マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#154 獣人国の王と会食

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「よくぞ来てくれた、バスティア王よ」

「こちらこそ、お招き感謝するぞ、ミルサント皇」


 本日、帝国城内にある会談スペースには、立派なたてがみを蓄えた獅子の獣人がやって来ていた。

 彼こそ帝国の隣国にあたる獣人国、バスティアの王である、グディノス・デル・バスティアだった。

 向かい合った両者は笑みを浮かべて固く握手をすると、お互い対面の席に着いた。


「それにしても、まさか貴国に招待されるとは思っていなかったよ」

「であろうな。 獣人国に限らず、我が国に他国の王を招いたのは相当久しぶりだ」

「どういう心境の変化があったのだ? 近頃、帝国と取引をしている貴族や商人から、規制が驚くほど緩和されたと聞いているが、それと何か関係が?」

「ある者との出会いを通じて、自国の文化のありように疑問を持ったのだ。 先祖代々継承されてきた我が国の文化は当然他国にも誇れる。 ……だが、それを守るばかりでは発展しない。 ならば、我々も外の文化を取り入れ、自国の文化の発展に生かすなり、そのまま取り入れるなりした方が良いと思ってな」

「ふむ、間違いないな。 正直なところ、我を始め、他の国の者達はそうした方が良いのではと思っていた。 このままでは帝国は緩やかに衰退していくだろうとも」

「今改めて客観的に見ると、そうであろうな。 何故もっと早く気付かなかったのかと思う」

「だが、貴国はこうして気付けたのだ。 きっとこれからもっと貴国は繁栄する。 それは我が国にとっても大きな利をもたらすであろうから、喜んで協力しよう」

「おお、感謝するぞ、バスティア王」


 それからしばらく、両国の王はとても有意義な話合いを続け、別室に用意された帝国ならではの食材や装飾品などの特産品、建造物などの仕組みをバスティア王に見て体験してもらった。


「なるほど、どれも素晴らしいな。 確かにここまで素晴らしいと、他国の文化など必要ないと思っても無理はない」

「高評価がもらえて何よりだ」

「特に建築技術に関しては、我が国にもぜひ取り入れたい」

「それならば、我が国の建築士達をそちらに派遣しよう」

「ほう、そこまでしてくれるのか」

「代わりと言ってはなんだが、今度は我もそちらの国に一度視察に行ってみたいと思っている」

「もちろん構わない。 我が国にも誇れる文化などは沢山あるからな」

「感謝しよう。 ……さて、そろそろ時間も頃合いだ。 食事にしないか、バスティア王」

「……ああ、そうしよう」


 アレキサンドルがグディノスにそう提案すると、顔には出ていないが、一瞬グディノスの言葉が詰まった。

 というのも、他国の共通認識として、帝国の料理は自国民以外食えたものじゃないという認識があるのだ。

 当然、アレキサンドルもそれを理解しているので、グディノスの言葉の詰まりをわざわざ指摘はしなかった。

 ただ、もうこれまでの帝国とは違うんだぞと、内心闘志を湧き上がらせていた。

 そんなアレキサンドルがグディノスを食堂に通すと、そこには既に2人分の豪華な食事が既に並べられており、2人はそのままそれぞれの料理の前の席に着いた。


「ほう…… これは見たこともない料理だ」

「実は用意した側ではあるが、我もだ」

「そうなのか?」

「今回の料理は、先程少し話した我の考えを改めてくれた恩人が作ってくれたものでな。 折角なら料理の説明と紹介も兼ねて、来てもらおう。 シュージ殿、入ってきてくれ」

「はい、失礼します」


 アレキサンドルがそう呼びかけると、厨房のある扉の方からシュージが2人の前に姿を現した。


「お初にお目にかかります、バスティア国王陛下。 私は蒼天の風という冒険者ギルドにて用務員をしつつ、いくつかの国の料理指南をさせて頂いているシュージと申します」

「彼は我が息子、オリオンの婚約者であるシルムーン王国のエヴェリーナ第一王女の紹介で我が国にも来てくれてな。 その料理の美味しさたるや、間違いなく我が知る料理人の中でも群を抜いていると言っていい」

「恐縮です」

「そこまで言われると期待をせざるを得んな。 だが確かに、先程からこの目の前の料理達から途轍もなく良い香りが漂ってきている」

「では、冷める前に早速頂こう。 シュージ殿、説明を頼む」

「はい。 まず、今回の料理は獣人国の特産と聞く香辛料をふんだんに使った料理になります」

「確かに、見知った香りではある」

「メインのこちらはコカトリスの肉を使ったタンドリーチキンという料理になります。 肉を焼く前に、かなりの種類の香辛料や調味料と一緒に漬け込み、味を染み込ませたものとなっております」

「ほう、では頂こう。 ……おお、これは、凄いな……! 柔らかく仕上げられた肉の焼き加減もさることながら、一噛みする度に旨味と香辛料の香りが口の中に広がって、鼻から抜けていく……! 美味いっ!」

「はは、バスティア王、凄いだろう? 我もシュージ殿の料理を一口食べただけで虜になった」

「ああ、これは間違いなく我が食してきた肉料理で1番と言えるだろう。 ……正直、正式な場でなかったらもう何皿も食べたいところだ」

「そう言ってもらえて良かったです。 もし一通り食べて足りないようでしたら、余分に作ったものがありますから用意しますよ」

「それはありがたいな」

「ではお次に、横のお皿ですね。 こちらはパエリアといって、魚介や香辛料と共に炊き込んだライスになります」

「ふむ、ライスを食すのは初めてだ。 ……おお、これも美味いな! しっかりとした香辛料の香りはもちろん、魚介の旨味が強く感じられる!」

「私自身、前々からパエリアを作りたいと思ってたのですが、必要な香辛料が中々見つからなくて、獣人国から仕入れられると知れてとても嬉しかったです」


 その後、サラダやスープなどの説明も行いつつ食事を楽しんでもらったのだが、アレキサンドルもグディノスもかなりのペースで箸が進んでいき、グディノスに関してはタンドリーチキンとパエリアをもう一人前分食べてくれた。

 やはり、獣人は大食漢な者が多いようで、グディノスもその例に漏れず、胃袋はかなり大きめなようだ。


「……ふぅ、こんなにも食事に夢中になったのはいつ振りだったろうか。 シュージ殿、心の底から満足したよ。 感謝する」

「光栄です」

「シュージ殿はこれまでもこうして様々な国で美食を広めてきている。 我が国も帝都を中心とした小さな変化だが、確実に食文化が発展しているんだ」

「それはぜひ我が国にも広めて頂きたいな。 シュージ殿、良ければまた後日、我が国にも招かせて欲しい」

「もちろん、こちらからお願いしたいくらいです。 私自身、様々な国で新たな文化や食材に触れるのはとても楽しい事ですから」


 そうして、獣人国の王にもシュージの事は認知され、お土産としてクッキーやチョコなどのお菓子の詰め合わせと、お酒に合うちょっとしたおつまみを送った。

 すると後日、それらがとても美味しくて、王家の者達もとても喜んだという内容の感謝の手紙が送られて来て、獣人国に行く日もそう遠くないかもしれないと思うシュージなのであった。
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