子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#85 ハンソンの街へ

#85
 ある日の早朝。

 カスミはビフレストの面々と共に、サミアンの街の入口にやって来ていた。

 というのも、これからカスミ達は海沿いの街、ハンソンに向かう予定で、仕事の手伝い兼里帰りで同じくハンソンに向かう予定だった冒険者ギルド職員のマリンとそこで待ち合わせをしていた。


「気をつけて行くんだよ、マイハニー!」

「ふふ、地元ですから大丈夫ですよ」


 そんな待ち合わせ場所にカスミ達が辿り着くと、荷物を持ったマリンが恋人であるアルデンテと抱き合って別れを惜しんでいた。


「本当は私も行きたいが……!」

「アルさんは今、お仕事が良い感じなんですから、そちらを頑張ってください」

「そうだねっ☆ 来年はマリンと一緒に行けるよう、仕事を軌道に乗せないと!」

「応援してます」

「ありがとう、マイハニー☆」

「あ、あの~……」


 そんなラブラブなやり取りをしているマリンとアルデンテに、カスミは恐る恐る声をかけた。


「あ、カスミちゃんに皆さんっ…… 恥ずかしいところを見られちゃいましたね……」


 すると、見られていたことを知ったマリンが顔を赤くしながらアルデンテから身を離した。
 

「おお、カスミ様! それにビフレストの皆さんも、マリンのことをよろしくお願いしますよっ☆」


 アルデンテの方は見られていても気にした様子はなく、カスミ達に快くマリンのことを送り出していった。


「私達の方がマリンさんにお世話になること多いと思いますけどね」

「ふふ、案内はお任せください」


 ハンソンの街が地元であるマリンには街の案内などをしてもらう予定なので、どちらかと言えばカスミ達が世話になる立場かもしれない。


「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい☆」


 そうしてアルデンテに見送られる形で、カスミ達は街から出ていつもの草原にやって来た。

 今回、フィオがハンソンの街には行ったことがないということで、カスミにとってもお馴染みになりつつあるガリュウの背に乗って一同はハンソンの街に向かう。

 なので、アネッタがガリュウを呼ぶための笛を吹くと、待機していたのかガリュウがすぐにカスミ達のところへ降りてきた。


「これがドラゴン……」


 そんなガリュウを間近で見たマリンは、驚いてはいたものの、怖がったりはしていないようだった。


「マリンさん、思ったより驚いてないですね?」

「ビフレストの皆さんがドラゴンに乗って移動することがあるというのはギルド職員の中では有名な話なんです。 ……実際にこんな近くで見たことは無かったですが」


 カスミの言葉にマリンはそのように返した。

 カスミが初めてガリュウに会った時は、それはもうビビり散らかしたので、マリンがどんなリアクションを見せるかちょっとだけ楽しみにしてたのだが、そこまで驚いたりしてなくてちょっと残念な気持ちになるカスミだった。

 それからカスミはクリスタに抱っこされて、マリンはアネッタにおんぶされてガリュウの背に乗せられ、全員が乗ったことを確認したガリュウは、ハンソンの街へと飛び立っていった。


「ハンソンの街ってどんな場所なんですか?」


 それからガリュウのスピードに驚いたり、眼下に広がる景色に見惚れていたマリンが落ち着いたタイミングで、カスミはマリンにそう尋ねてみた。


「とにかく漁業が盛んね。 世界一魚を獲っている街と言っても過言じゃないと思います」

「それは良いですね」


 カスミは肉と魚だとギリギリ魚の方が好きと言えるくらい魚が好きなので、ハンソンの街へ行くのを非常に楽しみにしていた。

 いつも魚を買っているハンソンの街から来ている行商人にも、現地で獲れたての魚はもっと美味いし色々種類もあると聞かされているので、これを機に大量に買い込むつもりだ。


「ただ、輸送の手間もあったり、癖のある味をしている物も多いので、中々内陸にある街には売れないのが現状なんですよね」

「勿体無いですっ」

「あ、そういえば、カスミちゃんが出した調味料で味付けしたお魚食べてみたんだけど、本当に美味しかった!」


 マリンには最近話題になっている新しい調味料やレシピがカスミ発祥のものであるということは伝えてあり、早速いくつか登録してある海鮮料理のレシピを試してみたそうだ。


「それは良かったです」

「お魚を生で食べるためのレシピもありましたけど、カスミちゃんはお魚を生で食べれるんですか?」

「はい。 美味しいですよね」

「そう言ってくれるの、嬉しいです! こっちの方ではお魚を生で食べる人がいないので」

「ハンソンの街では普通に食べますか?」

「そうですね。 皆さん普通に食べますよ」

「それは何よりです」

「それもあって、カスミちゃんの調味料を家族へのお土産として持ってきたんですよ」


 先程マリンと合流した時に、結構大きい鞄を持っているなとカスミは思っていたが、どうやらあの鞄にはカスミが売り出した調味料が色々入っているらしい。


「ハンソンでも早く売り出して欲しいですね」

「……マリンさん、実は来週くらいにハンソンの街でも売り出されるらしいですよ」

「えっ、そうなんですか?」


 先日、シクウからカスミ宛に手紙が届き、調味料とレシピの売上は想像以上に凄いことになっているということと、次にそれらを売り出す場所について書かれていた。

 その中の一つにハンソンの街も入っており、どうやらハンソンの街にもデラフト商会の支店があるらしい。

 これらの情報は別に口止めはされていないが、そんなに言い触らしていい話でも無いので、マリンには小声で伝えた。


「併せて海鮮料理のレシピもこれまで以上に売られると思います」

「それはありがたいですね。 きっとハンソンの街は凄いことになりますよ」


 マリンもカスミの調味料を使った海鮮料理を自分で作って初めて食べた時、それはもう感動を覚えたので、ハンソンの街では絶対人気が出るだろうなと確信していた。

 そんな話や空から見る景色を楽しみながは、一行は着々とハンソンの街への道のりを進んでいくのであった。
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