんなさい!先輩なのに酔っぱらって……恥ずかしい。」
 爽は、そう言うと俯いてしまった。
矢島は、平常心平常心と唱えながら
「爽さん~お酒弱いからね仕方ないよ~先輩だけどね~」
「そんな~に弱くない!もん」 
駄目だ!なにが もん だ!
しっかりしたくても……甘えたくなる。
体が熱い!心臓が煩い!
聞こえていてたら恥ずかしいよ。

「弱くないもんかっ~弱いもん!でしょ。アハハ」
「ばーか ばーか 矢島のバカ」
爽はしがみ付いている矢島の腕に
そっと顔つけた。
あ~どうしよう……好きが加速している。
背中に廻されている矢島の腕に力がはいるのを感じた爽。
うそ!抱き締めてくれた?
だったら、嬉しいのに……
ぐるぐるしている頭の中を
矢島に見られているようで
猛烈に恥ずかしくなった。

 矢島は、いちかばちか、かけてみる事にした。
名前を呼び捨てにする事にOKして貰えたら……脈有りだ!
よっし!
「爽さん?爽って呼んで良い?」「えっ…ッ?」
思わず声が上擦り……顔が熱くなるのを感じながら矢島の顔を見上げる。
 見つめ合う瞳と瞳。
「うん……嬉しい……」
やっと顔上げてくれた!
「爽……好きだよ」
耳元で静かに囁く矢島の吐息に
体の奥が反応してしまうのを
感じて、爽はまた俯いてしまった。
 矢島はその反応が愛しくて
思いっきり抱き締めていると、
矢島の胸に顔を埋める爽から
鼻を啜る音が聞こえてくる。
爽の顔を覗き込み、
「鼻を拭くなよ~ククク」
「拭いてないもん!つけてるだけだもん!」
やばい!やばい!これ以上煽るな!
「こら~お仕置きするぞ~」
爽は矢島の腕を抓ると、
顔を上げて思いっきり睨む。
「何しても、可愛いね」
もう……ドキドキが止まらない
甘えるように胸に顔を擦りよせると、矢島は爽の髪にキスをそっと落とした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...