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げきとつ
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リコリスと言う女は、言ってしまえば私が元々いたギルドを辞める原因となった人物。同じギルドにいた頃は私とリコリスの二人一組で前線を張っていたが、色々あって結局ギルドごと分解という形になった。
とにかく、リコリスとは昔からの知り合いであるが、少しだけ因縁のある敵同士、またはお互いをよく知る友人とも言える複雑な関係にある。
リコリスは二階の大扉を開いて姿を現した。
容姿はギルドにいた頃とは全く異なり、アザレアの服装で顔が異常なほど整っている。
「お前、アザレアに雇われていたのか」
「あーそうなんですよ!傭兵を募集してたんで…ほらボク、顔めっちゃいいじゃないですか☆丁度お金にも困ってたのもあって応募したら受かっちゃいましたー」
「…」
「やだなー。引かないでくださいよー。後輩のかわいい冗談じゃないですかー」
「…本当に狙いはそれだけか?」
「んー?何のことですか?ボク、そんなややこしいこと考えられないですってー」
相変わらず喰えないやつだ。
アザレアは基本的に金のことしか考えてないようなやつらばかり。こちらが得できるような高賃金で傭兵を募集なんてしないだろうし、リコリスほどの実力があれば傭兵なんてやらなくとも手軽に金を稼ぐ手段なんていくらでもあったはずだ。伝手も腐る程あっただろう。
少なくとも、私ならアザレアの傭兵なんて金稼ぎに選ばない。これは断言できる。
「まあいい。それより兵士を守ったと言うことは、お前は私の敵であると言う認識でいいんだな?」
「やだなー敵だなんて。別にボクはこの人たちを守ったわけじゃないですよ。室内に危ないのが飛んでたから、撃ち落としただけですって。万が一にも、ボクのプリティーな顔に傷がついたら困っちゃいますし☆」
「ならなんだ。そこまで敵意むき出しで、敵じゃないとでも?」
センダンの問いに、リコリスはにこやかな笑みを浮かべながら手をかざして、無詠唱の火弾を飛ばした。センダンはそれを手の甲に風の盾を張って弾く。
リコリスは尚も笑って応えた。
「いいや。敵ですよ」
「そうだろうな」
唐突に火蓋は切られ、リコリスは思い切り地面を蹴ってセンダンの方へ詰め寄った。
「『グラナタム』。『フェウアー・チャルフ・グラディオ』」
リコリスは五重円のセラムを生成し、金色に輝く剣を取り出した。蹴り出した勢いに乗せて、刃をセンダンに向けて突き立てる。
センダンは落ち着いた様子で『グラナタム』と唱えた。同じく五重のセラムが生成される。
「『アンダン・ラウ・ツァ』」
セラムから白い剣と盾を取り出し、盾を前面に構える。
直後「ドッ」と言う鈍い音が鳴り、リコリスの剣とセンダンの盾が衝突した。盾からは蒸気が上がりヒビが入ったが、リコリスの勢いを完全に殺した。
センダンは間髪入れずに硬直しているリコリスに剣で斬りかかるが、リコリスの剣は刀身を変形させてその剣を受け止めた。剣は更に形を変えて刀身を何本も増やし、センダンに向かって伸びていった。受け止める手段を失ったセンダンは敢え無く後ろへ下がる。
「相変わらず鬱陶しいな。その剣」
「そんなこと言わないでくださいよー。すっごい扱い辛いんですからね?この魔法。変形させてる間は意識がほとんどそっちに持ってかれるんですから」
「なら使わなければいい」
「まぁ先輩がどうしてもって言うなら、やめようかニャー?」
リコリスは余裕そうな表情でニヤついている。
反対に、装甲で隠れたセンダンは冷や汗を滲ませていた。
リコリスもギルドにいた時より大分弱くなってるが、正直こっちに分が悪い。属性相性的に、私の方が不利だ。あっちの出した魔法よりも少し強い魔法を出さなければ打ち負けるから、こちらの方が早く魔力が切れる。
なるべく早く勝負を終らせる必要があるな…と言うより、戦闘スイッチを入れなければ勝てないな。
センダンは剣を消滅させて鎧に手を掛け、地面に脱ぎ捨てた。
裸ではないが、薄い白シャツに黒い短パンと、肌の露出は格段に増える。
「あ。戦闘スイッチ入れちゃう感じです?」
「あぁ。相手がお前なら殺してもそこまで問題にもならないしな」
「えへ。そんなこと言っちゃって、普通に属性相性的に負けてるからって焦ってるの丸わかりですからねー。でも、体の相性はばっちりですもんね♡」
「相変わらずお前はやかましいな」
ここまでの間、チューベローの雇われ兵士たちは二人による高次元の戦いを前に意気消沈し、剣を足元に落としていた。あまり戦闘の経験が無くても、二人の実力を嫌でも理解できた。彼らはその場に立ち尽くし、二人の戦闘に見入り、または畏怖していた。
すぐにセンダンは頬を紅潮させ、臨戦態勢に入った。
「先輩のそのモードって確か、普段は鎧で抑えてる感情の枷を外すー…みたいな感じでしたっけ?」
「うんそうだよ。あ、でも昔とは違って、むやみやたらと襲ったりしないから安心して」
「…と言うと?」
「えへへー。今は好きな人がいるんだよね。あー、今ちょっと考えただけで濡れてきちゃった」
センダンの言葉に、リコリスは初めて眉をぴくりと動かした。
「へ、へー。それは一体なんてやつなんですか?」
「それ教えてリコちゃん何するか分かんないから内緒だけど、すっっっっっごい可愛くてがんばりやさんなんだよー。声もエッチで、あの小さく勃った薄ピンクの乳首が意地らしくてズルいんだよね」
「そ、それは、もう一夜を共にしたってことですか?」
「ううん、恋人がいるからって拒否されちゃった。でも、ほっぺにチューしてる時、満更でもない感じだったし、押せばイケると思うんだよね」
「…まさか、今先輩がここにいるのって、そいつと関係ないですよね」
「あるよ」
「なるほど。だったらボクも、どうしてもセンダン先輩に勝たなきゃならなくなりました。手加減はしませんからね」
「えへ。手加減も何も、リコちゃんが全力で来た所で勝てっこないよ。どうせ」
「…だったら、一発勝負でいきましょうよ。どうせボクたち、上位魔法一回でガス欠起こすんですから。やるなら派手にドカンと」
「うん。いいよ」
両者とも一歩二歩と下がり、元々発動していた魔法は消した。
「雇われ兵士さんたち。今から…そうだなー。この部屋一帯を埋め尽くすくらいの魔法がぶつかり合うから、死にたくなければここから逃げてった方が身のためだと思いますよー」
リコリスがにこやかに促すと、兵士たちは「ひっ」と情けない声を上げて一目散に逃げだしていった。その中で一人、ガタガタと震えながらも剣を構える兵士がいた。
「お、オレは雇われ兵士なんかじゃねぇ!自分の意志でチューベロー国王に仕えるって決めたんだ!!国王に危害を加えるつもりなら、オレがここでお前らを殺す!!」
リコリスはその兵士を冷めた目で見ていたが、センダンに一礼してから徐に兵士へ近付き彼の目を覗き込み、穏やかな微笑を浮かべた。
「誰かのために命をかけるのは素晴らしいこと。でも、勇敢と無謀を履き違えないようにしてください。ボクはあなたに『巻き込んでしまうから離れて』と言ったんです。ここで意味も分からず野垂れ死にするのと、国王を守るため一矢報いて死ぬのと、どちらがいいですか?」
「てっ、適当な言葉並べやがって!オレはお前らのこと知ってんだからな!!金と名誉のためなら何でもするギルドにいたやつらだって!!国王だけじゃなく、この町にも平気で危害を加えかねない!!か、家族を守るためにも、ここでオレが食い止めるんだ!!」
「家族…家族って、誰がいるんですか?」
「妻と子供だよ!!」
「へー」
「な、何が言いたいんだんぉっぷ」
リコリスは大きく開いた兵士の口中に自分の舌を滑り込ませた。動揺して逃げ出そうとする兵士の頭を手で固定して、ジュルジュルと音を立てながら舌を絡ませる。すぐに兵士は力なく膝を地面につき、剣も落として両手をだらりと垂らした。
やがてリコリスは舌を抜き取り、舌なめずりをする。
「ほら。奥さんとするよりずっと気持ち良かったですよね?さっさとここから出て行ってくださったらまたしてあげますから、理解できましたら…自分のすべきこと、分かりますよね?」
兵士は呆けた表情を浮かべながら小さく頷き、のろのろと扉を潜っていった。
センダンは一連の流れを無表情で眺めていたが、扉が閉まりきると口を開いた。
「いい性格してるねー」
「そうでしょう?ボク、これでも人情に溢れてるんですよね。ほら、人の痛みが分かるって言うか?」
「今の言葉に…一つでも本音があった?」
「…本音なんて、わざわざ口に出す必要あります?」
少しの間、お互いに視線を交わしてから、ほとんど同時に『グラナタム』と詠唱する。
二人の目の前に五重のセラムが生成される。大きさはお互いの背丈くらいあった。
「『スターク・グローヴ・フレイム・リンウォルム』」
「『スカフ・ハート・ヴィント・ヘライマオ』」
リコリスの前には全身を紅く燃やす竜が、センダンの前には全身に風を帯びる白い虎がセラムから現れた。
「分かってますね、センダン先輩。久しぶりの仲良し度チェックと行きましょうか!!」
「あはは。段々高ぶってきた…スイッチ、入りそうだよ!!」
センダンは大きく声を荒げ、風虎を竜に向かって突撃させた。リコリスも無言で炎竜を突撃させる。即座に巨大な爆発が生じる。窓が割れ、建物全体が震えるほどの衝撃が走る。魔力を帯びた大量の蒸気が部屋中に噴きだして行く。
炎竜が長い体を捻じって風虎の胴を噛もうとするが、虎は軽く躱して、反対に竜に嚙みついた。しかし、竜の胴から発射された大量の火炎放射によって虎はすぐさま飛び退く。
それから少しの間一進一退の攻防が続き、一度お互いに一歩下がった。
「ほらほら!!ボクの方が押してますよー!?あの時の偉大な英雄にも見えた先輩はどこに行っちゃったんですかねー??」
「あはっははっははは!!楽しい!楽しいよ!!久しぶりにこんなに戦闘のことだけ考えてる!!もう他のことなんてどうでもいいくらいに!!」
「なら、もっとボクのことだけ見てください!!思い人なんて吹き飛ぶくらい、ボクがセンダン先輩を愉しませてあげますからっ!!」
再び、虎と竜は激突した。
とにかく、リコリスとは昔からの知り合いであるが、少しだけ因縁のある敵同士、またはお互いをよく知る友人とも言える複雑な関係にある。
リコリスは二階の大扉を開いて姿を現した。
容姿はギルドにいた頃とは全く異なり、アザレアの服装で顔が異常なほど整っている。
「お前、アザレアに雇われていたのか」
「あーそうなんですよ!傭兵を募集してたんで…ほらボク、顔めっちゃいいじゃないですか☆丁度お金にも困ってたのもあって応募したら受かっちゃいましたー」
「…」
「やだなー。引かないでくださいよー。後輩のかわいい冗談じゃないですかー」
「…本当に狙いはそれだけか?」
「んー?何のことですか?ボク、そんなややこしいこと考えられないですってー」
相変わらず喰えないやつだ。
アザレアは基本的に金のことしか考えてないようなやつらばかり。こちらが得できるような高賃金で傭兵を募集なんてしないだろうし、リコリスほどの実力があれば傭兵なんてやらなくとも手軽に金を稼ぐ手段なんていくらでもあったはずだ。伝手も腐る程あっただろう。
少なくとも、私ならアザレアの傭兵なんて金稼ぎに選ばない。これは断言できる。
「まあいい。それより兵士を守ったと言うことは、お前は私の敵であると言う認識でいいんだな?」
「やだなー敵だなんて。別にボクはこの人たちを守ったわけじゃないですよ。室内に危ないのが飛んでたから、撃ち落としただけですって。万が一にも、ボクのプリティーな顔に傷がついたら困っちゃいますし☆」
「ならなんだ。そこまで敵意むき出しで、敵じゃないとでも?」
センダンの問いに、リコリスはにこやかな笑みを浮かべながら手をかざして、無詠唱の火弾を飛ばした。センダンはそれを手の甲に風の盾を張って弾く。
リコリスは尚も笑って応えた。
「いいや。敵ですよ」
「そうだろうな」
唐突に火蓋は切られ、リコリスは思い切り地面を蹴ってセンダンの方へ詰め寄った。
「『グラナタム』。『フェウアー・チャルフ・グラディオ』」
リコリスは五重円のセラムを生成し、金色に輝く剣を取り出した。蹴り出した勢いに乗せて、刃をセンダンに向けて突き立てる。
センダンは落ち着いた様子で『グラナタム』と唱えた。同じく五重のセラムが生成される。
「『アンダン・ラウ・ツァ』」
セラムから白い剣と盾を取り出し、盾を前面に構える。
直後「ドッ」と言う鈍い音が鳴り、リコリスの剣とセンダンの盾が衝突した。盾からは蒸気が上がりヒビが入ったが、リコリスの勢いを完全に殺した。
センダンは間髪入れずに硬直しているリコリスに剣で斬りかかるが、リコリスの剣は刀身を変形させてその剣を受け止めた。剣は更に形を変えて刀身を何本も増やし、センダンに向かって伸びていった。受け止める手段を失ったセンダンは敢え無く後ろへ下がる。
「相変わらず鬱陶しいな。その剣」
「そんなこと言わないでくださいよー。すっごい扱い辛いんですからね?この魔法。変形させてる間は意識がほとんどそっちに持ってかれるんですから」
「なら使わなければいい」
「まぁ先輩がどうしてもって言うなら、やめようかニャー?」
リコリスは余裕そうな表情でニヤついている。
反対に、装甲で隠れたセンダンは冷や汗を滲ませていた。
リコリスもギルドにいた時より大分弱くなってるが、正直こっちに分が悪い。属性相性的に、私の方が不利だ。あっちの出した魔法よりも少し強い魔法を出さなければ打ち負けるから、こちらの方が早く魔力が切れる。
なるべく早く勝負を終らせる必要があるな…と言うより、戦闘スイッチを入れなければ勝てないな。
センダンは剣を消滅させて鎧に手を掛け、地面に脱ぎ捨てた。
裸ではないが、薄い白シャツに黒い短パンと、肌の露出は格段に増える。
「あ。戦闘スイッチ入れちゃう感じです?」
「あぁ。相手がお前なら殺してもそこまで問題にもならないしな」
「えへ。そんなこと言っちゃって、普通に属性相性的に負けてるからって焦ってるの丸わかりですからねー。でも、体の相性はばっちりですもんね♡」
「相変わらずお前はやかましいな」
ここまでの間、チューベローの雇われ兵士たちは二人による高次元の戦いを前に意気消沈し、剣を足元に落としていた。あまり戦闘の経験が無くても、二人の実力を嫌でも理解できた。彼らはその場に立ち尽くし、二人の戦闘に見入り、または畏怖していた。
すぐにセンダンは頬を紅潮させ、臨戦態勢に入った。
「先輩のそのモードって確か、普段は鎧で抑えてる感情の枷を外すー…みたいな感じでしたっけ?」
「うんそうだよ。あ、でも昔とは違って、むやみやたらと襲ったりしないから安心して」
「…と言うと?」
「えへへー。今は好きな人がいるんだよね。あー、今ちょっと考えただけで濡れてきちゃった」
センダンの言葉に、リコリスは初めて眉をぴくりと動かした。
「へ、へー。それは一体なんてやつなんですか?」
「それ教えてリコちゃん何するか分かんないから内緒だけど、すっっっっっごい可愛くてがんばりやさんなんだよー。声もエッチで、あの小さく勃った薄ピンクの乳首が意地らしくてズルいんだよね」
「そ、それは、もう一夜を共にしたってことですか?」
「ううん、恋人がいるからって拒否されちゃった。でも、ほっぺにチューしてる時、満更でもない感じだったし、押せばイケると思うんだよね」
「…まさか、今先輩がここにいるのって、そいつと関係ないですよね」
「あるよ」
「なるほど。だったらボクも、どうしてもセンダン先輩に勝たなきゃならなくなりました。手加減はしませんからね」
「えへ。手加減も何も、リコちゃんが全力で来た所で勝てっこないよ。どうせ」
「…だったら、一発勝負でいきましょうよ。どうせボクたち、上位魔法一回でガス欠起こすんですから。やるなら派手にドカンと」
「うん。いいよ」
両者とも一歩二歩と下がり、元々発動していた魔法は消した。
「雇われ兵士さんたち。今から…そうだなー。この部屋一帯を埋め尽くすくらいの魔法がぶつかり合うから、死にたくなければここから逃げてった方が身のためだと思いますよー」
リコリスがにこやかに促すと、兵士たちは「ひっ」と情けない声を上げて一目散に逃げだしていった。その中で一人、ガタガタと震えながらも剣を構える兵士がいた。
「お、オレは雇われ兵士なんかじゃねぇ!自分の意志でチューベロー国王に仕えるって決めたんだ!!国王に危害を加えるつもりなら、オレがここでお前らを殺す!!」
リコリスはその兵士を冷めた目で見ていたが、センダンに一礼してから徐に兵士へ近付き彼の目を覗き込み、穏やかな微笑を浮かべた。
「誰かのために命をかけるのは素晴らしいこと。でも、勇敢と無謀を履き違えないようにしてください。ボクはあなたに『巻き込んでしまうから離れて』と言ったんです。ここで意味も分からず野垂れ死にするのと、国王を守るため一矢報いて死ぬのと、どちらがいいですか?」
「てっ、適当な言葉並べやがって!オレはお前らのこと知ってんだからな!!金と名誉のためなら何でもするギルドにいたやつらだって!!国王だけじゃなく、この町にも平気で危害を加えかねない!!か、家族を守るためにも、ここでオレが食い止めるんだ!!」
「家族…家族って、誰がいるんですか?」
「妻と子供だよ!!」
「へー」
「な、何が言いたいんだんぉっぷ」
リコリスは大きく開いた兵士の口中に自分の舌を滑り込ませた。動揺して逃げ出そうとする兵士の頭を手で固定して、ジュルジュルと音を立てながら舌を絡ませる。すぐに兵士は力なく膝を地面につき、剣も落として両手をだらりと垂らした。
やがてリコリスは舌を抜き取り、舌なめずりをする。
「ほら。奥さんとするよりずっと気持ち良かったですよね?さっさとここから出て行ってくださったらまたしてあげますから、理解できましたら…自分のすべきこと、分かりますよね?」
兵士は呆けた表情を浮かべながら小さく頷き、のろのろと扉を潜っていった。
センダンは一連の流れを無表情で眺めていたが、扉が閉まりきると口を開いた。
「いい性格してるねー」
「そうでしょう?ボク、これでも人情に溢れてるんですよね。ほら、人の痛みが分かるって言うか?」
「今の言葉に…一つでも本音があった?」
「…本音なんて、わざわざ口に出す必要あります?」
少しの間、お互いに視線を交わしてから、ほとんど同時に『グラナタム』と詠唱する。
二人の目の前に五重のセラムが生成される。大きさはお互いの背丈くらいあった。
「『スターク・グローヴ・フレイム・リンウォルム』」
「『スカフ・ハート・ヴィント・ヘライマオ』」
リコリスの前には全身を紅く燃やす竜が、センダンの前には全身に風を帯びる白い虎がセラムから現れた。
「分かってますね、センダン先輩。久しぶりの仲良し度チェックと行きましょうか!!」
「あはは。段々高ぶってきた…スイッチ、入りそうだよ!!」
センダンは大きく声を荒げ、風虎を竜に向かって突撃させた。リコリスも無言で炎竜を突撃させる。即座に巨大な爆発が生じる。窓が割れ、建物全体が震えるほどの衝撃が走る。魔力を帯びた大量の蒸気が部屋中に噴きだして行く。
炎竜が長い体を捻じって風虎の胴を噛もうとするが、虎は軽く躱して、反対に竜に嚙みついた。しかし、竜の胴から発射された大量の火炎放射によって虎はすぐさま飛び退く。
それから少しの間一進一退の攻防が続き、一度お互いに一歩下がった。
「ほらほら!!ボクの方が押してますよー!?あの時の偉大な英雄にも見えた先輩はどこに行っちゃったんですかねー??」
「あはっははっははは!!楽しい!楽しいよ!!久しぶりにこんなに戦闘のことだけ考えてる!!もう他のことなんてどうでもいいくらいに!!」
「なら、もっとボクのことだけ見てください!!思い人なんて吹き飛ぶくらい、ボクがセンダン先輩を愉しませてあげますからっ!!」
再び、虎と竜は激突した。
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