子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#7 冒険者ギルド

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「よし、それじゃあまずは買い物に行こうか」

「はいっ」


 朝食を食べ終え、支度を整えたカスミは、クリスタとレネと共に街へ繰り出す事になった。

 その目的は、まずはカスミの服などの身の回りのものを買う事で、あとは市場で食材を見たり、最終的には冒険者ギルドで冒険者登録をする事になっている。

 冒険者登録をする理由としては、登録をした時にもらえるギルドカードが身分証明書として使える事と、現役冒険者からの紹介であればすぐに作れるそうなので、取り敢えず作っておく事になった。

 別に冒険者になったからと言って依頼などは受けなくても良いので、カスミからしたらメリットしかない。

 ちなみに、フィオは一緒に行くか少し迷っていたが、眠気が勝ったらしく、家でお留守番だ。

 ただ、フィオが外出を迷う事自体かなり珍しい事らしく、それだけカスミの事を気に入ってくれてるんだよとレネが教えてくれた。


「歩いてる最中、入りたい店があったら言ってね!」

「分かりました」


 レネにそう言われながら冒険者ギルドへ歩き始めた訳だが、カスミにとっては見るもの全てが物珍しく、色んなところに目移りしてしまう。

 建物も一昔前の西洋風で馴染みが無いし、すれ違う人達は色んな種族が入り混じっていて、それを見ながら歩くだけでも全然退屈しない。


(それにしても、クリスタさんもレネさんも有名人みたいだな)


 そうして歩いていると、周りの者達がそこまで露骨では無いがこちらに視線を向けてきていることにカスミは気付いた。

 その視線は、憧れだったり敬まっているようなものばかりで、大きな家に住んでいる事も相まって、クリスタ達はかなり凄い冒険者なのかもしれないと、カスミは密かに思っていた。

 なお、カスミ自身は気付いていないが、周りの目はカスミにも向いており、珍しい黒髪黒目をした可愛らしい子供が、きょろきょろと周りを物珍しそうに見ている姿は非常に愛らしく、周りの者達は微笑ましいものを見る目を向けてきていた。


「着いたぞ。 ここがこの街の冒険者ギルドだ」


 そうして歩く事10分程で、クリスタが冒険者ギルドに辿り着いた事を告げた。

 そこには木造のかなり立派な3階建てくらいの建物が居を構えており、辺りには武装した冒険者の者達がちらほら立っていた。

 その間をクリスタが先導して通ろうとすると、冒険者達はささっと道を開けて軽く会釈をしてきた。

 やっぱり、クリスタ達は凄い冒険者なんだろうなという確証を得つつ、カスミもクリスタとレネと一緒に冒険者ギルドへと入っていった。

 すると、冒険者ギルドの中にもかなりの数の冒険者達がおり、席に座って武器の手入れや作戦会議をしている者もいれば、午前中にも関わらず酒場らしきカウンターの近くで酒を飲んでいる者達もいた。


「冒険者は良くも悪くも自由な仕事だから、粗野な者もそれなりにいるんだ」

「カスミちゃん、怖くない?」

「はい、大丈夫ですっ」


 クリスタとレネがカスミに心配の声をかけるが、特にカスミは怖いとかは思っていなかった。

 確かに人相が厳つい人も多いが、カスミに対して敵意を向けてきている訳ではないので。
 

「まぁ、冒険者になる前に犯罪歴などは調べられるから、根っからの悪人なんかはそういない。 それに、こうしていれば万が一にも手を出してくるやつは出てこないだろう」

「わぁっ……!」


 クリスタはそう言って、カスミの事をひょいっと抱え上げ、そのまま受付のカウンターまで歩いていった。

 その様子は他の冒険者にもバッチリ見られており、クリスタが黒髪黒目の子供を大事そうに抱えていたという情報はすぐに広まっていった。


「あら、クリスタさん」


 そうやってカスミ達が受付まで向かうと、そこにはギルドの制服を着た、おっとりとした目元で、顔の横に薄いヒレのようなものが付いている綺麗な女性がいた。


「マリンちゃんやっほー!」

「ふふ、レネさんもこんにちは。 クリスタさんと…… そちらのお子さんはどなたでしょう?」


 レネがマリンと呼んだ女性は、クリスタに抱っこされているカスミを見て、微笑ましそうにしながらそう聞いてくる。
 

「この子はカスミ。 魔の森で迷子になってた所を保護して、行く宛も無いようだからウチで暮らす事になったんだ」

「まぁ、そうなのですね。 カスミちゃん初めまして。 ギルド職員で人魚族のマリンと申します」


 マリンはそう名乗ってカスミに軽く頭を下げてきた。
 

「カスミですっ。 よろしくお願いしますっ」

「まぁ、しっかり挨拶できて偉いですね」


 マリンはそう言うと、クリスタに抱っこされているカスミの頭を優しく撫でてきた。


(見た目子供だから、挨拶しただけでみんな褒めてくれる…… ちょっと複雑だけど、子供の体のせいか褒められると凄い嬉しくなっちゃうぅ……!)


 綺麗なマリンに褒められ、思わず嬉しくなって顔が綻んでしまうカスミだった。


「それで、今日はこの子の登録しに来たんだ」

「分かりました。 後見人はクリスタさんで良いですか?」

「ああ」

「後見人……?」


 聞き慣れない単語が聞こえてきたので、カスミはクリスタにそれが何か目で聞いてみた。

 
「15歳未満の者が冒険者になる場合、後見人が必要なんだ。 若い方が問題を起こしたら後見人も責任が問われるから、簡単に若い者が冒険者登録はできないようになってる」

「なるほど……」


 冒険者は魔物を狩ったりするのが本業なので、割と危険がつきまとう仕事だ。

 そのため、無鉄砲な若者が簡単に冒険者登録はできない仕組みになっているらしい。


(私は依頼を受けることないから大丈夫だと思うけど、変なトラブルは起こさないようにしよう)

「そうしたら、クリスタさんはこちらの紙に必要事項の記入と、カスミちゃんはこの板に手のひら乗せてくれますか?」

「はいっ」


 何やらマリンが手形模様が刻まれた板を出してきたので、カスミはクリスタの抱っこから一旦降ろしてもらい、背伸びをしてカウンターの上の板に手のひらを乗せていった。


「……はい、大丈夫ですね」

「えっと、それは?」

「こちらは犯罪歴を調べるための魔道具です。 規則なので一応確かめさせてもらいました」

(魔道具…… 確か、クリスタさん達の家にあった冷蔵庫とかも魔道具なんだよね。 他にどんなものがあるんだろ)


 地球にはない魔法の道具なので、カスミからすると魔道具はどれも興味を惹かれるものばかりだ。


「よし、書けたぞ」

「クリスタさんもありがとうございます。 では、ギルドカードを作りますね」


 カスミが犯罪歴のチェックをしている間にクリスタも必要事項を記入し終えたようで、それを確認したマリンが傍に置いてあった別の魔道具を操作すると、その魔道具から白いカードが出てきた。


「はい、こちらがカスミちゃんのギルドカードになります」

「ありがとうございますっ」

「一応規則なので説明すると、ギルドカードはランクに応じて色が変わっていきます。 最初は全員カスミちゃんの持っているFランクの白いカードから始まり、E、D、C、B、A、Sという順番で上がります」


 カスミにギルドカードを手渡しつつ、マリンがそんな説明を聞かせてくれた。


(ランクかぁ…… 私は上がらないだろうな)
 
「あと、失くしてしまった場合、再発行はできますが別途お金がかかるので、なるべく失くさないようにしましょう」

「はいっ」

「説明としてはそんなところですね」

「カスミ、今は私が預かっておくよ。 後で服を買う時に、ポーチやカード入れも買おうな」

「分かりました、ありがとうございます」


 マリンからの説明を聞き終えたら、ギルドカードはクリスタに渡して預かってもらう事にした。

 これで冒険者ギルドに来た目的は達成できた。


「そう言えばマリン。 アネッタはなんの依頼を受けてるんだ?」

「アネッタさんは一昨日にゴーン山脈のサラマンダー討伐依頼を受けて行きましたね」

「となると、明日には帰ってくるか」

(アネッタって、誰だろう?)

「カスミちゃん、アネッタっていうのはウチのパーティーの龍人だよ。 戦いが大好きで、パーティーの依頼がない時は大体個人で高難度の依頼受けて色んなところに行ってるんだ」

「あ、そうなんですねっ」


 カスミがアネッタという人について疑問に思っていると、疑問が顔に出ていたのか、レネがそう教えてくれた。


「あと一応聞くが、ローニャはここには来てないよな?」

「そうですね、ギルドには来てないです」

「となるといつものあそこか……」

「ローニャかー、カスミちゃんの教育に悪いから、いっそ閉め出しちゃう?」

「それもありだな……」


 何やらレネとクリスタが不穏な会話をし始めた。
 

「え、えっと……?」

「あー、ローニャっていうのもウチのパーティーの猫人なんだけど…… 実力はあるけどちょっと問題がねー」

「そ、そうなんですか? えっと、私の事は気にしないで大丈夫ですよっ」


 何やら不穏なワードが出たが、カスミはクリスタ達の家に居候させてもらっている身なので、住人がどんな人であれ文句を言うつもりはない。


「まぁ、悪い奴ではないんだがな…… 多分、そろそろ家に帰ってくるだろうから、カスミに変な事は教えたりしないよう言っておこう」


 どうやらあと2人の住人は癖のある面々のようだが、クリスタもレネもその2人の話をする表情はどこか明るかったので、早く会ってみたいなと内心思うカスミなのであった。
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