マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

文字の大きさ
158 / 438
連載

#189 家族でも距離感は大事

しおりを挟む
「はぁ…… 全くもうっ」

「お疲れ様です、ミノリさん」

「お疲れ」


 現在、食堂にて、ミノリがぐてぇっと机に突っ伏すように倒れ伏していた。

 そんなミノリの隣には、今や親友となったネルが座り、ミノリの頭をなでなでして労っている。


「なんか久々に1人になった気がする……」


 現在、サキナはディアナに連れられて鍛錬に付き合わされている。

 最初はミノリと一緒にいたいからという理由で断っていたサキナだが、ミノリに行ってこいと言われたようで、渋々だがディアナに付いていった。

 まぁ、サキナ本人的にも自分と拮抗した力の持ち主と鍛錬する機会は中々ないので、ディアナと鍛錬するのは嫌ではなさそうだったのが幸いだろう。
 

「結局、昨日は同じ部屋で寝たの?」

「そう……」


 どうやら昨日、ミノリはサキナと同じ部屋で寝たそうだが、そこでも色々あったらしい。


「別部屋で寝ろって言ったら捨てられた子犬みたいな目でこっち見てきて……」

「何だか想像できますねぇ」

「案の定ベッドでは抱き枕にされるし……」

「でも、別に嫌ではない?」

「……嫌ではないけど、暑苦しいよ」


 ミノリはゲンナリとした様子でそう口にした。


「昔からサキナさんはあんな感じだったんですか?」

「いや、今みたいにになったのは15年前ぐらいかな」

「そうなんですか?」

「うん。 それまでも好きではあったと思うけど、15年前、アタシの故郷の近くの火山が噴火して、それによって大量の魔物が街に押し寄せる事件があったんだ。 その時の私はまだ戦う力とか無くて、お姉ちゃんは防人見習いだったかな? で、私その時家で1人で留守番してたんだけど、街に降りてきた魔物に襲われて死にかけたんだ」

「それは災難でしたねぇ……」

「偶然居合わせた防人の人に助けて貰ったけど結構重症で、1週間ぐらい目を覚まさなかったんだって。 まぁ、何とか目を覚まして回復した訳だけど、その時からお姉ちゃんは凄い過保護に、言うなれば今みたいな感じになったんだよね」

「気持ちは分かる」

「本当は私が危険な事はさせたくないらしくて、鍛冶師になるのも冒険者になるのもすっごい反対してきたよ。 私が一生養うからとか言って」

「大事にされてますねぇ」

「強くなったのは、サキナのため?」

「まぁ…… 私が自分の身を自分で守れるぐらい強くなれば、お姉ちゃんも安心するかなって思ってはいたかな」

「ミノリさんも優しいですね」

「ま、まぁねっ。 ……だから、もう私は一人前だし、もっとお姉ちゃんには好きな事して欲しいんだけど……」

「ミノリさんと一緒にいるのがサキナさんにとっての好きな事なんじゃないですか?」

「うーん…… 嬉しいような嬉しくないような……」

「正直、私からすると羨ましい」

「そう?」

「私には姉も親もいないから、あんなに溺愛されてるのは結構羨ましく思える」

「あっ…… ごめん、不愉快だった……?」

「全然大丈夫。 私にも親代わりにお爺ちゃんがいたし、教皇様も歳の離れたお姉ちゃんみたいに接してくれたから」

「そっか」

「ん、なんならもっと見てたいぐらい」

「そ、そう?」

「だから、ミノリからすると鬱陶しいのかもだけど、そういう家族の触れ合いはもう少し大事にしてもいいと思う」

「う…… まぁ、確かにそれはそうかも…… 私達は冒険者だし、もしもの事が起きる可能性もあるから、今こうして一緒にいれる事もありがたい事なのかな……」

「ちゃんと話せば? 誰かが周りにいる時には抱きついたりしないでって。 代わりに2人きりの時には良いよとか言えば」

「んー、確かに……」

「ミノリもミノリで全力で拒まないからサキナはああなってる。 ちゃんとメリハリ付ければサキナも言うこと聞くはず」

「うっ…… ネルは合理的だなぁ……」

「ミノリが優柔不断なだけ」

「……うん、分かった。 ちゃんとお姉ちゃんに言ってみるよ」

「ん、よろしい」

「むー、ネルの方が大分年下のはずなのに…… なんだかなー」

「こういう説法はよく近くで見てた」

「悩みは無くなりましたかね?」


 シュージはそう言いながら、厨房から何かが乗ったお皿を持ってきた。


「これなに?」

「煎餅生地にチーズを混ぜたチーズおかきです。 良ければどうぞ」

「おー、美味しそう! ……んっ! これ良いね!」

「煎餅とチーズが合ってて良い感じ」


 そんなちょっとしたおやつも挟みつつ、その後も思い悩むミノリの相談に乗るシュージとネルだった。



 *



「はぁ、疲れた……」

「お疲れ様、お姉ちゃん」

「相変わらずディアナは無茶苦茶だったよ……」


 時刻はそろそろ眠りにつく時間。

 ミノリとサキナも昨日同様、同じ部屋に入って眠りにつこうとしていた。


「ま、ミノリにお疲れ様って言ってもらえるだけで疲れが吹き飛ぶよっ♡」

「あ、お姉ちゃん、ちょっと待って!」


 そう言ってミノリに抱きつこうとしてきたサキナを、ミノリは肩を掴んで止めた。


「ちょっと話したい事があるんだ」

「うん? どうしたんだい?」

「まず、これからなんだけど、人前とかアタシの仕事中に抱きつくのは禁止!」

「えっ…… そ、そんなっ……」


 ミノリがそう言うと、サキナはへなへな…… と床に崩れ落ちた。


「これはいつもみたいなお願いじゃないから。 本気だよ」

「み、ミノリ…… お姉ちゃん何か悪いことしちゃったか……?」

「ううん、別にしてない」

「じ、じゃあなんで……」

「アタシは人前で家族と触れ合うのはちょっと恥ずかしいの! 前から言ってたよね?」

「で、でも……」

「……まぁ、これに関してはアタシも本気で嫌がったりはしてなかったから、アタシにも責任はある。 だから、これからはしないでくれる?」

「わ、分かった…… ミノリが嫌なら、しない……」

「ああもうっ」


 今にも泣きそうな表情で了承したサキナに耐えかね、ミノリはサキナにぎゅっと軽めにバグをしていった。


「ふあっ!? み、ミノリっ……!?」

「言っておくけど、お姉ちゃんが嫌になったり、こうして触れ合うのが嫌な訳じゃない。 ただ、時と場合を考えて欲しいだけ。 それをちゃんと守ってくれるなら、まぁ、2人きりの時の触れ合いは許す」

「そ、それって、ミノリからもこうして……?」

「た、たまにだから! 2人きりでも恥ずかしいんだから…… よくお姉ちゃんはああも人目を憚らずにできるよな……」
 
「あぁっ…… ミノリぃっ♡!」

「わっぷ!?」


 ミノリからハグしてもらった事で嬉しくなったサキナは、ミノリの事をぎゅーっと抱き返した。
 

「ミノリからハグしてくれるなんていつぶりだろう……♡」

「ち、ちゃんと言ったこと守ってよ!? じゃなきゃもう2度としないしさせないから!」

「分かった! 他人が周りにいる時はベタベタしないっ」

「はぁ…… 本当にお願いね?」

「ああ!」


 なんだかんだでサキナはちゃんとミノリが言った事を受け入れてくれ、ミノリは一旦胸を撫で下ろした。

 それからというもの、サキナは前みたいに人前でベタベタする事はちゃんと辞めた。

 ただ、2人きりの時のスキンシップは前よりちょっと増えたと、ゲンナリしつつ、予定通り上手くいったはいったので、ちょっと嬉しそうにシュージやネルに報告しに来るミノリなのであった。
 
しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

隠れ居酒屋・越境庵~異世界転移した頑固料理人の物語~

呑兵衛和尚
ファンタジー
調理師・宇堂優也。 彼は、交通事故に巻き込まれて異世界へと旅立った。 彼が異世界に向かった理由、それは『運命の女神の干渉外で起きた事故』に巻き込まれたから。 神々でも判らない事故に巻き込まれ、死亡したという事で、優也は『異世界で第二の人生』を送ることが許された。 そして、仕事にまつわるいくつかのチート能力を得た優也は、異世界でも天職である料理に身をやつすことになるのだが。 始めてみる食材、初めて味わう異世界の味。 そこは、優也にとっては、まさに天国ともいえる世界であった。 そして様々な食材や人々と出会い、この異世界でのライフスタイルを謳歌し始めるのであった。 ※【隠れ居酒屋・越境庵】は隔週更新です。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。