マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#194あったか美味しいほうとう鍋

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「ありがとうございます、シュージさん」

「いえいえ、お安い御用ですよ」


 ガラリとした蒼天の風のエントランスにて、シュージはキリカと一緒に事務仕事のお手伝いをしていた。

 もうそろそろ年が明けるという事で、駆け込み寺のように冒険者ギルドには様々な依頼がいつも以上に寄せられていて、蒼天の風のメンバー達もほぼ総出で依頼に取り組んでいる。

 そのため、依頼の管理や報酬金の計算などの事務仕事もてんこ盛りで、あまりにもキリカが忙しそうにおり、それを見兼ねたシュージがこうして手伝っているというわけだ。

 もちろん、細かい事は分からないので、シュージがしているのは主に報酬金の簡単な計算周りだ。

 それでもキリカからすると非常にありがたいようで、先程からずっとお礼を言ってきてくれている。


「それにしても、シュージさん計算早いですね?」

「元々働いていた飲食店で会計もしたりしてましたからね。 それに、これぐらいの簡単な四則計算は、僕の故郷では年齢が一桁の内にほぼ必ず学ぶんですよ」

「凄いところですね? 私、この仕事始めるまでは全然計算とかできなかったですよ」

「こちらの世界の現状だと、中々そうもいかないみたいですね」

「そうですね。 でも、シュージさんのおかげで新しい孤児院とかが建ち始めたって聞いてますよ」


 以前シュージが孤児や貧困層のためにした寄付はちゃんと機能しているようで、この国の主要な街では早くも新しい孤児院が建ったり、スラムの者達に職を斡旋したりしてくれている。

 これはひとえにシュージの功績もあっての事で、シュージのおかげで食事が改善されたのはもちろん、食材や食器などの需要が以前と比べると跳ね上がっており、経済も回って全体の利益はもう凄まじい事になっているそう。

 そんな貢献をしてくれた人物が、無償で寄付までしてくれているのだから、応えないのはおかしいと言わんばかりに、王族を始めとした国の要職につく者達がかなり頑張った結果、かなり急ピッチで貧困層への援助が進んでいる。


「それでも、僕が救えるのはほんの一部ですけどね」

「もうっ、そんな言い方しなくても、十分誇って良いんですよ? シュージさんは神様じゃないんですから、今の時点でも十分過ぎるくらい他者を救ってます」

「はは、ありがとうございます。 あ、これ終わりましたよ」

「わっ! 早いですね! じゃあ、これもお願いしていいですか?」

「もちろんです」


 キリカからのありがたい言葉も貰いつつ、その後もシュージは事務作業のお手伝いを続けた。

 そして、夕方ぐらいになると、メンバー達がかなりお疲れの様子で帰ってきた。


「では、僕は晩ご飯の準備をしてきます」

「あっ、なら私も手伝いますよ!」

「おや、いいんですか?」

「シュージさんのおかげでかなり作業が終わりましたから! 今度は私がシュージさんを手伝います!」

「はは、ありがとうございます」


 という事で、今日はキリカが晩ご飯作りのお手伝い要員として来てくれた。


「では、キリカさんはこの辺の野菜の皮剥きと切り分けをお願いしますね」

「すごい沢山使うんですね?」

「皆さんお疲れですから、なるべく栄養のあるものを作ろうかと」


 今日作る料理は、野菜だけでもにんじん、大根、ごぼう、白菜、かぼちゃ、ねぎと、かなりの種類の食材を使う料理だ。

 なので、シュージも手伝いつつ、キリカには野菜の下拵えを行ってもらう。

 それと並行してシュージは鍋をいくつか用意して、そこへ水、お手製めんつゆを注いで味噌を溶かして火にかけていく。


「あっ、お鍋ですか?」

「そうですね。 いつもとは少し違った感じですが」


 ここまで来ればキリカも何を作っているのか分かったようだが、今作っているのは鍋は鍋でも、少しいつもとは違った鍋だ。


「では、火の通りにくい野菜から煮ていきましょう」

「はーい」


 鍋のつゆが沸いて来たら、ごぼうやにんじん、白菜の芯の部分などの火の通りにくいものから入れていき、野菜が全部入ったら薄切りにしたオーク肉も入れてしっかり火を通していく。

 
「いい感じですね。 そうしたらこれを入れましょう」

「あれ、うどんですか? シメじゃないんですね」

「そうですね。 今日は先に入れます」

「へぇー。 それに、いつもとちょっと形が違いますね?」


 しっかりと具材が煮えた鍋にシュージが投入したのは、普通のうどんではなく、前世ではほうとうと呼ばれていた横の幅が広めの麺だ。

 実際には、ほうとうというのは郷土料理の名前なのだが、割とこの麺自体がほうとうという名前で売られたりしていたので、まぁ、ほうとうでいいだろう。


「このうどんに火が通れば、ほうとう鍋の完成です」

「ん~、いい匂いですね。 とっても美味しそうです」

「では、運びましょうか」


 もう他のメンバー達も食事を食べに続々とやってきたので、鍋つかみを使って各テーブルにほうとう鍋を運んでいった。


「今日のご飯はほうとう鍋です。 その太いうどんはまだありますので、足りなければ各自で足して煮て食べていいですよ」


 見慣れない麺が入っていて少し面食らっていたメンバーも、うどんの太いバージョンと言われたら味の想像がついたのか、目の前の鍋をそれぞれの器によそい始めた。


「んっ、いつもより歯ごたえがあって美味しいですね!」

「そうですね。 食べ応えはかなりあると思います」

「野菜も沢山入ってて、体も凄い温まる……」


 色んな野菜がとろとろになるまで煮込まれたほうとう鍋は、スープも少しとろみが付いていて、そのスープも様々な食材の旨みが溶け出している。

 なので、飲むと思わず「あぁ~」と声が漏れてしまうくらい美味しいものになっていた。


「なんか、凄い元気になってきた気がします!」

「確かに、栄養満点ですからね。 寒い体にも染み渡って、また明日からも頑張れそうです」

「ですね!」


 栄養満点の温かいほうとう鍋は、寒い中頑張ったメンバー達には大層好評で、残りの年末の忙しさを乗り切る活力になるのであった。
 
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