子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#5 異世界初料理

 調味料が手に入り、作りたいものも決まったので、カスミは早速料理を始める事にした。

 もう日も沈んで丁度夕食時という時間帯になったので、とりあえず今日のところは手早く作れる料理を作っていく。

 まずは冷蔵庫にあった豚肉っぽい塊肉を取り出し、食べやすいサイズに包丁でカットする。


「おー、カスミちゃん、包丁使うの上手いねー!」

「確かに手際がいいな。 料理ができるというのは本当なようだ」


 その包丁さばきを見て、レネとクリスタがそんな風に言ってくる。
 

「ありがとうございますっ。 それで、もう切り始めちゃいましたけど、このお肉って豚肉ですよね?」

「豚肉と言えば豚肉かな? 豚の魔物のオークの肉だけど」


 カスミの質問に、レネはそう答えてきた。
 

「えっ、魔物のお肉なんですか……!」

「カスミは魔物の肉を食べた事ないのか?」

「そうですね…… 食べた事ないです」

「普通の家畜の肉もあるにはあるが、魔物の肉の方が断然美味いぞ」

(確かに、このお肉も切った感じ凄い柔らかいし上等そう…… まぁ、美味しいなら良いよねっ)


 魔物の肉と聞いて少々面食らったカスミだったが、クリスタ曰く美味しいそうなので、そのまま料理を続ける事にした。

 今日夕食を食べるのはここにいるカスミ達3人と、部屋で寝ているというもう1人の住人らしいので、今日の夕食に使うオーク肉とナスは食べやすいサイズに、キャベツは千切りにして人数分用意していく。

 あと、冷蔵庫の片隅に転がっていた生姜も刻んでおく。


「おお、千切りが上手いな」

「私達より全然上手くない?」

「そうだな。 少し心配してたが、大丈夫そうだ」


 心配で見守っていたクリスタとレネも、カスミの料理の腕前を見て一安心していた。
 

「えっと、普段は誰が料理を作ってるんですか?」

「私かレネか猫人のメンバーだな。 羊人のやつは作れなくもないが面倒くさがりで寝てばっかだし、龍人のやつはからっきしだ」

「そうなんですねっ」


 作業をしながらのカスミの質問には、クリスタがそんな風に答える。

 そうこうしているうちに、これから使う食材達は切り終えたので、まずは鍋で湯を沸かし、そこに先程スキルで出した和風顆粒出汁とナスを加えてナスに火が通るまで煮ておく。


「今入れた粉みたいのはなんだ?」

「えっと、魚とか海藻の旨味を取り出したものを粉状にしたものです」

「ふむ、そんなものがあるんだな」


 カスミが使う見たことのない調味料に、クリスタは終始興味深そうにしていた。
 

(この世界、やっぱりあんまり料理が発達してないのかな……? 醤油とかも無いし出汁って概念もないみたいだし……)


 この世界の食文化にカスミは若干の不安を覚えつつ、鍋でナスを煮ている間に、フライパンに油を引いて温め、オーク肉に片栗粉を軽く塗してから焼いていく。


「なんでその粉付けたのー?」

「こうすると柔らかく仕上がるんです」

「へー、凄いね?」


 レネもちょこちょこ質問をしてくるので、カスミはそれにも丁寧に答える。

 その間にも、薄切りにしたオーク肉はあっという間に焼き上がり、両面良い焼き色が付いた。

 そうしたら、酒、砂糖、醤油、みりん、すりおろした生姜を合わせて作ったタレをオーク肉に回しかけ、少しとろみがつくくらいまで絡めて煮詰めていく。


「な、なんだこの匂いはっ。 美味しそう過ぎるっ」

「凄い色んな調味料を一度に使うんだね!」


 そうすると、フライパンからは食欲をそそるいい匂いが辺りに広がっていったのだが、クリスタとレネはその匂いだけでかなり興奮していた。
 

(もしかして、調味料を合わせるっていう概念がそもそも無いのかな?)


 色んな調味料を使って料理するカスミを見て驚くクリスタとレネの様子から、カスミはそう当たりをつけた。

 元々この家にあった調味料が塩と砂糖と胡椒くらいしかなかった事を鑑みても、その推察はあながち間違いじゃないような気がカスミはしていた。


「なにこの匂い~……?」


 すると、カスミ達のいるキッチンに誰かが近づいてきた。

 そちらにカスミが目を向けてみると、そこにはワンピースタイプの薄手のパジャマを着た身長155センチくらいの眠そうな目元をした美少女がおり、頭の横からはゴツゴツとした羊のツノを生やしていた。


「あ、フィオだ。 珍しいね、起きたんだ?」

「良い匂いがして起きた~…… ん~……? その子だれ~……?」


 レネがフィオと呼んだ美少女は、カスミを見て不思議そうな表情を浮かべた。
 

「あっ、カスミと申しますっ。 今日からこのお家でお世話にならせてもらう事になりましたっ」

「お~…… 礼儀正しいね~…… 私はフィオだよ~…… よろしくね~……」


 フィオは眠そうにしながらもそう言うと、ふにゃりとカスミに対して微笑んでくれた。

 どうやら、悪感情は抱かれなかったようだ。


「で、何作ってるの~……?」

「カスミが今日の夕食を作ってくれてるんだ。 何を作ってるのかは私達も分からん」


 フィオの質問にはクリスタが答えてくれた。
 

「へ~…… なんか、見た事ないものいっぱいあるね~…… 鑑定してみよ~……」


 フィオはそう言うと、キッチンの上にある調味料達をじっと見つめた。


「へぇ~…… ふんふん、どれも手間のかかる調味料だね~……」

「えっと、フィオさんは何を……?」

「フィオは鑑定というスキルを持ってるの! 人とか物とかの詳細な情報が見れるんだ!」


 何をしているんだろうとカスミが疑問を抱いていると、レネがそう教えてくれた。
 

「物はともかく、人の隠し事とかは分かんないけどね~…… 年齢とかスキルとかは分かるけど~……」

「そうしたら、後でカスミのスキルを鑑定してもらうか」


 クリスタがそんなことを提案してきた。
 

「分かりましたっ。 ……あ、もうすぐご飯できますよ」

「お、それなら皿の準備をしよう」


 とりあえず、鑑定についての話は後回しにし、出来上がった今日のメインであるオーク肉の生姜焼きを、キャベツの千切りと共に大きめのお皿に盛り付ける。

 そして、ナスを煮ていた鍋の方には味噌を溶かし入れて味噌汁を完成させ、手頃なお椀に注いでいった。


(お米があれば一番だったけど、無さそうだから、物足りない人にはパンを食べてもらおう)


 そんなこんなで完成した料理を、リビングのテーブルに運んで、早速皆で食べる事にした。


「わぁ、どれも美味しそう!」

「とっても良い匂い~……」

「カスミ、いただくな?」

「はいっ」


 カスミの許しを得たクリスタ、レネ、フィオの3人は、まずは一番食欲をそそる匂いを放っているオーク肉の生姜焼きから口に運んでいった。


「あむ…… お、おぉっ……!? な、なんだこれはっ……!」

「お、おいひぃー!」

「これは、未知の美食~……!」


 すると、クリスタもレネもフィオも、口の中に広がった凄まじい旨味に目を見開きながら驚きの声を上げ、その後は飲み込むのが勿体無いと言わんばかりに、ゆっくりと噛み締めて生姜焼きを味わい始めた。


(わっ、確かに凄いこのお肉美味しい! 地球のブランド品よりも全然美味しいかも……)

 
 カスミもカスミでオーク肉の生姜焼きを口に運んでみたのだが、魔物肉の凄まじい美味しさに驚いていた。

 赤みの部分からは噛めば噛むほど旨味が出てくるし、脂身もそれなりにあるが全くクドくなく、間違いなくこれまで食べた豚肉の中で一番の美味しさだった。


(確かに、このお肉なら塩と胡椒だけでも十分だね…… キャベツとナスも地球のより美味しいし、食材の美味しさのせいで逆に調理技術が発展しなかったのかも?)

「キャベツと一緒に食べるとまた美味しいな……!」

「このスープも美味しい!」

「柔らかナスとよく合ってる~…… うまうま~……」


 カスミがそう思っている間も、クリスタ、レネ、フィオは幸せそうな表情でオーク肉を噛み締めていた。
 

(まぁ、何はともあれ、クリスタさん達が喜んでくれて良かったなっ)


 とりあえず、第一目標であるクリスタ達を喜ばせて恩を返すという目標は達成できたので、安心してカスミも自ら作った美味しい夕食を楽しんでいった。
 
 すると、美味しいご飯は箸も進むもので、全員割とすぐに用意された分のご飯は食べ終えるのであった。


「あぁ、もう無くなってしまったか」

「足りませんでしたか?」

「正直に言うと、もっと食べたいな」


 カスミの問いかけにクリスタはそう答えた。
 

「では、明日からはお代わりも作りますね」


 どうやら普通の一人前の量ではクリスタ達にはちょっと物足りなかったようなので、明日からはもう少し量を作ろうとカスミは心に決めた。
 

「こんな美味しい料理を作ってもらえるなら、むしろこっちがお金を払わないといけないくらいだな」

「いえいえ、ここに住まわせてもらえるだけでも十分ですから」

「そうか。 ありがとな、カスミ」

「あっ……」


 クリスタはそう礼を言いながら、カスミの頭を撫でてくれた。


「おっと、子供扱いは嫌だったか?」

「い、いえ、とっても嬉しいですっ」

「ふふ、そうか。 カスミの髪はツヤツヤで触り心地が良いな」

(誰かにこんな風に褒められながら頭撫でられたのなんて、いつ振りだろう…… なんか、凄い嬉しいなっ)

「クリスタずるーい! 私もカスミちゃん撫でるー!」

「カスミ、とっても美味しいご飯だったよ~…… えらいえらい~……」


 クリスタに引き続き、レネとフィオもカスミの頭を撫でながら褒め称えてくれた。
 

「わぁっ……! え、えへへ…… ありがとうございますっ」


 その後もカスミは皆に褒められ可愛がられ、とても温かい時間を過ごすのであった。
 
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