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第121話 俺こそが次の王だ

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親父がオークは族長

強い兄貴たちに数多き一族

森には狼どももいるが俺たちは強かった

群れは強いが俺は身体も兄貴達に比べれば小さく、それでいて弱かった

いつも役立たずと殴られて育った

いつだって食えるものは少なく、敵も多い


だけど食わせてもらえた


だからオークを護るためにずっと戦ってきた

魔王軍とやらにオークキングの親父が戦いに行くのに俺も参加しようとしたが力足らずだと里に残ることになった


最後に親父や兄貴達との力試しの最中に加護というものが得られた

強烈な一撃で、親父の頭をかち割ってやったと思った

だが親父には届かず、逆にのされてしまった


起きると親父達はいなくなっていて、俺はオークの里を護る戦士となった

親父が帰るまで兄貴が族長の座を得たが俺には関係ないし相変わらずオークを護るためだけに生きてきた

オークの中では小さい俺でも、もう役立たずではない

寝ているとチーテックがうるさい、魔物共をもっと狩れ?お前の兄はお前の命を狙っているぞ?


ふん、そんなことはわかっている


獲物をもっと狩って食えれば子はもっと大きくなる

命を狙ってるなぞよくあることだ、加護で力を得た俺を兄貴が殺そうとしてるなんてわかってる

俺から族長になるなんて面倒だしやらない

兄貴が何を考えているかはわからんが襲いかかってくるのなら堂々と殺せる



親父が死んだらしい



あれだけ強かった親父が人間どもにやられた

魔王様も死んだ、瘴気は減った、のか?

仲間は生きにくそうにしてるし魔物は減った


俺はさほど問題ない


人間どもは小鬼どもや大鬼も殺して回ってる


なんと野蛮、壁に引きこもっていれば良いものを


俺の里にもピカピカした鎧の者共が攻めてきた

いつもの薄汚れた男どもとは違う

獣に乗り、数も多い


「豚どもを駆逐せよ!」


俺は後ろに仲間がいれば力が出せる

里で戦う俺が負けるわけがない

ピカピカ共を10ほど殺したところで妙なやつがでてきた

俺よりも少し大きな人間で、他の奴らよりもピカピカしていて、力も強そうだ

何かが妙に気になるがこいつが群れの長らしい


「我が神チーテックよ!ご笑覧あれ!!」

「グフッフ、チーテック、チーテックカ!」

「何がおかしい!」

「オレモモッテル!!チーテック!サトノモノヲマモルチカラヲヨコセ!!」


忌々しくうるさい加護だが本質は戦いと護るための力だと知っている

武器や防具をどこでもすぐに取り出せるのは便利だがそれだけではない


ここにいる限り俺はまけんよ




騎獣が厄介だったが地の利は俺にある

長い間打ち合った、こいつらは俺の戦った中で最も強かった


最高の気分だった、俺が戦っているのは護るため


こんな強い奴から、オークを、護るため!


加護の使い方も知った、投げた武具は戻せるのだな


モット、モットモットダ!!!


最高の気分だったのに醜悪な終りを迎えた

最悪なことにこいつを討ち取ったのは兄貴だ

このピカピカを俺ごと兄貴が後ろから槍を投げてきた

避けるとピカピカにあたった

兄貴の首はねじ切ってやった

俺は自分だけでもこの強い男に勝てたんだ、なのに邪魔をしてくれた



戦ってる間に里のものもバラバラに逃げていた

それを追いかけているピカピカ共がいて俺はそいつらを助けに走った


だいぶ数は減ったがオークの里は別の場所で作り、俺が族長となった

俺はオークからハイ・オークになった

魔王軍の敗残兵の知恵者が流れてきたので仲間に取り入れた

オーク・シャーマンは頭がよく、どうすればいいか教えてくれる


俺は族長になったが族長ではなく前で戦いたい


後ろのことはシャーマンに任せた、他の里で族長をしていたこともあるし何より知恵者だ

族長という地位ごと渡そうとすると断られた

ちっ、まぁいい


それよりもこれからだ


瘴気が減れば魔物は生きにくくなる

何より人間どものことだ、自分勝手に俺たちを殺そうとしてくるのだろう



俺はうまく行けば魔王になれることを知った

族長ですら面倒なのに魔王になどなってたまるか

聞いてみると魔王は魔王でも魔王級ということであった


なんでも前魔王やドラゴンにオーガのような名だたる者が討ち取られてその肉や角、牙、そして魔力の核が人間どもの元に運ばれて行っている

その中にある強い者の核を手に入ることができれば俺は進化できるらしい


くだらん、オークを護るのにそれが必要なのか?

初めはそう思ったが瘴気は減って、住む場所をまた考えねばならん

人間どもの襲撃も酷くなってきた


その中でもたまに英雄と言われる存在が非道だ、住処は燃やすし、子供だろうと容赦はしない


俺たちが何をした!


襲いかかってきた爺を殺す時に問いかけたことがある

なぜ関わりもしない俺達を襲うのか?と、すると


「オークなど生きてるだけで害悪じゃ、わしが死んでも多くの者達がお前たちを殺しに来るじゃろう」


その言葉に決めた

魔王を目指すのだ

シャーマンに計画はあるのかと聞き、いくつかの人間どもの住処を通ることは確実だしそのいくつかを探そうということになった

シャーマンの奥義で俺が殺した爺の神官に化けることができるようになった

窮屈だが俺は加護を持っているので街で活動しても怪しまれないとのことだ


もしも核がなくても俺たちがやられて困ったように火をつけて回ればオークへの襲撃は減るだろう

死んでも俺だけだ


何箇所かを探してもなかった


だが良いことを聞いた、人間どものいう邪教徒という魔王の信奉者の団体が街にはいる

こいつらを殺して回れば俺が疑われるようなことはなくなった

シャーマンが喜ぶような特別な道具を持っていたのは幸いだった

その中でも加護持ちの血液を結晶化する魔道具というものがあった

俺が使えば他のオークを強化できるのかとやってみたがうまくはいかなかった


元々人用でこういった魔道具は作られるらしく、オークの俺には使えないものなのかもしれん

仕方ない


調べてみたがもう魔王の核や結晶はないのかもしれない

稀にだが異界の勇者が使って帰ったという伝承もあるとシャーマンはあるといっていた

それにドラゴンや親父達を討ち取った者たちは俺たちが調べていない街を通って帰ったのかも知れぬ


この街の権力者に取り入ることも出来、協力者も増えた

邪教徒も兄貴のように同じ目的でも仲間うちで争うことがある

その一派を仲間に、別の一派を討って心象を良くした

最後の神殿も調べ終えて燃やして出ようと思ったが勇者と出会えた

なんとか神殿内でごまかせたが運が良い、運が良すぎる


一番魔王の核と結晶体を持ってる可能性が高いのがこの男だ

それも細くて弱そう、勇者の加護のことも聞くと戦神ではなく治癒の神であると


婚姻をしに異界からこちらに来たということは・・・・持っている!!


シャーマンに言われた、どちらの道に進んでも正解となる道を作れと、それが出来てこそ長として成長できる


なるほど


そして邪教徒から奪った魔道具を渡された


加護を持った者の血を核に近い結晶体にできる


だがこれでどうしろと?


ため息をつかれたがちゃんと説明してくれた


「勇者が核を持ってなくても、勇者を核の代わりにすれば良いのだ」


そう聞いてこいつは天才だと思った

核を持っていなくても女をさらって勇者をなぶり殺す事ができれば確実に強くなれる

核をもしも持っていなくても良い


「グフフ」


機会を伺いこの街の近くまでオーク共を呼び寄せた、なにかの役に立つかもしれない

あとは女をさらう確実な機会を待っていた


失敗しても被害は俺だけで済むようにしている

成功すればオークの世になる


更に幸運が俺に味方した

とりいった女はあの強いピカピカの親だった

女をうまく騙して武具を持ってくるように命じた


俺が持つものよりも強い武器を、そして鎧を手に入れることができた


チーテックの加護を強く受けた最高の武具

これだけでも来たかいがある


勇者のことを聞くといつでも誰でも情報をくれる

最高の武具を手に入れただけではなく勇者と女はバラけて動いている


神は俺に味方していると確信した


だが運が悪かった、女をうまく拐えると思ったのにあの獣が襲いかかってきた

あの大きなピカピカの、グナイの乗っていた騎獣だった


仕方なしに目的の女を掴んで城壁の外に出ようとすると街のもの皆が敵に回った

男も女も老人も子供も関係なく、石を投げつけられた


弱者は殺しても良かったがさっさと街を出たかった

鬱陶しさは尋常ではなく、払えば吹き飛ぶ存在のくせに立ち向かってくる

森まで逃げ切れずに城門前まで来て、隠密に長けたものに空けさせておいた城門をくぐり抜け、オークの仲間に合流できそうだったのに勇者も来てしまった

運がいいか、運が悪いか


「グフ、グフフフフ」


決闘を申し込む、油断はしない、親父よりも強かった魔王を1人で倒した正真正銘の化け物だ

人質のこの女がいる、もしもこいつが強くてもこの決闘で楽に血を奪えるだろう

嫁取りなどという決闘のお陰で女にこれ以上の傷を付ける心配もない

女が死んで勇者に死を選ばれてもたまらん、どんな道を進んだとしてもオークの勝ちが決まる、最高の、最高の状況だ!!!


魔王の核か結晶体さえ渡せばこんな決闘をすることはない、オークの仲間の安全も考えたい

だがこいつは持ってないという

幸いなことにこいつは考えていた以上に強いが、俺のほうが強い

切り刻み、血を結晶化させ、それを魔道具が吸う


勇者の流した血は俺の力になっていく


もうこいつを殺してもこの周りの兵どもと戦っても勝てるだろう


周りがうるさくなった、こいつの勝利を人間どもは信じているのだろうか?


「グフフ」


笑えてくる


バチチチチッ!!


突然手が痺れたと思ったら人質を離してしまった


もう人質もいらないかと思ったが魔道具か?手が弾けたように痛んだぞ、しびれもする


勇者が間に入ってくる、この勇者も護るべきものがあるんだろう・・少し感心した


俺もそうだった、弱くても、小さくても、護ると決めたのならそれだけは護らねばならん

それに小娘共を護る結界は揺るぎもしない、強い護りの魔法を感じる


小娘共はもう良い

それよりもこの勇者を真剣に殺そう、血を流させ、完膚なきまでに、敬意を持って、全力で


しかしこの勇者、どれだけ切り刻もうと、貫こうと、潰そうともすぐに治る


強い、なかなか殺しきれない

俺も手傷を負うが俺も仲間を護るためだ、すぐに治る



半日ほど経っただろうか、俺の力の桁が変わったのを感じる


しかしこの勇者、いくら斬っても突いても死なない

血を流させるのには死なない方がいいがすぐに血も止まる

ちょこまかとしてなかなかに強い、普通のオークならやられていただろう


・・・そろそろ終わらせてやるか


「俺こそが、俺こそが次の王だ!!!ウォオオオオオオオオオオオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


勝鬨を上げ勇者に敬意を見せた

この隙き、襲ってくるよな!


信じていたぞ勇者ァっ!!


勇者の胸の真ん中を俺の渾身の槍が貫き、振るってきた剣を弾き落とし、その腕を噛み砕いた
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